メディアラボとは?

先端情報技術による表現の可能性を、定期的な展示更新を行いながら紹介していくスペースです。2008年から2019年までの約10年間で計21期まで開催しました。

各展示の概要

アートとテクノロジーとサイエンスの融合から生まれ、従来のアートの枠組みに挑戦する取り組み"デバイスアート"の世界を紹介しました。

出展者:岩田 洋夫、稲見 昌彦、安藤 英由樹、前田 太郎、渡邊 淳司、八谷 和彦、児玉 幸子、土佐 信道、クワクボ リョウタ、ジェームス・クラー

メディア・アーティストの八谷和彦が「視覚」をテーマにして発表してきた作品群を展示しました。これらの作品は、身近な技術を用いて、存在はするものの私たちには見えない世界を表現するものです。それは、見る者に魔法のような驚きを与えると同時に、新たな疑問や好奇心を抱かせます。

出展者:八谷 和彦

視覚だけではなく、触覚や力覚、歩行・移動感覚などの身体感覚をバーチャルリアリティ技術で呈示し、人間の認識や存在を問いかける作品群を展示しました。一見「異常な創作」とも映るこれらの作品は、先端情報技術による新しい表現領域を切り開く野心的な試みです。

出展者:岩田 洋夫

新しいコミュニケーションの形を生み出し、日常生活を楽しくしてくれる作品群を展示しました。情報技術やメカトロニクスを駆使したこれらの作品を通して、機械や装置が人の感情を刺激しコミュニケーションのあり方を変えていく可能性を考えます。

出展者:クワクボ リョウタ

感覚のしくみを利用した新しいインターフェイス技術の研究を行っている、安藤英由樹、渡邊淳司の両氏による作品群を展示しました。展示作品から得られる不思議な感覚は、情報技術との新しいつながり方を予見させるものとなるでしょう。

出展者:安藤 英由樹、渡邊 淳司

稲見昌彦氏(慶應義塾大学大学院 教授)の作品群を展示しました。 コンピュータの世界と現実世界とをつなぐ稲見氏の作品は、テクノロジーの進歩によって失われつつある人間らしさを取り戻す試みともいえるでしょう。

出展者:稲見 昌彦

自作の楽器などでパフォーマンスを行う土佐信道(明和電機)の作品群を展示しました。 電信の登場、トランジスタの発明、コンピューターの普及など、テクノロジーが発達していく過程を、打楽器の生音と電子楽器の楽しさにより体感します。

出展者:土佐 信道

物理学を学んだ後、メディアアートの分野に転進した異色の作家、児玉幸子氏の作品を展示しました。 作品の中心にあるのは、米国航空宇宙局(NASA)で発明された素材である「磁性流体」(磁場に反応する液体)と「光」。電磁波や赤外線など、目には見えない力を操ることで生み出された作品群により、庭園のような華やかな空間を演出しました。

出展者:児玉 幸子

多様な自己表現を可能にするためのインタフェースの研究を進める、「JST ERATO五十嵐デザインインタフェースプロジェクト」の作品を展示しました。今回は、プロジェクトの中でも生活に関わる研究を中心に紹介。展示には、グリム童話に登場する小人のように、生活を助けてくれる架空の生き物「もんも」が登場。家電製品などにとりついて、私たちの指示に従い機械を操作します。未来の生活を予感させるような最先端のインタフェースを、もんもと一緒に体験しました。

出展者:ERATO五十嵐デザインインタフェースプロジェクト

コンピュータとデザインの関係について研究するプログラマー 古堅まさひこ氏と、新しい文字の概念を探るグラフィックデザイナー 大日本タイポ組合とのコラボレーション作品を展示しました。本展示では、私たちが日々情報をやりとりするために使用する「文字」に注目。文字をその文字として私たちが認識する要素は何であるかを、分解、回転、拡大、組み合わせなど、さまざまなアルゴリズム(=演算)を用いて、実際に作ることで体感しました。それにより、文字は一定の法則に従った組み合わせでできていることが見えてきます。文字の成り立ちを考えながら、文字の持つ個性、更には手書き文字とコンピュータによる入力文字の個性など、「文字」の新しい側面を発見しました。

出展者:大日本タイポ組合 ∩ 古堅まさひこ

タイトルにある「不可思議(フカシギ)」とは、万、億、兆、京などと続く数の単位で10の64乗のこと。実は、電車の乗り換えや電気の配電網など、さまざまな組み合わせの中から最適なものを選ぼうとすると、その選択肢は10の64乗という膨大な数になることも珍しくありません。超高速アルゴリズムは、こうした膨大な組み合わせの中から最適な答えを計算によって効率的に導き出します。その計算の「技」や、この「技」で私たちの未来はどう変わるのかを体感しました。

出展者:JST ERATO湊離散構造処理系プロジェクト

コンピュータなどの情報機器、コンテンツ、人間のコミュニケーションの融合の可能性を研究するJST CREST「共生社会に向けた人間調和型情報技術の構築」領域の研究を紹介しました。
会場は、物理現象で支配されている音や色といった「現実」を、情報技術で「拡張」する「工房(スタジオ)」です。例えば、床に映る影の色や、カーペットに残る足跡など、見慣れた当たり前の現象に情報技術の力が加わると、今までと全く違うものが見えてきます。「物理(モノ)×情報(コト)×人間(ヒト)」のバランスから生み出される新しい感覚を体験しました。

出展者:苗村 健

「自然という書物は数学という言語で書かれている」とのガリレオの言葉が暗示したように、世の中の複雑な現象をも数学的に表現する、最先端の研究が広く進められています。
もしも“1+1=2”で済むような単純な世界だったら、現象の理解も未来予測も問題解決も簡単にできるはず。でも現実の世界はあまりにも複雑で、無秩序に見えます。
本展では、そんな世界に「数理モデル」を駆使して挑む研究者たちを紹介しました。

出展者:FIRST 合原最先端数理モデルプロジェクト

私たちはふだん、見る、聞く、話す、触る、嗅ぐ、味わうなど、身体運動とそれに伴う感覚から、さまざまな情報を得て暮らしています。しかし、いまのテレビやコンピュータは視覚と聴覚に限定されたメディアであり、ものの素材感や重量感、そして人のぬくもりといった「触感」を体験することはできません。
この展示では、JST CREST「さわれる人間調和型情報環境の構築と活用」プロジェクトの、見て聞くだけでなく、手でさわり、全身で体感できるような、未来の体験型情報メディアの創造に向けた研究活動を紹介しました。人が自然環境にいるのと同じ感覚で振る舞うことができる、「さわれる情報環境」がもたらす未来を体験しました。

出展者:科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業(CREST)「さわれる人間調和型情報環境の構築と活用」

「歩き方」には、腕の振り方や歩幅の大きさ、姿勢など、人それぞれに違いがあり、その人独特の個性があります。この展示では2つの体験型コンテンツを通して、「歩き方」から個人を特定したり、年齢を推定したりする技術を体感しました。この技術は、JST CREST「歩容意図行動モデルに基づいた人物行動解析と心を写す情報環境の構築」プロジェクト(研究代表者:八木 康史)で研究しているもので、カメラで撮影した歩く姿を数学的に解析し、人物の特徴を読みとります。
ここで体験した技術は研究が進行中で、参加者の一歩一歩が研究データとして蓄積され、研究開発に活かされました。「歩き方」から個人がわかる未来の情報環境を、みなさんの足で感じとる展示です。

出展者:科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業(CREST) 「歩容意図行動モデルに基づいた人物行動解析と心を写す情報環境の構築」

ロボットたちが雑談している部屋の中に、ひとり紛れ込んでしまったあなた。彼らの会話に加わってみましょう。すんなり入り込めますか? 気後れしますか? あるいは違和感を覚えますか?
「ロボット談話室」は、対話ロボットとのコミュニケーションを体験する展示。出展者のJST ERATO「石黒共生ヒューマンロボットインタラクションプロジェクト」は、人とロボットが自然な対話をするための研究を行っています。この研究で大切にしているのは、人に十分な対話感(対話に参加しているという感覚)をもたらすこと。体験者のロボットとの対話の様子や意見が、人とロボットが親和的に暮らせる社会に向けた研究に活かされていきます。

出展者:吉川 雄一郎

数学者たちが発見した新しい定理や理論を使い、さまざまな自然現象や社会現象を解明しながら、現実の世界に役立てていく試みを展示しました。紹介したのは、数理モデリングという手法を用いて、視覚が起こす錯覚、すなわち「錯視」の研究を進める2人の研究者。
線や形が実際に描かれたとおりに見えない。見えるはずのない模様が見える。こうした不条理で奇妙な錯視の世界に、彼らが立ち向かった様子を展示しました。

出展者:新井 仁之、杉原 厚吉

運動、足りていますか?
体を動かすのは健康にいい。そんなことわかっている。だけど始められない、続かない。きっかけがあればなあ。そんな、日々の暮らしの中に、自然と運動を始めてしまうよう、テクノロジーを仕組んで展示をしました。出展者らは、これを「運動の生活カルチャー化」とよび、そのための研究開発を行っています。

出展者:伊坂 忠夫

私たちの身の回りには豊かな匂いの世界が広がっていますが、忙しい現代、匂いに心を向けるのはなかなか難しいことです。 この展示では、さまざまな匂いを実際にかぎながら、嗅覚の不思議を体感しました。近年の研究によってわかってきた成果のなかから、鼻が「匂い物質」をいかに捉えるのかと、脳が匂いをいかに感じ、感情にどう影響を与えるのか、という2つの視点から奥深い嗅覚の世界を紹介しました。

出展者:東原 和成

人工物にみられる生命的な現象を検証し、生命とは何かを探究する「人工生命」という研究分野を紹介しました。人工生命を研究する中で考えられた、生命と非生命の間の「半生命」という存在。半生命は、自分の意志で動いているように見えたり、複雑すぎて先が予想できない動きをします。頑張って生命になろうとしているようにも見えるのですが、しかしながら、いまだ生命になったものはいません。
半生命を生命に変える最後の一滴を、ルンバの開発者R.ブルックスはジュースに例えました。それが「ブルックスのジュース」です。このジュースを探しもとめるのが人工生命の研究です。
本展示では、半生命を表現した4点のアート作品を紹介しました。

出展者:池上 高志

モノが人に「ぴったり」合うものづくりに焦点を当てて紹介しました。
私たちは大量生産されたモノを日々使っています。しかし、画一的に作られたモノは、使い勝手が悪かったり、趣味に合わなかったりすることもあるでしょう。そんな中、近年は3Dプリンタなどの工作機器とコンピュータをつなぎ、個別のデジタルデータに基づいてモノを作る「デジタルファブリケーション」が普及してきました。この技術を使えば、一人ひとりの身体や状況、生活環境にぴったり合うものを作れるようになります。さらには、見た目や触り心地など、個人が持つ好みの感覚を数値化する研究も進んでおり、将来のものづくりに反映されれば、私たちに高い満足度をもたらすことが期待されています。
本展示は、「ぴったり」をつくるための「デジタルファブリケーション技術」と、「ぴったり」をさぐるため個人の感性を測る「感性定量化技術」という二つの研究開発の成果により構成され、一人ひとりに「ぴったり」なものづくりが当たり前になるクリエイティブな未来を想像しました。

出展者:田中 浩也、長田 典子