人間が排出し続けるプラスチックやコンクリートなどの物質は、遠い将来、地球の地層の一部として残る可能性があると言われています。本コンテンツでは、大気化学学者のパウル・クルッツェン氏が提唱する、人間活動によってつくられる地層を"人新世(アントロポセン)"という新たな地質年代として位置づける仮説をもとにしました。地球の誕生から現在までを振り返り、私たち人間が地球の歴史に何を残そうとしているのかを考えます。地球の歴史を岩石から調査する研究者や進化論の研究者と、アーティストがコラボした、ラップミュージックにのせた映像作品です。

※本コンテンツ「未来の地層 Digging the Future」は、サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコの日本法人アラムコ・アジア・ジャパン株式会社の支援により制作しました。

作品の背景・内容

特に1950年代以降、人間は経済の発展に伴ってプラスチックやコンクリートなど自然界で簡単には分解できない物質を大量につくり出し、多くの化石燃料を消費し続けています。こうした生産活動を人間が行うようになったのは、長い地球の歴史からするとわずか一瞬と言えるほど短い期間ですが、着実にペットボトルやアルミ缶などのかたちで堆積し、数ミリの地層として後世に残るほどとも言われます。つまり私たち自身も地球の歴史を作っていく存在なのです。本作品は46億年前から始まります。地球の成り立ち、生命や人類誕生、人類が築いた文明、農耕社会、産業革命以降の人間の営みなどを横断的に見ながら、数億年後に振り返ったときに、どんなものが地層になるのかを見ていきます。作品を通じて人間活動を振り返り、私たちが未来に何を残そうとしているのかを問いかけます。

作品のクリエイティブ性

太古から現在に至る地球の歴史を、特撮やアニメーション、CGなど多彩な手法で表現しているのは映像作家の古屋蔵人です。アニメーションにはたかくらかずきらも参加しています。子供から大人まで惹きつける、エンターテインメント性を備えた球体映像となりました。音楽を担当するのは、領域横断的な活動を行うラッパーの環ROY、タブラ(インドの打楽器)奏者のU-zhaanです。研究者による科学的な知見を咀嚼した言葉と、オリエンタルな響きを持つビートが絡み合う軽快な楽曲となりました。

科学監修

本吉 洋一 氏

国立極地研究所 教授

1954年千葉県生まれ。78年北海道大学 理学部地質学鉱物学科卒業。86年北海道大学 理学研究科 博士課程地質学鉱物学専攻修了、理学博士。オーストラリア・ニューサウスウエールズ大学研究員を経て、国立極地研究所地学部門助手、1994年助教授、2001年教授。2016年情報・システム研究機構国立極地研究所広報室長。第51次および第58次夏隊の隊長を務めるなど、南極歴多数。

佐倉 統 氏

東京大学大学院 教授、理化学研究所 チームリーダー

1960年東京都生まれ。90年京都大学大学院 理学研究科 博士課程修了、理学博士。三菱化成生命科学研究所 特別研究員、93年横浜国立大学 経営学部 助教授、95-96年ドイツ・フライブルク大学 情報社会研究所 客員研究員、2000年東京大学大学院 情報学環 助教授、07年教授。現在、「人工知能と社会の関係」、「科学の文化的位置づけを探る」をテーマとした研究プロジェクトを行っている。

参加アーティスト

環 ROY 氏

ラッパー

これまでに5枚のアルバムを発表、国内外の様々な音楽祭に出演。その他パフォーマンスやインスタレーションなどを制作。MV「ことの次第」が第21回文化庁メディア芸術祭にて審査委員会推薦作品へ入選。

U-zhaan 氏

タブラ奏者

オニンド・チャタルジー、ザキール・フセインの両氏にタブラを師事。坂本龍一、Cornelius、ハナレグミ等をゲストに迎えたアルバム『Tabla Rock Mountain』を2014年にリリース。

古屋 蔵人 氏

映像作家

編集者、映像ディレクターを経て、制作会社「ホーダウン」を設立。代表作に無印良品「MUJI TO RELAX」広告キャンペーン、SONY渋谷ビジョン監修など。

たかくら かずき 氏

イラストレーター

ドット絵やデジタル表現をベースとした平面作品、アニメーション、VR作品、ゲームなどを制作。劇団「範宙遊泳」でのアートディレクションのほか、仏教シューティングゲーム「摩尼遊戯TOKOYO」をリリース。