topics vol.023

宇宙で築いた日本の役割

技術者の眼で実験を判断する

現在、中村氏は、宇宙環境利用センターの技術領域総括として、実施すべき実験の選定や、成功に導くための指導、成果のアウトリーチ活動の方策づくりなど、広範囲にわたる仕事を、国境を越えた国際的なチームの中枢で担っている。しかしもともとは技術者であり、H-IIロケットや宇宙実験のための実験装置などを開発した人と聞く。

「宇宙環境利用センターに来る前は、ロケットの開発を行っていました。誘導制御やテレメトリ計測[★1]などのアビオニクス[★2]の部分の担当です。開発はそれぞれの部分によって担当が分けられ、それぞれが開発を行います。最後にすべてを合わせて完成するのですが、間をつなぐ部分が一致していないとうまくは動かない。全体を調整して、うまく完成させるのが難しかったですね」。

その後、中村氏は「きぼう」の技術開発部門に異動となる。そこで実験装置の開発に携わることになった。技術的な開発と現在の宇宙実験の取りまとめは、一見異なる業務のように思うが、共通する部分はあるのだろうか。

「実験の取りまとめには、技術的バックグラウンドがあることがとても重要です。研究者がやりたいことが本当に実現可能かどうかを、感覚的に予測することが必要なんです。国際調整においても、現実を把握し、技術的に可能かどうかがわからないと、どこまで自分を主張するか、相手の主張をどこまで受け入れるかが判断できない。技術的知識は役立っていると思います」。 宇宙実験を知り尽くした人であり、実験を成功させるための要の役割を担っている。

可能性の先の目標づくり

かつて、米国やロシアが先導してきた宇宙開発の現場で、今や日本は「きぼう」という独自の実験棟を開発し、運用している。「きぼう」が特徴とする大きな船外プラットフォームでは、ほぼ全天に渡る広い視野を利用して、天体観測や地球大気の観測などが行われている。

「日本は独自のロケットや実験棟を持ったからこそ、各国と肩を並べるまでになってきた」と中村氏は感慨深げだ。一方で、
「米国やロシアに追いつこうと宇宙開発を行っていた時代は迷いがありませんでした。しかし、いろいろな可能性が見えてきている今は、目標を作りながら先へと進んでいく必要があります」とも語る。





[★1]テレメトリ計測

遠隔地のロケットが計測したデータをコントロールセンターに電送する技術。


[★2]アビオニクス

Avionicsは、aviation(飛行術)とelectronics(電子工学)の造語。航空電子工学。電子工学を応用した航空工学および宇宙飛行学を示す。

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