topics vol.022

「きぼう」での実験

宇宙で風が吹き、嵐がおきる

行楽のため、農作物を育てるため、何よりも地球を暖めて凍りつかせないため、太陽は私たちの生活に絶対不可欠な存在だ。しかし、その太陽はまた、平穏な日常生活を脅かす存在でもあることをご存じだろうか?
太陽からは日々、太陽風[★1]が地球に向かって飛び出している。しかし、地球は磁場や大気により守られているため、通常の太陽活動では、これらを心配する必要はない。問題となるのは、大規模な太陽フレア[★2]等、太陽活動が活発化した時だ。これにより、通常よりも大量の太陽風や放射線が飛び出し、3、4日の間、宇宙環境が大きく乱れる現象が起きる。この現象を、宇宙嵐という。

地球が太陽嵐にさらされる

太陽嵐により放出される太陽風の乱れは、地球に到達すると、地球の地球磁場を乱す磁気嵐と呼ばれる現象を発生させる。1989年3月13日未明、磁気嵐による誘導電流がカナダのケベック州にある発電所に流れ込み、トランスを焼失させた。この結果、600万人もの人びとが電力供給なしのまま9時間を暗闇で過ごすこととなった。同じく2003年10月にもスウェーデンのマルモで同様の現象が発生し、5万人が影響を受けた。

放出された大量の放射線は、大気の薄い高空や、地球磁場が宇宙空間に開いている極付近で特に問題となる。多くの乗客を乗せた旅客機は、約10kmという高空や、北極上空でも運行されているが、太陽嵐の際には放射線の影響を受ける可能性がある。
また、人工衛星が誤作動を起こしたり、宇宙飛行士が被爆による健康被害を受けたりする危険性がある。現代は、GPSや通信、放送等で、人工衛星が多く利用されている。人工衛星がもし失われたら、私たちの日常生活に受けるダメージは大きいだろう。

「そなえよ、つねに」

亘氏によると、宇宙飛行士が、太陽フレアによる放射線を避けた例が過去にあったそうだ。
「1989年10月、ロシアの宇宙ステーション・ミールに搭乗していた宇宙飛行士が、太陽フレア発生の連絡を受け、放射線シールドの厚い所に避難したことがありました」。
まさに、間一髪。ミールに搭乗していた宇宙飛行士も、肝を冷やしたことだろう。
今後の宇宙開発や、未来に一般化するかもしれない宇宙旅行に向け、太陽活動に対する備えがますます必要となる。その備えとなる研究が、亘氏の率いるチームが行う「宇宙天気予報」だ。

「NICTでは、太陽の観測データから宇宙環境の現在の状況と予報を、Webページ、電子メール、テレフォンサービス等で毎日、情報発信しています。また、火曜日と金曜日には週間予報、大きな現象の際には臨時情報を発信しています」。
これを利用しているのは、主に通信・放送の人工衛星を運用する業者や電力会社等だそうだが、あなたがもし気になれば、今日の宇宙天気を今すぐ携帯電話からでも知ることができる。










[★1]太陽風

太陽から吹き出す極めて高温で電離した粒子(プラズマ)。

[★2]太陽フレア

太陽の大気中で発生する爆発現象。


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