メディアラボ第12期展示「現実拡張工房」
常設展示「メディアラボ」は、先端情報技術による表現の可能性を、定期的な展示更新を行いながら紹介していくスペースです。第12期は、コンピュータなどの情報機器、コンテンツ、人間のコミュニケーションの融合の可能性を研究するJST CREST「共生社会に向けた人間調和型情報技術の構築」領域の研究を紹介します。
会場は、物理現象で支配されている音や色といった「現実」を、情報技術で「拡張」する「工房(スタジオ)」です。例えば、床に映る影の色や、カーペットに残る足跡など、見慣れた当たり前の現象に情報技術の力が加わると、今までと全く違うものが見えてきます。「物理(モノ)×情報(コト)×人間(ヒト)」のバランスから生み出される新しい感覚をお楽しみください。
出展者インタビュー
Graphic Shadow(グラフィック シャドウ)(2003)
白く照らされた床の上を歩いてみましょう。私たちがいつも目にする、のっぺりとした黒い影ではなく、色とりどりで動きのある影が現れます。たとえば、赤と緑の光を足すと黄色に見えるように、光を上手に足し算して白く見える床面をつくっています。ついに影までも情報技術で拡張されました。情報の世界は、私たちの世界にどんどん溢れ出してきています。
研究開発:筧康明・苗村健
開発協力:蓑毛雄吾・加藤寛
展示協力:山本紘暉・甲斐貴之・樋爪真子・田中恭太郎
MorPhys(モーフィス)(2012)
床の上に置かれている小さな立体物。これは何だと思いますか? この立体物は、私たちが中に入れるくらいに巨大化させて、移動させることができます。まるで三次元コンピュータ・グラフィクスを見ているような形の変化は、実はスチール製の巻尺をモータで出し入れすることで作られています。この作品は、動く建築を目指して作られました。建築というと、かたくて動かないものというのが常識ですが、未来の建築は、日当たりの良い場所を探して移動したり、カバンに入れて持ち運ぶことができたりするかもしれません。
研究開発:武井祥平・飯田誠・苗村健
展示協力:長徳将希・吉橋亮太・周磊杰
Photochromic Carpet(フォトクロミック カーペット)(2013)
シューズを履いて、カーペットの上を歩いてみましょう。ふしぎな足あとが残ります。目には見えませんが、シューズの底からは紫外線が出ています。カーペットには、紫外線に反応して色が変わる「フォトクロミックインク」が塗ってあります。このような特殊なインクによって、私たちの未来はもっと変化に富んだ彩り豊かなものになるでしょう。
研究開発:サーカス ダニエル・辻井崇紘・西村光平・橋田朋子・苗村健
Thermo-key(サーモキー)(2000)
カメラに写る「あなた」。いつもと違いませんか? 手で口や目を隠しても、横顔にしても逆立ちしても、コンピュータはあなたを見逃しません。生放送中でもモザイクをかけることができます。その秘密は温度です。光を見るカメラだけでなく、温度を見るカメラからも豊富なヒントを得ることで、コンピュータは素早くあなたを見付けることができます。私たちの世界と情報世界を結びつけるカメラは他にも考えられます。未来のカメラは何を見て、何を伝えてくれるのでしょうか。
研究開発:西貝吉晃・安田和隆・苗村健
開発協力:野末侑希・Pham Viet-Quoc・澤田耕司・岩田啓・川原圭博
展示協力:中村鮎葉・後藤正太郎・長徳将希・谷合竜典・中島諒
でるキャラ(2013)
これまで画面の中に閉じ込められていたキャラクタが、目の前に飛び出してきて、本物のブロックの上を駆け回ります。ブロックの位置を変えると何が起きるでしょうか。深度センサと特殊な鏡を使って、現実と映像の境界がわからない体験をつくりだしています。コンピュータの画面からさまざまな情報が飛び出すSFのような世界はすぐそこまで来ています。
研究開発:金ハンヨウル・高橋一成・山本紘暉・甲斐貴之・前川聡・苗村健
展示協力:森泰子
EchoSheet(エコーシート)(2011)
イーゼルの上にある紙でお絵描きしてみましょう。描く音がいつもより大きく聞こえて、まるで映画の中のワンシーンのようです。これを、アニメーション作家が使ったところ、耳で感じながら綺麗な線を描くことができました。漢字の書き取りで使った人は、いつもよりたくさんの漢字を書くことができました。私たちが持っている本来の力は、このようなちょっとした「現実の拡張」によって驚くほど発揮されるのです。
研究開発:金ジョンヒョン・伊藤香織・橋田朋子・大谷智子・苗村健
展示協力:長徳将希・西村光平
協力:株式会社サンライズ
公開時期 | 2013年7月3日(水)~ 2014年1月13日(月) |
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出展者 | 苗村 健
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