放射能の基礎知識

質問: 放射性物質はどうやって測るの?

福島原発に関連して、ヨウ素、セシウム、プルトニウムといろいろな放射性物質が漏れていますが、どのような方法でそれらの量を測っているのですか?(30代男性・神奈川県)
回答:

放射性物質量を測るときには、放射線検出器を使って「放射線」を観測します。放射線は、放射性物質が別の物質に変わる(崩壊する)際に放出されます。では、放射性物質はどのような放射線を出すのでしょうか。アルファ線(ヘリウム原子核)、ベータ線(電子)、ガンマ線(電磁波)の3種類がよく知られています。ヨウ素131やセシウム137の原子核1個につきガンマ線とベータ線を1本ずつ、プルトニウムは原子核1個につきアルファ線を1本、ストロンチウム90は原子核1個につきベータ線を1本、というように、出てくる放射線は放射性物質の種類により変わります。これらの放射線の種類やエネルギーを調べると、どの放射性物質が崩壊したのかがわかるのです。




放射性物質の種類を詳細に特定するためには放射線のエネルギーをみる必要があり、ガンマ線スペクトロメータを使います。茨城県つくば市にある(独)産業技術総合研究所では、福島原発事故が起きたときに、敷地内に降下してきたほこりなどから放出される放射線を、ゲルマニウム半導体ガンマ線スペクトロメータで測定していました。
下の図をみてください。産業技術総合研究所によるガンマ線スペクトロスコピーです。




横軸が放射線のエネルギーで、縦軸がカウントです。例えばセシウム137が崩壊するとき、エネルギーが662キロエレクトロンボルト(keV)のガンマ線を出すことが知られています。このエネルギー値で何カウントあったかを数えることで、セシウム137がどれだけ出ているかがわかります。このようにガンマ線のエネルギー値から放射性物質の種類を割り出す手法を、「ガンマ線分光」といいます。

ところで、ストロンチウム90はベータ線しか出さず、環境中のベータ線との判別が難しいため、検出が難しい放射性物質として知られています。またアルファ線を出すプルトニウムの簡易測定にはサーベイメータとよばれる手軽な検出器を使用しますが、この方法では環境中の放射性物質との判別ができず過大評価してしまうことになります。ですから、正確な濃度解析をする必要がありますが、これは1週間という時間がかかる難しいものになります。半減期が短い(8日)のヨウ素131の影響が小康状態にある現時点では、環境に漏れ出しやすく半減期が長い(30年)のセシウム137の影響が大きくなることが予測されます。セシウム137よりは漏れ出しにくいですが、半減期が28年のストロンチウム90も注目すべき放射性物質といえます。今後の測定結果が気になります。


執筆:科学コミュニケーター 林田美里
2011/05/03 掲載



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