放射能と身体

細胞を殺してしまう強い放射線


私たちの身体はたくさんの細胞からできていて、常に新しい細胞が古い細胞に置き換わっています。日焼けして皮がむけても、あとから新しい皮膚細胞ができてくることを思い出せば、細胞の新陳代謝を実感できるでしょう。細胞が生き、新しい細胞をつくるとき、細胞の核にある遺伝情報が設計図として使われます。

この遺伝情報はDNAの並び方で決まり、DNAは規則正しく対をつくることで二重らせん構造をとっています。何らかの原因でDNAの構造が壊れて、遺伝情報が乱れると、新しい細胞がつくれなくなったり、できたとしても「変な」細胞になってしまうことがあります。今回は、大量の放射線によって新しい細胞がつくれなくなると、身体の中で何が起こるのか、みていきましょう。

大量の放射線は細胞を殺す

私たちの身体は、自然界の放射性物質から年平均2,400マイクロシーベルトの放射線を浴びています。細胞はDNAが少々のダメージを受けても、それを修復するシステムを持っています。ところが、浴びる放射線量が一定値を超え、DNAが大きなダメージを受けると、修復が追いつかなくなります。すると細胞は、壊れたDNAからは遺伝情報をコピーできず、正常なタンパク質をつくることもできず、新しい細胞もつくれないまま死んでしまいます。

被害を最も大きく受けるのは、細胞分裂がさかんな組織です。そこでは幹細胞とよばれる細胞が、活発に新しい細胞をつくり出しています。例えば、骨髄の血液幹 細胞とよばれる細胞がダメージを受けると、赤血球や正常な白血球をつくることができなくなり、重い貧血や白血病を引き起こします。また、生殖幹細胞が損傷を受けると、不妊になったり、お腹の中の胎児の神経幹細胞が死ぬと、精神遅滞が起こったりもします。その他、皮膚紅斑、脱毛、胎児奇形などの症状が、被ばく後遅くとも2~3ヶ月以内に現われてきます。

健康障害を引き起こす放射線量

このような健康障害を引き起こす放射線量は、組織の中の幹細胞の性質や数、細胞が置き換わる速さなどに応じて組織ごとに異なりますが、目安として白血球減少には250,000マイクロシーベルト、脱毛・皮膚紅斑には3,000,000〜6,000,000マイクロシーベルト、胎児奇形には 100,000〜200,000マイクロシーベルト以上の放射線量を一度に浴びると、発生しやすいといわれます。この値を念頭に、【Visual】放射線量マップ を、 冷静な目でみてみましょう。


執筆:科学コミュニケーター 松山桃世
2011/3/25 掲載
2011/4/18 改訂