放射能の基礎知識

放射線、放射性物質、放射能と単位


原発事故の報道で、放射線にかかわる用語がいくつも出てきて混乱している人も多いのではないでしょうか。ここで簡単に説明します。

放射線と放射能

自然界には“不安定な物質”があり、その物質の原子核が崩壊し、別の原子核へと変化することがあります。そのとき原子核から放出されるのが「放射線」です。放射線にはガンマ線などの電磁波や、アルファ線やベータ線といった粒子線などの種類があります。このような放射線を出すものを「放射性物質」とよんでいます。

放射性物質が放射線を出す能力を「放射能」といい、放射能の強さを「ベクレル(Bq)」という単位で表わします。1秒間に放射性物質の原子核1つが崩壊するとき、その物質は1 Bqの放射能を持つといいます。一方「シーベルト(Sv)」は、放射線が人体におよぼす影響を示す単位です。

ニュースでは、ベクレルとシーベルト両方を耳にします。放射性物質で汚染された(放射性物質を多く含んだ状態の)水や食物を摂取することで、そこに含まれる放射性物質からの被ばく(内部被ばく)を考える必要が出てきたためです。

ベクレルとシーベルト

では、この2つの単位の関係、つまり「どれだけの放射能で、どのくらい体に影響をおよぼすのか」を考えてみましょう。体への影響は、体内に取り込まれたさま ざまな放射性物質が、それぞれどの組織にどれくらいの影響を与えるか、全てを足し合わせたものとして考えます。体内に取り込まれたあと、体内にどのように 分布するかは、放射性物質ごとに異なりますが、その分布の仕方は、その物質を口から取り込んだか、皮膚から吸収したか、その取り込み経路によって決まるこ とがわかっています。

そこで、放射性物質の種類と取り込み経路ごとに計算された「実効線量係数(※1)」というパラメータに、食物や飲料に含まれる放射能 の強さ(ベクレル)をかけ合わせることで、体への影響(シーベルト)を算出します。例えばホウレンソウ1キログラムに、2000ベクレル(食品安全委員会 による暫定規制値)の放射能を持つヨウ素131が含まれるとして、それを100グラム食べたときに体内で影響をおよぼす量は、

2000 Bq/kg × 0.1 kg × 2.2×10-8 Sv/Bq(※1) = 4.4 μSv(マイクロシーベルト)

となります。

放射能の強さを示すベクレルと、放射線が身体におよぼす影響を示すシーベルト。この2つの関係を頭に入れながらニュースをみることで、何がどれだけ危険で、逆に何が安全なのかを考えることができるのではないでしょうか。

※1 実効線量係数は、1ベクレルの放射能を持つ放射性物質を体内に取り込んだときに受ける、実効的な放射線量(シーベルト)として国際放射線防護委員会 によって定義された。他の放射性物質の実効線量係数については、「緊急被ばく医療研修のホームページ」などを参照のこと。


執筆:科学コミュニケーター 田端萌子
協力:日本放射線影響学会
2011/3/26 掲載
2011/5/19 改訂