研究開発の最前線を体感! 2つの常設展示を明日23日から公開
「量子コンピュータ・ディスコ」「未読の宇宙」
日本科学未来館は、2つの常設展示「量子コンピュータ・ディスコ」「未読の宇宙」を、2025年4月23日(水)から一般公開します。未来にむけた壮大な研究開発の最前線を楽しみながら体感できる展示です。

「量子コンピュータ・ディスコ」は、直観的に楽しみながら量子コンピュータを理解していく展示です。音楽を選びフロアに流すDJのような操作で量子プログラミングを体感するなど、量子コンピュータのしくみを楽しく体験できます。量子コンピュータの成り立ちや研究の歴史、最新の開発なども基礎からわかりやすく紹介。また、最新の研究開発の成果として、超伝導量子コンピュータに用いられる144 量子ビットの集積回路チップを、国内で初めて一般に公開します。
「未読の宇宙」は、巨大な観測・実験装置を駆使して、研究者たちがどのように宇宙を読み解こうとしているのかを体感できる展示です。実際の観測・実験データをもとに制作された大迫力の映像がとり囲む展示空間の中で、さまざまな波長の光で宇宙をとらえる多波長観測、ニュートリノ観測、重力波の観測、加速器実験という、宇宙をとらえる4つの先端研究に体験装置を通して触れられます。積み重ねられた人類の「知」を感じると同時に、それでもまだ“読み尽くせない”謎に満ちた宇宙の奥深さにも魅了されるでしょう。
一般公開に先立ち行われたプレス内覧で、館長の浅川は「最先端の科学を子供も大人も身近に感じていただける展示を目指しました。展示体験が現在進行形ですすむ研究開発に興味をもつきっかけとなることを願っています」と述べました。
公開情報
- 一般公開日
- 2025年4月23日(水)
- 展示エリア
- 3階・5階 常設展示ゾーン
- 休館日
- 火曜日(ただし、祝日や春夏冬休み期間などは開館の場合あり)、年末年始(12/28~1/1)
- 開館時間
- 10時~17時(入館券の購入および受付は16時30分まで)
- 入館料
- 大人630円、18歳以下210円、未就学児無料
「量子コンピュータ・ディスコ」
驚異的な計算力から、実現すればさまざまな分野で革新を起こすといわれる「量子コンピュータ」。この展示では、DJがプレイする時のような操作で量子力学の特性を生かしたプログラミングを体験するなど、難解といわれる未来のコンピュータを楽しく理解することができます。量子コンピュータの計算力の源となる量子力学に加え、ハードウェアの研究や計算機の歴史、そして活用事例に至るまで、量子コンピュータにまつわるさまざまなトピックも体験展示や映像などで紹介します。未来を切り拓く量子コンピュータの可能性を実感することができるでしょう。

ゾーン1 「エントランス」
「量子コンピュータのうた」がお出迎え。「重ね合わせ」や「もつれ」など、量子コンピュータのキーワードがちりばめられたラップが、量子の不思議な世界にいざないます。
ゾーン2 「ダンスフロア」
量子コンピュータで計算を行うためのプログラミングを、DJがプレイする時のような操作で体験することができます。量子計算は、楽譜に音符を並べるように、演算を行う「ゲート」を置きながら正解に手探りで近づいていくような方法。展示では、ゲートを操作して、「重ね合わせ」や「位相」、「もつれ」、「測定」という量子の性質を用いた計算方法を、DJが音楽を聴き比べて選びフロアに流すという一連の流れを通して理解することができます。ひとつずつ選択肢を計算する今のコンピュータとはまったく違う、量子コンピュータの「重ね合わせ」の計算パワーを感じられます。
見どころ 一度は聞いたことのある、おなじみの名曲を多数使用
ダンスフロアの音楽体験には、アニメソングやゲーム音楽など、身近な名曲を多数用意しました。
おなじみの楽しい音楽とともに、量子コンピュータのプログラミングの世界を体感できます。
使用曲の例:CHA-LA HEAD-CHA-LA/ドラゴンクエスト 序曲/残酷な天使のテーゼ/September/パッヘルベルのカノン/威風堂々/コロブチカ/ハイ・ホー/One More Time/など

ゾーン3 「ギャラリー」
「量子コンピュータってつまり何?」「なぜ作るの?」など、量子コンピュータを理解するための基本を4本のショートムービーで解説します。また、SFや映画、音楽、ゲームなど多岐にわたる作品から、量子力学や量子コンピュータの特性を感じられる場面を紹介。さまざまな作品の中に隠れている「もつれ」や「観測」などの“量子コンピュータっぽさ”の表現から、量子の不思議な世界を身近に感じることができます。
ゾーン4 「ラウンジ」
量子コンピュータの基礎から使用例までわかりやすく紹介します。ダンスフロアで行った音楽体験を量子コンピュータのしくみと結びつけて説明するなど、理解を深められます。ゾーンには3つの展示があります。
1. 量子コンピュータのつくり方
まずは、量子コンピュータを実現するための技術開発を3つのステップで紹介します。
① 材料は量子ビット
量子コンピュータの情報の最小単位である「量子ビット」について、現在一般的に使われるコンピュータのビットと比較しながら、基本的な概念を解説します。

② 量子ビットをあやつる
実現に向けて世界中で開発が進む5つの方式(超伝導方式、半導体方式、中性原子方式、イオントラップ方式、光方式)を紹介します。それぞれの専門家の監修協力のもと、各方式の性能や現状を、アニメーションやレーダーチャートなどで比較しながら説明します。
③ エラーをなおして、さあ計算だ
量子コンピュータの実用化のために乗り越えなければならない課題の一つに「エラー訂正」があります。現在私たちが使っているコンピュータも、このエラー訂正の方法を確立したことにより、問題なく使うことができるようになりました。ここでは、エラー訂正のしくみについてゲームを通して理解します。
3つのステップのあとに続くのは、量子コンピュータが実現するまでの道のりをまとめた“すごろく”ふうのパネル「どこまでできてる? 量子コンピュータ」。開発の歩みと、実用化までの道のりを俯瞰することができます。道のりの中には、開発の現在地を指す「いまここ!」サインを表示。定期的に更新していくことで、研究開発のまさに“いま”を来館者とともに見守ります。
2. 量子コンピュータを生んだ、計算と物理の再会ものがたり
量子コンピュータは、計算機科学と物理学が融合して生み出されたコンピュータと言えます。この「計算」と「物理」の動向に注目しながら、かつてのアナログ計算機から今のコンピュータの発展、そして量子コンピュータが誕生し開発競争にいたるまでの歴史を紹介します。展示では、1946年に誕生した世界初汎用電子式コンピュータをはじめ、各時代を代表する3つのコンピュータと、現在開発が進む超伝導量子コンピュータをレゴ®ブロックを使った模型で再現。時代とともに計算機の小型化が進む様子や、量子コンピュータのサイズ感が一目でわかります。量子コンピュータがどのようにして生まれたのか、今後どのように発展するのかをより深く知り、未来を想像する手助けとなる展示です。

見どころ 日本製144量子ビットのチップを国内で初めて一般公開
量子コンピュータの計算能力をつかさどる量子チップ。今回、理化学研究所量子コンピュータ研究センターの協力のもと、日本製の「144量子ビットのチップ」を国内で初めて一般に公開します。
3. 量子コンピュータにコレできる? ガチャ
一般の方から寄せられた量子コンピュータに関する100を超える質問に、専門家が答えました。「量子コンピュータならどんな問題も解けるの?」や「AIをさらに進化させられますか?」など、素朴な疑問から応用まで、量子コンピュータと私たちの未来を考えるきっかけを見つけることができます。
総合監修者 藤井 啓祐氏 よりコメント
量子プログラミングをDJのような体験になぞらえるというユニークな手法で、量子力学や量子コンピュータをご存知でない方も、楽しみながらそのエッセンスを感じていただける展示をつくることができました。量子コンピュータは、実現に向けて世界中で研究開発が行われており、そのスピードは目覚ましいものがあります。この展示を体験した多くの方にとって、量子コンピュータがもたらす未来を想像し、どんな可能性があるかを語り合い、自分なりに量子コンピュータとの関わりを考える場になることを願っています。
クレジット
(敬称略、所属・肩書は展示公開時点)
監修
- 総合監修
- 藤井 啓祐 (大阪大学基礎工学研究科)
- 監修
- 嶋田 義皓 (ソフトバンク株式会社先端技術研究所、科学技術振興機構研究開発戦略センター)
- 監修協力
-
高橋 優樹 (沖縄科学技術大学院大学 量子情報物理実験ユニット)
武田 俊太郎 (東京大学大学院工学系研究科)
田渕 豊 (理化学研究所 量子コンピュータ研究センター)
富田 隆文 (自然科学研究機構分子科学研究所)
水野 弘之 (株式会社日立製作所研究開発グループ)
株式会社QunaSys
制作
- 基本設計・実施設計・制作施工
- 株式会社つむら工芸
- クリエイティブディレクション/空間デザイン
-
中原 崇志 (DENBAK-FANO DESIGN)
谷尾 剛史 (mumedesign)
- 展示プランニング
- 谷尾 剛史 (mumedesign)
- アートディレクション/サイン・グラフィックデザイン
- TAKAIYAMA inc.
- テクニカルディレクション
- 株式会社TASKO
- システム設計、サウンドディレクション・制作
- 株式会社INVISI
- 映像制作
- 株式会社ピクス
- 映像ディレクション
- 浜根 玲奈 (kirameki management)
- レゴ®ブロック模型
- 大阪大学レゴ部
- 協力
-
理化学研究所量子コンピュータ研究センター
TIS株式会社
量子コンピュータのうた
- 作詞・歌唱
- 鈴木 真海子
- 作曲
- 鈴木 真海子 ryo takahashi
「未読の宇宙」
巨大な観測・実験装置を駆使して、研究者たちがどのように宇宙を読み解こうとしているかを体感できる展示です。さまざまな波長の光で宇宙をとらえる多波長観測に加え、近年加速する「ニュートリノ」や「重力波」の観測、さらに粒子加速器を用いた大規模実験など、研究者が見つめる宇宙のフロンティアを紹介します。想像をはるかに超える壮大かつ緻密な研究の営みに驚きを感じると同時に、それでもなお“読み尽くせない”宇宙の魅力に触れることができます。

プロローグ

「わたし」という個の視点から、宇宙や科学への想像を広げていくことができる小路のような空間です。私たちの周囲を飛び交う見えない粒子を可視化する「霧箱」や、日常と物質・天体・宇宙との関係を語る詩やイラストなどから、まるで物語を読み進めるように最新の宇宙研究の世界へといざないます。最初に来館者を迎えるのは宮沢賢治の「春と修羅・序」の一節。約100年前に書かれた作品ですが、どこか素粒子の世界にも通じる、豊かなイメージをはらんでいます。壁面から聞こえる朗読は、俳優・池松壮亮氏と、モデル・歌手の甲田益也子氏が担当しています。
見どころ 人気展示「霧箱」をアップデート
宇宙から降り注ぐ高エネルギーの粒子や、大気に含まれる自然放射線の軌跡をみることができる「霧箱」。以前から未来館で展示しファンの多かった霧箱を、本展にあわせて最新型にアップデートしました。窓のサイズが約4倍となり、宇宙から届く宇宙線(ミュー粒子)の軌跡がより観測しやすくなりました。
メインエリア
上空を360°のスクリーンで覆った楕円形の展示空間に、特徴的な形の4つの体験装置が並んでいます。昔から夜空を見上げ、探究を進めてきた人々と同様に、時空を超えて宇宙について思いをめぐらせたり、誰かと語らったり、いつまでもたたずんでいたくなるような没入感があります。
1. マルチメッセンジャー・ビジョン ~データで感じる宇宙
ニュートリノや重力波、そして可視光以外も含むさまざまな波長の光は、宇宙からの情報を私たちに届けてくれる、いわば“メッセンジャー”。展示空間を360°とり囲むこのスクリーンには、各メッセンジャーの実際の観測・実験データをもとに制作した映像が映し出されます。第一線で活躍するメディアアーティストが膨大な観測データと向き合い、研究という営みを再解釈し、作品化しました。複数のデータを組み合わせて複合的に宇宙を理解していくアプローチとして近年進展している「マルチメッセンジャー天文学」についても、その手法を確立する端緒となるような歴史的な観測プロセスを映像化。その意義を直感的に理解することができます。
見どころ 観測の“生データ”をもとにアーティストが作品化
これらの作品のもとになったのは、研究者が観測で得た“生のデータ”。ノイズも含まれるデータから研究者がいかに宇宙からのメッセージを見つけ、宇宙を読み解いているかを追体験できます。データの持つ説得力とアーティストだからこそ実現できる表現力が、何度見ても新たな発見のある、大迫力の映像体験をうみだします。
2. 4つの体験装置 ~科学者と探る宇宙
宇宙を理解するために行われる4つの観測・実験のアプローチを、実際の観測や実験のしくみをもとにしたインタラクティブな体験型の展示で紹介していきます。本展示の監修を務める第一線の研究者が、スマートフォンのビデオ通話風の映像として登場します。映像と連動しながら展示を操作することで、本物の研究者と一緒に宇宙の観測や実験をしているかのような体験が楽しめます。

① 宇宙をみる「多波長観測」
宇宙からは可視光や電波、X線などのさまざまな種類の光(電磁波)が届いています。同じ天体でも異なる種類の光で観測し、比較することで、天体の様子をくわしく調べることができます。展示では、オリオン星雲やかに星雲などの天体が、赤外線やX線での観測によって異なる姿を現す様子を、地上や宇宙の望遠鏡が観測した実際のデータを見比べることで確認することができます。

② 宇宙をきく「重力波観測」
重力波は、ブラックホールの合体など大きな質量の天体が動いたときに発生する目には見えない「時空の歪み」で、周波数を解析して音に変換することもできます。アインシュタインが観測不可能と予測していましたが、2015年に世界15カ国の研究者が参加した研究プロジェクトが初観測に成功しました。観測に使われるのは3kmを超える巨大なレーザー干渉計。展示では大規模観測装置のしくみをそのまま1mサイズにミニチュア化した、本物のレーザー干渉計を設置。レーザー光を重ね合わせて生まれる「干渉縞」が微弱なシグナル(振動)をとらえる現象について、直接観察することで理解が深められます。

③ 宇宙をつかまえる「ニュートリノ観測」
物質の最小単位と考えられている素粒子の一種「ニュートリノ」。ニュートリノの性質を調べることで、地球に降り注ぐ宇宙線などの謎を探る手がかりになると注目されています。展示では、日本の「スーパーカミオカンデ」と、南極の氷の下に建設された「アイスキューブ」の2つの観測装置を縮小模型で紹介します。また、現在建設中の「ハイパーカミオカンデ」に設置される予定の、最新の光電子増倍管の実物も展示します。

④ 宇宙をつくる「加速器実験」
人工的に宇宙初期の高エネルギー状態を再現して、そこで何が起こるかを突きとめる加速器実験を紹介します。円形の加速器を縮小した模型を使って、電子や陽電子などの粒子を加速して衝突させる実験を擬似体験できます。また、世界28の国と地域が参加する日本最大級の素粒子実験プロジェクト(Belle II 実験)に使われている、衝突によって生まれた粒子を検出するためのセンサーの実物も展示しています。
3. AIと語る宇宙
展示を通して浮かんだ疑問や感想を、生成 AI と自由に語り合うことができる対話型展示です。生成AIとの協働で誕生したバラエティに富んだ7つのキャラクターが登場します。知識豊富な「科学者」、率直なリアクションを返す「子供」、人生経験豊富で話題を広げるキャラクターなどからランダムに3つが選ばれ、多様なAIキャラクターと自然で広がりのある会話を楽しめます。
エピローグ
ひとつの謎が解き明かされると、新たな疑問が浮かび上がるのが宇宙研究の常。宇宙・天体・物質の起源と進化に迫る研究を俯瞰するパネルや、塩川いづみ氏による描きおろしの壁画をながめながら、自分自身もいまだ“未読”の宇宙の一部であることの余韻をぜひ味わってください。
総合監修者 梶田 隆章氏 よりコメント
2002年に公開された前身の展示では、ニュートリノを観測するスーパーカミオカンデを紹介しました。それから四半世紀が過ぎ、次世代の装置に引き継がれようとしています。この間、南極などで超高エネルギーの宇宙ニュートリノ観測がはじまり、日本も参加して国際的な協力で重力波観測が進められ、光学望遠鏡をはじめ多波長の観測と連携することで多角的に宇宙をとらえるマルチメッセンジャー天文学の土台ができました。光では観測できない初期宇宙を調べる加速器実験も行われています。今回、さまざまな人が訪れる未来館で、こうした科学の今を伝える展示を多くの方々と協力しながらつくることができたことは、私にとっても大変有意義な経験でした。ぜひ、多くの皆さまに見ていただきたいと思います。
クレジット
(敬称略、所属・肩書は展示公開時点)
監修
- 総合監修
- 梶田 隆章 (東京大学宇宙線研究所)
- 監修
-
石原 安野 (千葉大学ハドロン宇宙国際研究センター)
田中 雅臣 (東北大学大学院理学研究科)
中山 浩幸 (高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所)
- 機関協力
-
東京大学宇宙線研究所(神岡宇宙素粒子研究施設・重力波観測研究施設)
高エネルギー加速器研究機構
千葉大学ハドロン宇宙国際研究センター
制作
- 基本設計・実施設計・制作施工
- 株式会社トータルメディア開発研究所
- 展示全体デザイン・ディレクション
- 島村 昌志 (株式会社トータルメディア開発研究所)
- 空間設計
- 小林 恵吾 (NoRA) 野村 健太郎 (NoRA)
- 編集・執筆
- 水島 七恵 (mninm)
- グラフィックデザイン
- 山田 悠太朗
- 題字・イラストレーション
- 塩川 いづみ
- 朗読
- 池松 壮亮 甲田 益也子
- 「マルチメッセンジャー・ビジョン」映像音響制作
- 平川 紀道 古舘 健 濱 哲史
- テクニカルディレクション
- anno lab
- 体験装置システム設計・ディレクション
- 田中 喜作
- 科学者映像制作
- 柴田 一秀
- 「AIと語る宇宙」システム開発・デザイン
- 株式会社Qosmo
- 一般からのお問い合わせ
-
日本科学未来館
Tel:03-3570-9151(代表)
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