topics vol.022

宇宙天気予報

太陽フレアの事前予測

太陽フレアが発生した場合、放出された高エネルギー粒子で宇宙飛行士が被爆するまで、最悪の場合、数十分間しかない。その間に、船外活動中の宇宙飛行士は、高エネルギー粒子を防護するシールド裏へ避難する必要があるが、あまりにも短い時間だ。

太陽フレアは、予期せぬ時に発生する。現在は、過去(前回)の太陽フレア発生実績などから経験的にその発生予測を行っている。
「将来は、コンピュータのシミュレーションにより、太陽フレアの事前予測ができると良いと考えています。ただし、これは簡単なものではありません。地震の予測に似て、大変難しいのです」と、亘氏は言う。現在の予測は観測データを分析し、研究者たちの経験則から、宇宙環境の推移を予測している。太陽フレアの発生機構を、コンピュータでシミュレーションすることが可能になれば、事前予測はより簡単に、高い精度で行えるようになるだろう。その時は、より安心して人間が宇宙空間に進出できるようになる。

子供たちへのメッセージ

これから先、宇宙天気予報を利用して、宇宙へ行くかもしれない子供たちへ、最後に亘氏よりメッセージをいただいた。 「実は、いまやインターネットを使えば、宇宙天気予報は誰にでもできます。人工衛星ACE[★5]やSOHOの観測データは公開されているので、それをプリントアウトして、CME[★6]の速度を物差しで図って計算することだってできます。情報が共有されている現代は、誰でもサイエンスができる、アイデア勝負の世界なのです」。

私たちが、机上で宇宙天気シミュレーションをするのは無理だとしても、インターネットと物差しで、宇宙天気予報の初歩の初歩は体験できるようだ。机の上で太陽の動きを自分で計算できたら、私たちも亘氏の語った「パズル」の1ピースに、ちょっとだけ触れた気分になれるかもしれない。
宇宙天気予報が、今後、多くの人に利用されるようになった時には、もしかしたら宇宙天気予報士という職業も登場するかもしれない。

「宇宙天気予報士の養成講座なんて良いかもしれませんね。未来館でいかがですか?」と亘氏も語る。宇宙レベルのパズルに挑戦したい方は、もしかしたら現実になるかもしれない養成講座の開講をお待ちいただきたい。




[★5]ACE

ACE(Advanced Composition Explorer)衛星。太陽風のリアルタイムデータを提供している。

[★6]CME

太陽活動に伴い、大量のプラズマが太陽から噴出される現象。


中村泰

亘慎一(わたり・しんいち)
情報通信研究機構 電磁波計測研究センター 宇宙環境計測グループ・研究マネージャー

whos whoWho's Who

1959年千葉県生まれ。82年東京農工大学工学部を卒業し、84年同大学院工学研究科修士課程修了。84年より電波研究所(通信総合研究所を経て現情報通信研究機構)、94〜95年米国海洋大気庁宇宙環境研究所(現米国海洋大気庁宇宙天気予報センター)客員研究員、99年博士(理学)、2006年4月より現職。

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