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topics vol.022

宇宙天気予報研究

日本の宇宙天気予報研究の世界的な位置づけ

「宇宙天気予報」を歴史的に最初に行ったのは、イギリスの天文学者リチャード・キャリントンといわれている。1859年9月、キャリントンは、太陽の観測中に見つけた明るい光とオーロラ活動の活発化の関連性を初めて見出した。
キャリントンの時代は、太陽観測に望遠鏡を用いていたが、現代は人工衛星を利用している。
「宇宙天気予報が、現実的に使える研究になったのは、衛星データがリアルタイムで伝達できるよう通信インフラが整備された近年からです。この研究には、通信インフラが重要です」と亘氏は語る。

NICTは、世界13カ国が加盟する国際宇宙環境情報サービス[★3]の日本の宇宙天気予報センターとして活動している。日本の「宇宙天気予報」研究は、世界的に見るとどのような状況なのだろうか?亘氏に訊いた。
「現在、NICTでは、宇宙天気シミュレーション[★4]による数値予測の研究をしています。日本は、この分野で世界的に見てトップクラスであるといえます。シミュレーションだけでなく、衛星などによる観測も重要です」。

宇宙天気予報では、観測データの取得、理論研究、シミュレーション計算などが行われ、日本は世界をリードする存在だ。 観測データの取得では、X線による太陽観測衛星「ようこう」、「ひので」が成果を上げているが、太陽風の直接観測は、他国の衛星に頼らざるを得ない状況もある。他国の観測データは、世界に共有されている。しかし、他国のデータを利用するだけでは、研究をさらに発展させる際に厳しい部分もあるようだ。亘氏は、
「他国のデータを使うだけでは、独自の切り口で観測することが難しいです。 また、国内の研究者育成や、新たな研究を進める上で弱いといえます」と語る。

研究の面白さ、難しさ

亘氏は、特に観測データによる解析研究を行っている。
「研究は、太陽の活動を観測し、規則性を見いだすことをメインとして行っていますが、太陽と宇宙環境の大きな乱れの関係性を見出すのが面白いですね。パズルが解けるような感じです」。

宇宙天気予報の「パズル」には、太陽フレア、太陽風、地球磁場、電離圏等、様々な「ピース」がある。「ピース」同士のつながりを観測衛星やコンピュータを使って見出し、宇宙で起きている現象を解明する。これは、確かに楽しそうだが、もちろん、そこには難しさもあるようだ。

「地球と太陽が遠く離れているため、予報の精度を上げるのが難しいのです」。
地球と太陽は、約1億5000万kmも離れているのだから、宇宙空間で起きていることを自身の目で見て、手を伸ばすわけにはいかない。どうやっても、手の届かぬ歯痒さがありそうだ。しかし、パズルは難しいから、面白いもの。亘氏は、宇宙規模の巨大パズルに挑戦し続けているのだろう。

研究マネージャーという立場

亘氏は、NICTの宇宙天気予報チーム数名ほどをまとめる、研究マネージャーだ。マネージャーという立場上、研究を一歩退いた視点から分析し、目先の結果だけではなく、行く末も深く考える必要があると思われる。マネージャーという立場から見た、研究の難しさを教えていただいた。

「研究では、どう役に立つのかを示さなければいけないというのが一番厳しい点です。宇宙天気予報が世の中でどう役に立っているのか、そのフィードバックを利用者側からなかなか得られないというのが現状です。その結果、活発な太陽活動による被害状況を、NICTでは充分に把握するのが難しい状況です」。

また、現在は、宇宙天気予報を利用する側が限られており、一般の人々には、まだあまり知られていない。
「多くの人が宇宙天気予報を利用するようになれば、より多くのフィードバックを得られるようになるかもしれません。宇宙旅行などで、宇宙天気予報が広く盛り上がってくれるとよいですね」と、亘氏は語る。














[★3]国際宇宙環境情報サービス

宇宙環境の情報提供を行っている国際機関。ISES(International Space Environment Service)。

[★4]宇宙天気シミュレーション

宇宙空間を再現する数値モデルをコンピュータ内に構築し、観測衛星より取得した観測データを入力、オーロラ発生の様子や太陽風の状態を計算し、解析や予測を行うこと。


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