放射能の基礎知識

ウランの核分裂と放射線


原発は、ウランの核分裂によってエネルギーを起こします(下記の【Column】参照)。ここでは、核分裂の詳しいしくみと、なぜ今回ヨウ素とセシウムばかりが検出されるのかを解説します。

【Column】原発とは

ウランの原子核が分裂するしくみ

ウランを核分裂させるには、まず、原子核に中性子を打ち込みます。原子核は、中性子と陽子からなっていますが、中性子をさらに1つ吸収すると原子核が不安定になり、2つの原子核に分裂し、エネルギーを出します。そして核分裂にともなって、第2、第3の中性子が生成されます。これらの中性子が他のウラン原子核に吸収されると、また新たな核分裂が起こり、さらにたくさんの中性子を生成する、という核分裂連鎖反応を起こします。原子炉の中では、このような、いわばピラミッド型のドミノ倒し のような連鎖現象が起き、エネルギーが生成されています。

以下は、大阪市立科学館の核分裂連鎖反応の展示。白い球が中性子を表わしています。


核分裂によって生まれる物質

ウランが分裂するときに生まれてくる原子核のペアは多数あり、その組み合わせは決まっています。例えば、セシウム(Cs-137)がつくられる場合はルビジウム(Rb-95)と出てきますし、ストロンチウム(Sr-90)がつくられる場合はキセノン(Xe-144)と出てきます。それらは安定な原子核ではなく、中性子をいくつか余分に含んだ「同位体」とよばれる原子核です。中性子を多く含む同位体は不安定で、すぐに放射線と中性子を出してより安定な物質になろうとするので、放射性を示します。この安定な物質に変わることを「崩壊」といいます。ヨウ素(I-131)は、ウラン分裂直後にはあまり出てきませんが、中性子を多く含む他の物質が崩壊して大量のヨウ素となるのです。

セシウムとヨウ素が特に多く検出されるわけ

今原発で問題になっているのは、ヨウ素とセシウムによる冷却水と蒸気の汚染です。元素には水溶性のもの、ガス状のもの、そして金属があります(下図参照)。さしあたり、金属の放射性物質は燃料棒から出にくく問題になりません。しかし、水溶性の物質やガス状のものは、燃料棒から簡単に出てしまうことにな ります。結果として、冷却水にはセシウム、ヨウ素、テルルが、空気にはキセノン、クリプトン、ラドンなどの含有が懸念されることになります。特にセシウムやヨウ素などは多く生成され、水素爆発の際に多く漏れ出したと考えられています。


放射性物質の汚染を考えるときのもうひとつ重要な指標が、半減期です。半減期が長い物質ですと、環境に漏れ出して長期間影響を与えます。しかし半減期があまりに短いと、環境に漏れ出す前に他の物質に崩壊してしまいます。核分裂ではさまざまな放射性物質が生成されますが、このほとんどは半減期が1秒以下の短いものです。ヨウ素(I-131)の半減期は8日、セシウム(Cs-137)は30年ですので、環境に影響を与えやすい半減期であるといえます。今後は、また別の種類の放射性物質も出てくる可能性がありますので、モニタリングが必要です。


執筆:科学コミュニケーター 林田美里
2011/04/02 掲載