5 2025年、近未来ロボットの行方とは? 現状とつなげて考える近未来ロボットのリアリティ

ロボット産業を振興させる計画や、そのために必要なことはわかってきたが、一大産業になっていく姿がまだ想像できない。それは私たちにとってどんな意味があるのか。そしてその姿を誰が描いてゆくのだろうか。

 ── 2025年に基幹産業となり、労働力を補ってくれるロボットとは、どんなものなのでしょう? 何が私たちの社会に新しく登場するのでしょう? それがハイテク機械ではなく、ロボットでなければならない理由は?

近藤 ── レスキューロボット(例:ハイビスカス)など、ロボットが危険な場所での作業を人間の代わりにやってくれるという姿はまずイメージできますね。人間を助けてくれる良きフレンドです。これはアニメロボットが誕生した頃からずっと日本人の中で築かれてきたイメージです。正義の味方なのですね。外国ではロボットと言えば侵略者、敵とイメージする方がメジャーのようですが。

先川原 ── 日本人ってロボットが好きだと思います。そしてメディアでよく見ていたロボットが実物で見られる展示会には人が大勢集まります。ところがロボットはまだ十分な産業になってないので、スポンサーがつきにくいという面があるのも事実です。

ところで今の学生が興味を向ける二大テーマは、宇宙とロボット。一昔前は自動車が挙げられましたが、いまは未来の夢の対象ではなくなったようです。自動車はすでに基幹産業で、学生が将来の仕事を考えると手堅い分野のはずです。しかしロボット産業は職もなければ資格もない中で、人気だけが先行しているという状況です。

比留川 ── アニメが好きになって、研究者になることはあるようですね。産業ロボットが日本に定着したのは終身雇用があったおかげですね。働く人にとってロボットが敵にならなかった。便利になるだけだった。教育レベルが高かったので、機械に対する恐れがなかった。自分が使えないと思うと普及しないですからね。日本人はオタクですね。機械オタク。だから良かったのです。

 ── しかし、今後は国民が何を求めるのか、ロボットの目的や使い方がはっきりしないと、ロボット産業の振興はありえませんよね?

比留川 ── 富士重工の掃除ロボットでも、市場に認められるのに15年かかりました。新しい価値の普及には時間がかかります。それをねばり強く訴える努力がこれまでは少なかったと思います。どちらかというと、ロボットを出し物に使い、テレビで話題になるということで満足してしまった。

先川原 ── 大小にかかわらずどのメーカーも、国も含めて、日本ではロボットが広告塔としてものすごい効果を発揮しています。何億円の広告効果がありますという説明のもとにつくられたロボットが多いのも事実。ロボットをCMに使うと企業のハイテクイメージが上がり、ロボットで食べてる会社じゃないのに就職したい学生が増えます。90年代後半からの動きです。

比留川 ── これまでロボットをつくってきたメーカーが売ってきた最大のものは「夢」だったとも言えるでしょう。20年したらこんなものができますというイメージを先行させてきた。しかし、そろそろその手形を落とす時が来たと感じています。

 ── われわれがイメージを共有できるようなロボット開発の具体的な目標や使われ方は、国策には無いのでしょうか?

比留川 ── まだ具体的にはないでしょう。

先川原 ── 成功させなければならないので、目標の設定が難しいのだと思います。fuRoの副所長はレスキューロボットの開発をしていましたが、それを見たハウスメーカーが床下点検に使えるとして、普及させる動きに出ています。何かのロボットを見て、全然違う企業がその使い道に気づくという流れが、産業化に結びついていくのではないでしょうか。いろんな種類のロボットが登場することで、社会への刺激を与えることも重要です。経営者に対するアピールも必要です。我々開発側だけではどこにどんなロボティクスが活きるのか、想像に限りがありますから。

比留川 ── そのパターンはあります。しかし一方で、ロボットの研究者自身がもっと使われる現場や市場を見る必要性を感じています。今のロボットがどのくらいの能力があるのかは、開発者にしかわからないんです。素人は高度なことができると思いこみがちです。ロボットがどのくらいバカな機械かわかる人が現場を歩いて、使えるかどうかじっくり判断するということが重要です。たとえば、IT化の進んでいる飲食チェーンで、唯一まだIT化されていない「配膳」がロボットにできるのか。実際に現場に出てみると、アトラクションとしては成立しても、 客に接する気遣いの必要なサービスは、無理だろうという結論になりました。このような話は現場に出て現場の人と話さないとわかりませんね。

人間の代行、人間と協調するためのロボット開発というが、その目的にリアリティはあるのだろうか? あと12年でどれだけ人間の所作に近づくのか、技術をしっかり見極める必要がありそうだ。そして私たちがロボットをいかに使っていくのかを、社会の現場の中で切実に考えるべき時が来ているのではないだろうか。

*注4 技術のユニット化/ユニット化=モジュール化
ロボットはさまざまな部品、技術が統合されたシステムである。ロボットをつくろうとすると機械機構技術や電子回路技術、センサー技術、制御技術、ソフトウェア技術などあらゆる技術を駆使する必要があり、簡単ではない。そこでロボットを部品や機能ごとのモジュール(ユニット)に分割し、組み合わせて必要なソフトをインストールするだけで簡単に目的のロボットを作れるような規格を作ろうという考えがある。そのような規格があれば、まるで自作PCを組み立てるごとく、自分の目的に合ったロボットを簡単に組み立てることができるようになる。


ハイビスカス
レスキューロボ「Hibiscus」。fuRoの小柳栄次氏が開発。災害現場において瓦礫上を走行し、被災状況を調査したり、要救助者を捜索したりするためのレスキューロボット。機体全体をクローラーで覆うように構成、また独立して動くクローラーアームを4本装備することで、瓦礫上を安定して走行できる。レスキューロボットの世界コンテスト「Robo-Cupレスキュー」での優勝経験を生かして開発されている。
→Hibiscus


ロボットによるビルの清掃システム
富士重工業と住友商事が共同開発。「人とロボットが協調したビルの最適な清掃方法の検討」を行い、ロボット単体ではなく、エレベーターと連動させるなどした清掃システム全般を提案するもの。「今年のロボット大賞」2006の大賞(経済産業大臣賞)を受賞。すでに病院や製薬工場、マンションなどで使われている。
→受賞者インタビュー
→富士重工株式会社クリーン事業

4 推進される“ユニット化”とは? 値段と機能のバランスを考えた賢いロボットのつくり方

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