放射能の基礎知識

質問: 放射性物質を食べる生き物?

放射性物質を食べて土壌汚染を解消するバクテリアはいますか?(20代男性・佐賀県)

回答:

放射性物質を食べて土壌をきれいにしてくれる生物がいたらいいですよね。
バクテリアなどの生物を使って環境から汚染物質を取り除く処理を「バイオレメディエーション」といいます。例えば、タンカー事故による流出油が漂着した海岸で、バクテリアに油を分解させた例があります。

放射性物質に関しては現在のところ、土壌汚染の解消とまではいきませんが、あるバクテリアに放射性セシウムを食べさせるという研究があります。このバクテリアを後から回収することで、土壌から放射性セシウムを取り除くことが、将来できるようになるかもしれません。

ではどんなバクテリアかというと、“おっちょこちょいな” バクテリアです。私たち生き物の細胞はカリウムを外から取り込む能力を持っていますが、セシウムとカリウムをあまり上手に区別できないバクテリアがいます。このバクテリアを利用して、放射性セシウムを土壌から除去する研究が進められているのです。

しかし、実用化に向けては2つの壁があります。
1つは放射性セシウムに汚染された土壌の回収です。福島原発付近の土壌は莫大な量になります。また農業を続けるために田畑を掘り返すと表層の放射性セシウムが地中深くまで入り、回収しなければならない土壌が増えてしまいます。

2 つめは、セシウムが水に溶けていないと、バクテリアが食べてくれないことです。土壌中の放射性セシウムをうまく水に溶かせるか、今のところまったくわかっていません。水に溶かせたとしても、田畑にはもともとカリウムが多いので、おっちょこちょいなバクテリアといえどもカリウムを優先的に食べ、セシウムをなかなか食べてくれないかもしれません。

この大きな2つの壁を乗り越えることができれば、生物の力で土壌から放射性物質を取り除く可能性はありそうです。


執筆:科学コミュニケーター 出井正道
協力:国立環境研究所 冨岡典子 先生
2011/04/04 掲載



関連リンク

国立環境研究所「微生物による環境汚染物質の濃縮」