放射能と身体

質問: 放射性物質の半減期は温度によって違う?

水道に確認されているヨウ素の半減期は8日なので、8日間水を置けばヨウ素は半減すると聞いています。衛生上水を凍らせるのがよいそうですが、半減期は凍らせても長くなったりしないのでしょうか?(40代男性・埼玉県)

回答:

半減期とは、放射性物質が半分の量にまで減衰するのにかかる時間のことです。たとえば1000個のヨウ素131の原子核があったとしましょう。このヨウ素は不安定ですので、つぎつぎとエネルギーを出して別の物質に変わり、数は減っていきます。

この数が半分の量、つまり500個にまで減るまでにかかる時間を、半減期といいます。ヨウ素131の半減期は8日なので、水道水中にヨウ素がたくさん含まれていても、8日間待てばたしかに半減するのです。
 

凍らせるとこの半減期が変わってしまわないのかとのご心配、ごもっともです。でもご安心ください。核分裂で作られる放射性物質の半減期は、温度や圧力などの外的要因では変わりません(※1)。半減期は室温と零下250度では変わらないということが示されたのは、1913年。以来科学界では、幾度となく半減期が温度依存するかもしれないという議論がされてきました。しかしこの非依存性は、いまだ誰も覆すことのできない、原子核の中のふるまいを説明する理論の大前提になっています。ともかく、ヨウ素水を凍らせても、沸騰させても、中に含まれるヨウ素の半減期は変わりません。
 
ではヨウ素の入った水を沸騰させればどうなるでしょうか。実は水蒸気が出ていくばかりで、ヨウ素は水のほうに残ります。結果的に、もっとヨウ素濃度の高い水になってしまいます。逆にいえば、水蒸気のほうを集めて水に戻せば、ヨウ素を取り除けるということですね。
 
※1)  周りの電子をつかまえて崩壊する「電子捕獲」という崩壊では、周りの電子の状態によりますので、外的要因に影響されやすいといえます。ヨウ素131などの核分裂生成物質は、この種の崩壊はしません。
 

執筆:科学コミュニケーター 林田美里
2011/04/24 掲載



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