辺境の生物を追う旅を続ける科学者・長沼毅と、地球と生命に対する飽くなき好奇心を持つ作家・藤崎慎吾が、日本の辺境を訪れ生命について語り合います。生物にとって辺境とは何か、旅の先々で2人が見ている辺境のフロンティアを、一緒に体験してみませんか?

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第2回 極限環境をさぐる研究施設 国立極地研究所(その1)

2007年11月 2日

−20℃の低温室で語り合う2人。左が藤崎慎吾氏、右が長沼毅氏

最初の旅で、微生物の定義を確認し合ったふたり。2回目の旅では、“いかにも極限環境らしい場所”を求めて、東京・板橋の国立極地研究所を訪れることに。−20℃の冷たい部屋の中で、「南極」という辺境と、そこに生きる生物について語り合われた。

撮影=山崎エリナ

企画・構成=日本科学未来館+光文社 取材協力=国立極地研究所


東京・板橋にある国立極地研究所の入り口

司会者 ── 前回の酒祭りもある種、辺境といいますか、極限環境だったと思いますが、今回は板橋の飲み屋街のちょっと外れの極限環境にやってきました……ふつうの人が足を踏み入れることは、まずないと思います(笑)。ちなみに、ここはいったいどういう場所なんでしょうか?

藤崎 ── 今日はいかにも極限環境らしいところということで、国立極地研究所*1)の低温室*2)にお邪魔しております。この研究所には−20℃の実験室と−60℃の実験室があるらしいんですけど、この部屋は−20℃。

司会者 ──これでまだ−20℃なんですね。

藤崎 ── ここに南極の氷床*3)を掘削したサンプルが置かれていますが、こういったものがあちこちに保管してある場所のようです。あとは生物や土壌の試料もあるようですが。

*1) 国立極地研究所
*2) 国立極地研究所の低温室
*3) 氷床とは大陸規模の氷河を指し、現在は南極大陸とグリーンランド大陸に存在する。南極大陸のほとんどは氷に覆われ、山脈の頂上が一部、氷上に頭を出している。この巨大な氷の塊が「南極氷床」と呼ばれ、厚さは平均1,856m 、面積は約1,386万km2と推定されている。体積は約2,540万km3で、地球上の氷の90%を占める。
南極で採取された隕石も展示されている

南極って、どんなとこ?

南極の氷床のサンプル

藤崎 ── 取材メンバーの中で南極へ行ったことがあるのは先生だけなので、とりあえず南極がどういう場所なのかを、おうかがいしたいのですが、まず地理的に山はありますよね。

長沼 ── あるね。

藤崎 ── 山があるっていうことは谷もあるし、海岸線もある……、湖があるって聞いたような気もしますが、それは夏の間だけ?

長沼 ── 南極大陸は氷に覆われているけれども、端っこのほうには氷も雪もない、岩がむき出しのところがあって、そういうところに水溜りができ、池や湖、沼に変わるんです。冬には表面が凍って、夏になったら氷が解けて水面が顔を出す、そういうところもありますね*4)。

藤崎 ── 川はありますか?

長沼 ── 夏に氷や雪が解けると、雪解け水が沢をつくる……すると、ストリームになる。南極 には日本隊が作った名前で、ナントカ沢っていう地名はけっこうあります。

藤崎 ── 当然、氷河もありますよね?

長沼 ── 南極の氷は大陸氷河。氷床というのは、すなわち大陸氷河です。

藤崎 ── それ以外に隠れた湖もあるそうですが、それはまたちょっと後の話にして、じゃあ南極のそういう環境を一言でいうと何と表現しますか?

長沼 ── 水はあるけれども、水がない土地ね(笑)。つまり氷として固体の水があって、海水もあるけれど、しょっぱくて、普通の飲める真水がない。だからけっこう水に不自由する土地だなというのが第一印象。それこそ南極に生物がいないのは、寒い以上に、やっぱり水がないことが大事な理由だと思います。

藤崎 ── 空気は乾燥してる?

長沼 ── 非常に乾燥してる。たぶん地球上でいちばん乾燥している土地は南極です。

藤崎 ── それは、空中に水分があっても、すぐ凍って落ちちゃうからですか?

長沼 ── 凍って落ちる……そうね、凍って落ちるから、結局空気そのものが非常に乾いちゃって、仮に水があっても、あっという間に空気のほうに吸われて凍って落ちちゃう。

藤崎 南極より寒いところはあるんですか?

長沼 ── シベリアの奥地にあるベルホヤンスクでは、−80何℃を記録してるけれども、たぶん南極のほうが本質的には寒い*5)。南極は今、地球の「冷源」として働いている。南極が寒いっていうことが、今の地球の気候を全部決めているんです。

藤崎 ── 海水なんかも、南極のまわりで重くなってますよね。

長沼 ── うん。深層水とか低層水のできる場所は、南極のまわりとグリーンランドのまわりだろうね。グリーンランドのほうが実際は多いけれども、南極ももちろんつくってます。南極という大陸は、よその大陸と切り離されてまわりを全部海に囲まれている。海が地球を横に一周しているのは南極のまわりしかない。海流っていうのは基本的に地球を横に流れるわけで、必ず大陸にぶつかっちゃうんだけれど、南極のまわりだけは、ぐるぐると何周でも回っていける*6)。南極は他の大陸や、海洋とも切り離されて、一人寂しく冷えていく。そうじゃなかったら暖かいほうから海流が流れてきて、結局、暖まっちゃうんだ。例えばグリーンランドやノルウェーは、メキシコ湾流の影響で意外と暖かい。でも南極は一人寂しくどんどん冷える。まあ、そういうところです。

藤崎 ── 以前にうかがったんですけど、南極が塩辛いっていうのは、どういう原理によるんですか。

長沼 ── さっきも話に出たけれど、南極の端っこのほうにある、氷も雪もない、岩がむき出しのところを「露岩域」っていうのね。南極の面積の3%弱、とはいっても全部合わせると日本の面積ぐらいに相当するむき出しの土地があって、そこには池がいっぱいある。その池っていうのはもともと海だったんだよね。 今から1万年前に氷河期が終って、氷河が後退しはじめた。すると、氷河という氷の重しがとれて、陸地が浮いてくるんだけれど、その時に海水を一部取りこんで海水が内陸化する。その海水がどんどん蒸発すると塩が残ってしまう。原理は砂漠にある塩湖と同じです。

藤崎 ── じゃあ、「塩辛い」っていうのは、陸水が塩辛いという?

長沼 ── そう、陸水が塩辛い。もともと海水だったからね。

藤崎 ── 露岩域のところも舐めると塩辛いんですか?

長沼 ── あちこちから塩が析出してるからね。海水が岩のひび割れにどんどん染みこんでいって、それも蒸発しちゃうでしょう。そうするとあちこちで塩がどんどん噴いて、すごいしょっぱい。

藤崎 ── 氷は当然、しょっぱくないですよね。

長沼 ── 氷は真水ですからしょっぱくない。氷と、それが解けた真水が夏の間だけあって、他はしょっぱい大地。非常に塩分の変動の大きいところです。南極は白い大地っていうけども、僕は「しょっぱい大地」だと思う。

*4) 南極の湖沼にはコケ類や藻類、細菌類などが集まって、高さ数十cmの塔のような構造をつくっている場所がある。その塔は「コケ坊主」と呼ばれており、表面では光合成が行われている一方、中心部は腐って嫌気的な環境になっている。ある意味で「ミニ地球」のような構造だ。詳細は下記URLなどを参照のこと。
http://antmoss.nipr.ac.jp/ham/ja/cont/nashi/seitai.html
*5) 北極より南極のほうが平均20℃ほど寒い。地球上で公式に測定されたいちばん低い気温は、南極のヴォストーク基地で記録された−89.2℃。
*6) 南極大陸についての詳細は国立極地研究所「ふしぎなふしぎ南極!?」参照

そんな南極に生きる生物

藤崎 ── 南極は、乾燥してて寒くてしょっぱいと。そこに生きる生き物では、ペンギンとかアザラシがよく知られているけど、あとコケとか地衣類とか、昆虫もいますよね。高等植物はいないんですか?

長沼 ── 昭和基地のそばにイネが生えている。

藤崎 ── イネ? 草が生えてる?

長沼 ── うん。あっちゃいかんのだけど、もう生えてる(笑)。

藤崎 ── それは人間が持ちこんだからでしょう?

長沼 ── いやいや……まあそれを言っちゃいかんので(笑)。

藤崎 ── 言っちゃいかんって(笑)。

長沼 ── 一応、風に乗ってきたのか何かについてきたのかはわからないということで、今「灰色」の解決にしてますけども、生えてます。それから南極半島の先端には、高等植物も生えてます。

藤崎 ── 微生物は、南極大陸全域で見つかるんでしょうか。

長沼 ── そうね。岩が露出しているところは、岩の表面が風化して、まさにそこでは土が形成されてるのね。たとえば、原始地球には、最初、大陸はあったけれども土はなかったの。大陸は少しずつ岩石が風化してボロボロになって、砂っぽいというか、土っぽくなって、そこに生物が出てきた。生物の死骸が混ざれば「土壌」だよね。氷河は、ブルドーザーのように表面のものをガーッと押し流しちゃうけれど、氷河が解けて後退するとツルツルの岩盤が出てくる。その岩盤が少しずつ風化してボロボロになっていくと土になって、そこにペンギンの死体とか糞とかが積もって、ルッカリー(ペンギンのコロニー)のところにコケが生えてきたりして、土壌ができる。つまり、原始の地球での土壌の始まり、土の始まりを南極に見ることができる。そういうところには、たぶん微生物はたくさんいるのよ。でも、そうじゃないツルツルの岩盤のところも、そこに転がっている石を見てみると、石のだいたい1〜3mmぐらい内側に生き物が住んでるの。

藤崎 ── 藻類みたいなの?

長沼 ── そう、藻類が多いね。光合成するやつがね。石も、1mmぐらいだったら光を通しちゃう。

藤崎 ── 石を割ると緑色の線が……。

長沼 ── そうそう。それを「エンドゥリス」というんだね。「エンドゥ」っていうのは「内側」っていう意味ね。「リス」っていうのは「岩」っていう意味。つまり「inside of the rock」ね。「エンドゥリス」、つまり岩石内生物。 大きい岩が風化してちっちゃい石になった時に、多分隙間から生物が入りこんだんだろうね。でも、石の中に入りこむっていうのはすごいよね。

藤崎 ── 当然、氷の中にも含まれている?

長沼 ── 南極では雪が降り積もって押し固まって氷になるんだけれど、上の方のそれほど時間が経ってないものには隙間がまだけっこうあるのね。ふつうの雪はだいたい70%ぐらいが水で、30%が空気なのね。氷になると隙間は減るけれど、残った隙間にはいっぱい生き物がいる。下の方の古い氷になってくると、ぐうっと押し固められて隙間がどんどん減っちゃうんだけれども、なくなることはない。それから、意外なことに、隙間の中に残っている水というのは凍らない。

藤崎 ── 何で?

長沼 ── 水っていうのは凍る時に他の分子を排除するでしょう。だから氷自身は純粋な水ですよね。でも、水が塩分などの色んな不純物をいっぱい持っていて、不純物の濃度が高くなっていくと、それが不凍剤的になって、もう凍らないのよ。氷の中の細い隙間っていうか空間には意外と液体の水があったりしてさ、そこに生き物がいるんだよ。

氷床の下にある湖

藤崎 ── そのさらに氷の下の方までいくと湖があるというのが、最近、話題になってますよね。それが凍っていないのもそういう原理ですか?

長沼 ── いや、それはもともと湖があったところに氷河が乗っかってきて、今は凍りつつあるんだけども、まだ全部が凍るには至ってないという……時間的な問題。

藤崎 ── いつかは凍る?

長沼 ── いつかは凍る。実際その湖の上の方は、凍っちゃっている。

藤崎 ── そういう湖は、いくつぐらいあるんですか?

長沼 ── 今は150以上あるといわれてます*7) 。その、いちばんでかいものに孔を掘ったのね。

藤崎 ── それがヴォストーク湖。

長沼 ── たまたまロシア(当時ソ連)が、非常に平らな氷の土地があったから、そこに基地を建てたの*8)。そこが平らだった理由っていうのが、下に湖があって、その湖の水面を反映していたんだね。

藤崎 ── 湖があるって、どうやってわかったんですかね。

長沼 ── 音響やレーダーを使う。あと氷の表面は下の地形を反映しているから、人工衛星で全体の地形を見て、異常に平らだから下が平らなんだろうという、衛星写真からの判断もある。いくつかの証拠を集めてますな*9)。

藤崎 ── じゃあ最初は全然わからなくて、妙に平らだなと調べてみたら湖があったということですか。理論的に予言されてたわけではなく?

長沼 ── ない。あれはラッキーだった。しかも150個の湖の中でいちばん大きい。

藤崎 ── どのぐらいの大きさですか?

長沼 ── 琵琶湖の20倍ぐらいだね。

藤崎 ── ロシアはそこをずっと掘っていて、今は湖面の100m手前まで掘ったんでしたっけ。

長沼 ── うん、途中でソ連がロシアになって、その後、いろんな資金難に遭って、アメリカとフランスの協力を得ながらずっと掘り続けたけれども、実際には50m手前まで掘り進んで、そこで足踏みしてる*10)。足踏みしてる理由っていうのは、氷を貫通しちゃったら湖を汚染しかねない。その汚染を防ぐ術を我々は知らないからです。

藤崎 ── でも掘っちゃうんですよね?

長沼 ── うん、あと50mだから、とりあえず掘っちゃおうよっていう意見も強くて(笑)。まあ掘削を止めてから南極の夏がすでに5回も過ぎているし、もうそろそろ掘ってもいいじゃないかと……。掘る推進派としては、ある程度、汚染を防ぐことは考えていくと。ベストじゃないにしても、セカンドベスト、サードベストで、まずは掘ってみようということです。

藤崎 ── どうやって防ぐんですかね?

長沼 ── どうやって防ぐんですかねえ……。アメリカとフランスは反対しているんだけども、ロシアがずいぶん乗り気で、具体的なことはまだ明らかにはされてないんだが……もうそろそろ着手するんでしょうね。

藤崎 ── ボーリングしていったところには、凍らないように不凍液というか油みたいなものを入れるんですよね?

長沼 ── 不凍液を注入しながら掘る場合もあるし、熱をかけて、熱と機械的ないわゆるガリガリガリッていう削り方もある。

藤崎 ── 日本もドームふじ基地*11)で掘削をしましたけど、別に湖があるわけじゃなかったんですか?

長沼 ── ドンピシャじゃないけれど、あの近辺に湖らしきものがあるというデータはあるから、全くないということじゃない。

*7) 南極の隠れた湖
*8) ヴォストーク基地の位置
*9) ヴォストーク湖の衛星写真等
http://www.soc.nii.ac.jp/geod-soc/web-text/part3/shibuya/shibuya-1_files/Fig1.jpg
https://www.ldeo.columbia.edu/news/2006/01_25_06.htm
*10) ヴォストーク湖の掘削の現状
*11) 南極の内陸部で昭和基地の南約1,000km にある日本の基地。

南極の微生物が教えてくれそうなこと

藤崎 ── そういう湖に生きてるかもしれない生き物っていうのは、今、生きているやつとはかなりちがうものですか?

長沼 ── ちがう。湖は今から何万年も、あるいは何百万年も前に上に氷が乗っかって、外界から隔離されたんだね。隔離された歴史がとても長いから、ふつうの湖とはちがった進化をたどっている可能性がある。酸素を使い果たしちゃった酸欠の状態でね。

藤崎 ── 熱源もない?

長沼 ── いろんな説があるんだけれど、ないと考えておいたほうが今は無難。

藤崎 ── ということは、どうやって生きているんでしょうか。

長沼 ── どうやって生きてるんでしょうね。

藤崎 ── 光もなければ熱もない、となると化学合成もできない。

長沼 ── だからある意味、光合成由来の有機物を食いつぶす方向しかないと思うよね。

藤崎 ── それがまだ残ってるうちは生きてると。

長沼 ── まあその点、有機物はたんまりあるから、そんな簡単には食いつぶされないと思うんだけれども……。それに、どっちにしても酸欠だからね、あまり速い代謝ではなく、のんびりしたスローな代謝で生きているんだろうし。ところで、湖の上にある氷の中の生き物は、地球史の上で、その時々の南極以外の地球環境を反映している可能性がある。例えば、地球が全体的に気候が激しくなって、嵐が吹きまくるとか大気が非常に撹乱されているような時には、たぶん微生物が遠い所からも運ばれてきた。そうじゃない時には、あまり微生物は飛んでこない。そういった歴史を反映している可能性がある。

藤崎 ── それによって気候の変動がわかるかもしれない。

長沼 ── そうそう。だから微生物から過去を予想できれば面白いと思うね。

藤崎 ── ヴォストーク湖の中にいる生物については、その生物の進化の過程みたいなものがわかるかもしれない。

長沼 ── そうだよね、まさに。隔離されてるもんね。自然の実験室ってとこじゃないかな。

藤崎 ── 100万年でどのぐらい進化するのかな。

長沼 ── ねえ。見てみたい。

藤崎 ── サルから人類が分かれたのは600万年ぐらい前といわれている。

長沼 ── ホモ・サピエンスは、まだ10万年とか20万年でしょう。

藤崎 ── 十数万年ですね。微生物はもっと進化が速いから、とんでもないやつがいる可能性もある。

長沼 ── そうだね、どういう進化をしているか、わかんないね……。ところで、氷床というのは年代がはっきり決まってるんだよ。深さ何メートルの所は何年前っていうふうにわかってるから、ある意味タイムスタンプが押されてるわけよ。そこから微生物を回収して、そのゲノムを見ちゃえばいろいろなことがわかる。今、進化の速度というのは、ある遺伝子の突然変異の割合が1年間にどれくらいかという予想から計算している。それも一つの方法ではあるんだけども、年代の決まったサンプルからゲノムをとって調べようという逆方向の方法もある。

藤崎 ── どのぐらいの時間があれば、どのぐらいの変異が起きるかっていうのが逆算できる。

長沼 ── そうだね。進化の系統樹に時間軸がバシッと入っちゃう。

藤崎 ── それは放射年代測定みたいな?

長沼 ── そうそう、そのとおり。絶対年代だね。

藤崎 ── 絶対年代が出ると、それは面白いね。

長沼 ── それを得るためには、まず氷床コアが大事で、それから永久凍土。ドームふじでは最も古くて72万年前の氷が得られた。永久凍土だと数百万年前のサンプルがある。もっと古いのは琥珀で、だいたい数千万年前……つい最近、ミャンマーで1億年前の琥珀が発見されて、中にハチが埋もれていた。だから数千万年前から1億年前まではいける。そこから先は岩塩。2億5千万年前の岩塩から、微生物を蘇生させたっていう記録がある。

藤崎 ── へえ。

長沼 ── その微生物に近いのが、南極にいるんだよ。

藤崎 ── じゃあ、古いやつが生き残ってるというか、保存されてるんじゃないかと。

長沼 ── うん、面白いんだよ。

藤崎 ── あれ、だけどヴォストーク湖も50m手前まで掘ってるっていうことは、そこの氷は湖の水じゃないんですか。

長沼 ── そう、そこの氷は湖の水。

藤崎 ── ですよね。じゃあ、その氷の中に入っている微生物は、湖の微生物だと。

長沼 ── そうそう、それはもう論文になってるの。

藤崎 ── なんか変なのいました?

長沼 ── いやあ、ふつうのが(笑)*12)。

藤崎 ── じゃあ、表層の方はふつうのやつだったと。

研究所内でペンギンに扮するのは、果たして誰?
 答えは次回

長沼 ── うん。だけど、それは論文になったかどうかわからないけれども、同じように湖の水が凍った氷から採ったサンプルを調べた別の仕事があって、それよると、超好熱菌が遺伝子として採れてる。超好熱菌がもしかしたらいるのかもしれない、ということから、ヴォストーク湖の下の方には、もしかしたら地熱活動、火山活動があるかもしれない。

藤崎 ── 熱水噴出孔があるかもしれない。

長沼 ── うん、そう。その可能性は全くゼロではない。

藤崎 ── そうなると、これはたぶんエピローグで話すことになる地球外生命の謎にもつながっていくわけですが、まあ今日はここで、この話は止めておいて──もう寒いから外へ出ましょう(笑)。

(次回につづく)

*12) ヴォストーク湖の氷から発見された微生物

2006 (C) NATIONAL MUSEUM OF EMERGING SCIENCE AND INNOVATION