topics vol.028

月探査の今と障壁

月探査の3段階の成果では、月の科学的データを大量に得ることができた。つまり、今後は月に人が行き、利用しようとする段階にきたといえる。研究者は今後どのように月を利用していくのだろうか。

NASAの宇宙開発ロードマップ

「これからの宇宙開発は、アポロ時代のように競争だけの時代ではなく、世界各国の協力が必要になるでしょう。それでもアメリカの計画が中心になって行われると思われます」と佐藤氏は語る。ここで、これまでNASAが描いてきたロードマップを考えてみる。

NASAは無人月探査や国際宇宙ステーション(ISS)で技術を蓄積させ、2020年以降に有人月探査を実施することを計画し、新しい宇宙船「オライオン」や、大型のロケットの「アレスV」などの開発も計画していた(しかし、以上の計画が、オバマ政権により見直されている)。
確実に月に行ける技術が確立された後、月面基地が建設される。日照条件がよい、温度変化が激しくない、水や水素が抽出できる−−この3つの条件を満たす場所に月面基地(左図上)がつくられる。月面基地には、居住設備、電力装置、着陸設備や輸送システムなど、さまざまな設備が必要になる。ほかに、月面で天文台をつくる、月の資源を利用するなどの計画も存在する。

研究者はさらに先を考えている。月面基地を拠点とし、火星探査を行おうとしている。月での長期滞在技術が確立されれば、その技術が火星の有人探査技術に応用されるだろう。NASAは2030年中頃には有人火星探査を実現したいと考えている。
以上、技術的に解決しなければならない問題はたくさんあるが、月面拠点作りから有人火星探査まで、研究者には様々な形で月を利用する計画があることが分かる。

技術的課題とは?

「人類が再び月に行くためには、輸送技術、有人技術、着陸・探査技術の3つの技術を確立することが必要になります。そのためには、世界14の宇宙機関が協力して宇宙開発を進めなければなりませんし、特に日本の役割は重要になるでしょう」と佐藤氏は語る。

日本はこれまでの技術開発で有人月探査に転用可能な技術を獲得している。輸送技術に関しては、昨年度H-IIBロケットを打ち上げ、宇宙ステーション補給機(左図中)で物資を運ぶことに成功した。将来は有人宇宙船として改良することが考えられている。

また有人技術では、国際宇宙ステーション(ISS)に日本の実験施設「きぼう」が完成し、宇宙空間の激しい温度差から人間を守る、人間が吐く息をきれいにする、宇宙船の空気の温度・湿度を調節するなど、生命維持に必要な技術が確立されてきている。

着陸・探査技術でも、日本の技術は重要だ。特に車の技術を発達させた国として、F1やパリ・ダカール・ラリーなどで培った技術が月探査に応用できる。現在、「レゴリス(月の砂)」上を速く走ることができる軽自動車のようなローバー(左図下)の開発のため、官民が一体になって研究を始めている。
さらに、日本の大学でも、レゴリスから水や酸素を作る研究が実施されるなど[★1]、月開発のための研究はすでに多方面で始まっている。それらの研究が大きくなるか、小さくなってしまうかは、私達国民がどれくらい月研究を理解し、推し進めるかにかかっている。





[★1]レゴリスから水や酸素を作る研究

東京工業大学渡辺隆行氏らの研究。 詳しくは、以下のHPを参照のこと。「月資源利用技術について」


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