セカイは微生物に満ちている全景
セカイは微生物に満ちている全景

第3期ビジョナリーラボでは、「微生物との共生社会を実現し、より快適で健康な都市をつくる」をビジョンに掲げて活躍する伊藤光平さん(株式会社BIOTA代表取締役)をビジョナリーとしてお迎えし、身のまわりの微生物に目を向け、微生物と人間が豊かに共生する未来の暮らしについて考える展示を企画・制作しました。

微生物の基本的な情報やヒトにとっての微生物の重要性をひも解き、私たちの住環境における微生物の生息状況や微生物との共生を可能にするアイデアを、実寸大の居住空間や生きた植栽で体験できるような展示空間を作りました。

チャプター3 微生物と共生する暮らし
チャプター4 人と微生物が共生する未来へ

展示構成

チャプター1 微生物とは?

チャプター1 微生物とは?
チャプター1 微生物とは?

微生物そのものや、ヒトと微生物の関係など微生物の基本的なことがらを紹介しています。パネルでの解説に加えて、電子顕微鏡で映し出した微生物の詳細がわかる拡大写真や、微生物の大きさとヒトの髪の毛の直径を触って比較する展示、体内外の場所ごとにさまざまな微生物が生息する様子をイラストなどで紹介するコーナーがあります。微生物が私たちの体内外に多様に生息していること、ヒトと微生物は切っても切れない関係であることを体感するチャプターです。

チャプター2 暮らしの環境と微生物の多様性

チャプター2 暮らしの環境と微生物の多様性
チャプター2 暮らしの環境と微生物の多様性

都市の微生物データを用いた大規模なメタ解析により都市部などでの場所ごとの微生物多様性の違いを解説し、生活スタイルの変化の中で、ヒトと微生物たちとのつながりも変化してきている現状が実感できるチャプターです。微生物との触れ合いの減少がアレルギー疾患の発症に影響するのではないかと考える「衛生仮説」や、病原性微生物とヒトとの抗生物質をめぐる攻防のなかで発生する「薬剤耐性菌」のリスクについても、紹介しています。

チャプター3 微生物と共生する暮らし

チャプター3 微生物と共生する暮らし
チャプター3 微生物と共生する暮らし

展示空間中央に実寸大のモデルルームを設けました。ブラックライト照明演出により、普段目で見ることのできない微生物の存在を浮かび上がらせます。この空間で来館者は微生物の存在を間近に感じることができます。ビジョナリー(伊藤氏)が提案する、住空間内で微生物の多様性を高めるアイデアとともに、さまざまなコラボレーターによる、微生物と私たちとの関係性を再発見・再構築するアイデアも展示します。住空間に植栽エリアを隣接させることで、理想的な住居の屋外環境も提案します。さらにこの居住空間を舞台としたSF小説を読んだり音声で聴いたりすることもできます。来館者は、このモデルルームと実際の住空間を重ねて自身の生活スタイルを振り返り、微生物との共生を可能にする生活のヒントを見つけることができます。

チャプター4 人と微生物が共生する未来へ

ビジョナリー(伊藤氏)のビジョンについて、学生時代から現在までの研究内容をコンセプトの変遷などとともにイラストで紹介し、微生物と人が共生する理想の都市の姿を、アニメーションで示しています

展示の紹介

ぬか床ロボットNukabot

Nukabotの画像
Nukabot

ぬかの中にいる微生物とのインタラクションができるロボット「Nukabot」を展示しています。Nukabotの中に実際にぬか床と野菜を入れて運用し、来館者はNukabotと、野菜のつけ具合やぬかの状況についてリアルタイムで会話することができます。微生物と人とのコミュニケーションの可能性を考えます。

[クレジット]
FMR:Ferment Media Research [ドミニク・チェン(早稲田大学文学学術院 教授)、城一裕(九州大学 芸術工学研究院 コミュニケーションデザイン科学部門 准教授)、ソン・ヨンア(法政大学 デザイン工学部 准教授)、守屋輝一(株式会社Studies/デザイナー)、関谷直任(デザイナー)、三谷悠人(エンジニア)、小倉ヒラク(発酵デザイナー)]

フラワーコンポスト

フラワーコンポスト(2022年4月20日)の画像
フラワーコンポスト(2022年4月20日)

微生物が色鮮やかな花を分解する様子を、密閉されたガラス容器の中で可視化するアート作品です。日々姿を変える花の様子と「分解」する微生物の生態から、目には見えない小さな共生者の存在を体感できます。

[クレジット]
Mikiko Kamada(アーティスト/プランツディレクター)

[フラワーコンポストの変化]

2022年4月23日
2022年5月14日
2022年6月18日
2022年7月9日
2022年8月20日

SF小説 『ココ・イン・ザ・ルーム』   作・青山新

微生物ネイティブ(microbe native)という新しい世代が現れ、微生物環境に対する認知が広がった未来の都市をテーマにしたSF小説を、展示内にリーフレットとして置いたほか、展示空間を回りながら聞けるオーディオ・ノベルとして提供しています。
本小説は、展示内の居住空間に住む人々の未来の物語です。微生物と共にくらす日常に広がる風景を想像しながら楽しんでください。

coco in the room [PDF]PDFファイルを開きます

*下記のリンクからオーディオで視聴することもできます。
https://youtu.be/5HsD5bGJYyU外部サイトへ移動します

SF小説 『アウト・ステップ・アウト・ウェイ・アウト』   作・青山新

XR技術を使った開発中の没入型ゲームをプレイする仕事(デバッガー)を任された主人公。環境微生物に関する知見を元に設計されたそのゲームを通して、自分と世界とのあいだに新しい関係性を見出していき・・・。
『ココ・イン・ザ・ルーム』を書いた青山新氏が、「ゲーム」を題材として、人と微生物の関わりをこれまでにない新たな視点でとらえたSF小説を書き下ろしました。人と世界、リアルとバーチャルの境界が溶けあう作品をぜひお楽しみください。
このSF小説は展示内にもリーフレットとして置いています。

アウト・ステップ・アウト・ウェイ・アウト [PDF]PDFファイルを開きます

*下記のリンクからHTML版でもお楽しみいただけます。
HTML版『アウト・ステップ・アウト・ウェイ・アウト』

植栽展示

植栽展示の様子

居住環境において重要な微生物ソースとなりうる野外の植生を実物の植栽展示として表現。「拡張生態系」や「マルチスピーシズ」の考え方に基づき理想的な住居における屋外環境についてのアイデアを提供します。

[クレジット]
片野晃輔、ルプレヒト クリストフ(愛媛大学 社会共創学部 環境デザイン学科 准教授)、吉田葵(アオイランドスケープデザイン)、西尾耀輔(株式会社 越路ガーデン)

アーカイブ

基本情報

タイトル

世界は微生物に満ちている

会期

2022年4月20日(水)~2023年8月31日(木)

クレジット

総合監修(ビジョナリー)
伊藤光平(株式会社BIOTA)

企画制作
日本科学未来館
[プロジェクトマネジメント]宮原裕美
[展示ディレクション]櫛田康晴
[調査企画]岩澤大地、小林沙羅、櫛田康晴
[科学ディレクション]森田由子
[テクニカルディレクション]大橋永治

監修協力
岩崎渉(東京大学 大学院新領域創成科学研究科 先端生命科学専攻)
片野晃輔
福田真嗣(慶應義塾大学先端生命科学研究所/メタジェン)
森田英明(国立成育医療研究センター 免疫アレルギー・感染研究部 アレルギー研究室)
ルプレヒト クリストフ(愛媛大学社会共創学部環境デザイン学科)

協力
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 AMR臨床リファレンスセンター
独立行政法人 製品評価技術基盤機構
株式会社BIOTA(田中大敦)
Kishony lab (Harvard Medical School and Technion - Israel Institute of Technology)
Yen Shu Liao (Artwork of Solarpunk Creatures (2021) )

空間デザイン
遠藤治郎(SOIHOUSE Inc.)

展示実施設計
株式会社つむら工芸

展示製作施工
株式会社つむら工芸
グラフィックデザイン
渡邉竜也(渡邉デザイン)

イラストレーション
カシワイ

植栽エリア設計
吉田葵(アオイランドスケープデザイン)
西尾耀輔(株式会社 越路ガーデン)

植栽エリア製作施工
西尾耀輔(株式会社 越路ガーデン)

SF小説
青山新

アート展示
Mikiko Kamada

映像・朗読コンテンツ
土居 誠史(有限会社 デンバク ファノ デザイン)

朗読
鹿野 優以

Nukabot
Ferment Media Research
ドミニク チェン(早稲田大学 文学学術院)
ソン ヨンア(法政大学 デザイン工学部)
城一裕(九州大学 芸術工学研究院)
守屋輝一(KIICHI / 株式会社スタディーズ)
関谷直任(デザイナー)
三谷悠人(エンジニア)
小倉ヒラク(発酵デザイナー)

2022年4月時点