株の取引にみる機械がうみだす高速コミュニケーション
必要な情報をどれだけ迅速に得られるか?
これは株の取引ではとても重要なことです。
「必要な人に必要な情報をすばやく提供する」コミュニケーションに機械学習が一役かっています。機械学習とは、特定のテーマについて人工知能が判断したり、予測したりできるようになるためのしくみで、情報をパターン分けする計算方法(アルゴリズム)に基づき、機械が自分で学習していきます。
機械学習を使えば、SNS上にあふれている人々のつぶやきやコメントが市場にとってポジティブなのかネガティブなのかを判断したり、世界中のウェブサイトで発表される“取引に関係ありそうな文書や記録”を集めたり、さらには、それらを細かく振り分けたりできるのです。このような情報処理が、検索時間を短縮したり、その情報を必要としている人にすばやく届けるのに役立っています。
実際の情報処理はどのように行われているのでしょうか。
情報収集から分析、保存に至る機械学習のしくみを少しだけ紹介しましょう。
まずウェブクローラー※1が集めた文書などの情報が、仮の情報置き場であるオブジェクトストアに一時保管されます。機械学習が情報のパターンを分析し、適切な保存先が決まったら、仮置きしていた情報をそこへ移し、すぐに取り出せる状態で保存します。もし情報があいまいで機械学習がうまく処理できなかった場合は、そのことが画面に表示され、人間が作業を行います。
「なんだ、できないんじゃないか!」
と思うのは少し早いかもしれません。機械学習は、そのときの処理方法でうまくいかなかったこと自体を経験、つまりデータにすることで、次に同じような情報と出会ったとき、自分で処理できるよう進歩していくのです。つまり、処理が成功しても失敗しても、機械学習システムの精度は高くなっていくというわけです。
機械学習によって、成功と失敗、その両方から学べるようになった人工知能は、株の取引をどのように変えていくのでしょうか。情報をより正確に理解し、より的確な判断を下せるようになった人工知能が、膨大なデータから取引で必要な情報を取捨選択し、迅速に提供してくれるようになるかもしれません。
速く、そして、正確な情報のやりとりが求められるビジネスシーン。コミュニケーションの相手が人間から人工知能にとってかわる日が遠からずやってくるかもしれませんね。
「伝えあう」
気がつかないうちに繰り返すこの行為に、私たちは何を求めているのでしょうか?何気ない場面でふとそんな疑問を感じたときは、ぜひ誰かと語り合ってみて下さい。
Text by 逢坂 真吾(Bloomberg L.P. グローバルデータ部日本経済指標担当)
※1 自動的にインターネットをチェックし、あらゆる情報を集めてくるプログラム