日本科学未来館は、球体映像システムの特性を生かし、その魅力を最大限に引き出す方法を探るため、国内外の研究機関やクリエイターと共に、球体映像の可能性の追求に取り組んできました。
日本科学未来館には2つの球体映像システムがあります。1つは球体ディスプレイのシンボル展示「ジオ・コスモス」、そしてもう1つは全天周立体映像システムを備えた「ドームシアターガイア」です。
ジオ・コスモスとドームシアターガイアは、球体映像を対象としているという点で共通であり、両者の違いは球体を外から眺めるのか、内から眺めるのかという“視点”です。球体映像は、視点が変わるだけで、コンテンツの捉え方や体験が大きく変わってきます。ジオ・コスモスは好きな視点を選び、時には移動しながら球体の外側を眺める体験ができ、一方のドームシアターガイアは定位置に座り、映像と音に包まれ、球体の内側で没入感を得ることができるという特徴があります。
今後も、球体ディスプレイに関するハード、ソフトの分野を問わない研究や開発、実験に積極的に取り組み、球体映像の可能性の追求と同分野の発展に貢献したいと考えています。
文化庁メディア芸術祭 フェスティバル・プラットフォーム賞 (FP賞)(2019-)
文化庁主催の「文化庁メディア芸術祭」において、2019年(第23回)より「フェスティバル・プラットフォーム賞」(以下、「FP賞」)が新設されました。本賞は、文化庁メディア芸術祭と連携する機関・団体における設備・施設等の特性を活かした新しい企画展示案から、優れた作品に贈呈するものです。
未来館は文化庁と連携し、ジオ・コスモス コンテンツ コンテストの経験を活かした球体展示に関する作品の募集を、FP賞が新設された2019年からスタートしました。
未来館の球体展示に関する作品の募集においては、未完成作品(企画案)でも応募できる点が大きな特徴で、未来館の球体映像システムを活用した映像作品、アプリケーションプログラム作品を募集しています。
第24回文化庁メディア芸術祭 フェスティバル・プラットフォーム賞受賞作品
フェスティバル・プラットフォーム賞作品紹介
ジオ・コスモス カテゴリー
第23回文化庁メディア芸術祭 フェスティバル・プラットフォーム賞受賞作品
フェスティバル・プラットフォーム賞作品紹介
ジオ・コスモス カテゴリー
ジオ・コスモス コンテンツ コンテスト(GC3)(2014-2017)
―球体映像の新たな可能性や表現方法を切り開くアワード―
「ジオ・コスモス コンテンツ コンテスト」は、多角的な視点から生命と地球の未来を考える日本科学未来館の「つながり」プロジェクトの一環として開催したものです。
プロジェクトの基幹ツールである球体ディスプレイ「ジオ・コスモス」の新たな可能性や表現方法を切り拓くことを目指し、2014年、2015年、2016年と3回開催しました。
最先端の映像表現及び、科学データ可視化コミュニティの活性化に貢献すべく、3回目の開催では、募集部門を従来の「映像」に加え、「ライブコンテンツ」「アイディア」の2部門を新設、対象となるクリエイティブの領域を拡大しました。
また、球体映像コンテンツやVRコンテンツを制作するためのUnity用のツールキットを開発して配布し、応募者向けの技術説明会を開催しました。
球体映像表現の共同検証プロジェクト (2017-2018)
―Noesis―
株式会社オムニバス・ジャパンと共同で、未来館のドームシアターガイアやジオ・コスモスを使って、映像表現、技術、手法の観点から視覚的な実験と開発を行いました。「Noesis」は本プロジェクトの検証過程の中で制作されアート的視点から自然や宇宙、万物の根源を考えた時の概念、思想を視覚化したフィロソフィ ビジュアライゼーション(philosophical concept visualization)作品です。
同作品は、2017年10月に行われたMUTEK. JP Edition 2において、ドームシアター向けのコンテンツとしてプレミア公開されました。公開当時は、PC からリアルタイムで出力されるライブ映像を、ドームシアターの設備にあわせて複数のプロジェクターに割り当て、オーディオビジュアルパフォーマンスすることが技術的に難しかったのですが 、3Dでのオーディオビジュアルパフォーマンスを実現するため、施設にプリインストールされたステレオ映像とライブパフォーマンスの2D リアルタイム映像をシンクロさせて、2D 、3D それぞれのプロジェクターをドームスクリーン上で重ね合わせる実験を行い、成功しました。
それから1年間はハード面も含めた実験・検証を重ね、MUTEK. JP Edition 3(2018年)では、本作のフル3Dのオーディオビジュアルパフォーマンスライブを実現しました。また、未来館からの提案により、球体ディスプレイ「ジオ・コスモス」でも本作を公開。包囲される視点と客観視する視点の二つの対比を同日に展開しました。
ジオ・コスモスを用いた球体ディスプレイ映像表現の共同検証(質感検証)(2015-2019)
奈良先端科学技術大学院大学、三菱電機株式会社と協力して、ジオ・コスモスを用いた奥行き感表現の共同検証を行いました。
2016年はジオ・コスモスに様々な映像を表示し、球体ディスプレイの画質評価を行い、特に大気や海洋などの映像質感表現に関係する画質性能を評価しました。「運動視差」を利用した浮遊感の表現方法を開発し,研究成果をまとめた論文は「映像表現・芸術科学フォーラム2017 優秀発表賞」を受賞しました。
2017年は「分光視差」を使って奥行き感を表現し、特殊なメガネを装着してジオ・コスモスを眺める距離によって変化する映像の奥行き感を体験する検証を行いました。
この研究成果をまとめた論文は「ACM Symposium on Virtual Reality Software and Technology (VRST) 2018 Best Poster Award」を受賞しました。
クラブMiraikan会員向けイベント 地球合宿2019「Geo-Cosmosの開発現場へようこそ」にて、ジオ・コスモスを使った「運動視差」と「分光視差」による奥行き感のある映像を紹介し、参加者の評価及び体験時のデータを収集し、研究にフィードバックしました。
ビジュアライゼーションコンテンツ開発(2016-2018)
ジオ・コスモスには、外部映像入力をそのまま球体に映し出す機能があります。未来館のビジュアライゼーションチームでは、この機能を活かすためのプロトタイピングを行ってきました。そこで生まれた技術やノウハウは、GC3やワークショップ、ジオ・コスモスのコンテンツ制作などに活かされています。
「音楽とのライブセッション」
映像と音楽のライブセッションを目指したコンテンツです。ジオ・コスモスの映像を、鍵盤やMIDIコントローラを操作して「演奏」でき、会場の音楽に同期して脈動させることもできます。未来館で開催した音楽イベントのステージ演出の一環として試行したり、地球合宿2019「Geo-Cosmosの開発現場へようこそ」で会員向けに体験イベントを行いました。
「PCを使ったインタラクティブコンテンツ」
PCを使ったインタラクティブコンテンツとして開発された、最大4名まで参加できる球体上のビデオゲームです。手元のスマートフォンを使ってジオ・コスモス上に表示された「パドル」を操作し、他の参加者と「ボール」を打ち合います。ルールは黎明期のビデオゲーム「Pong」とほぼ同じですが、フィールドが球体であることで独特の難しさと戦略が生まれ、遊びながら「球体的思考」を感じられるコンテンツになりました。
「全天周カメラを使ったライブビデオ」
透明アクリル球 (直径1m程度)の中心にある全天周カメラ(RICOH THETA V)が捉えた周囲の様子がリアルタイムに映し出されます。アクリル球に色紙を貼ったりペイントすることで、参加者の姿と共にカラフルなビジュアルが現れます。このプロトタイプは、地球合宿2018「Geo-Cosmosの開発現場へようこそ」で会員向けの体験イベントとして試行しました。