原発・エネルギーの今後

プルサーマルと高速増殖炉


福島第一原子力発電所の3号機では、「プルサーマル」という1、2、4号機とは異なる手法が使われています。プルサーマルとは、燃料をリサイクルする手法で、核燃料サイクル政策の一環として進められています。現在では、福島第一の3号機の他にも、九州電力玄海3号機や関西電力高浜3号機などでもプルサーマルが実施されています。どんな手法なのか、詳しくみてみましょう。

MOX燃料とプルサーマル

プルサーマルと通常の発電手法の違いは、燃料にあります。プルサーマルで使われている核燃料は「MOX燃料」とよばれ、2 種類以上の物質が混合した燃料、具体的にはウランとプルトニウムを含む燃料をいいます。日本で最も多く利用されている「軽水炉」とよばれるタイプの原子炉では、通常、燃料はウランのみを使っています。プルサーマルとは、「プルトニウムを含むMOX燃料」を「軽水炉(サーマルリアクター)」で使うことを意味します。

MOX燃料は、限られた資源であるウランをリサイクルする目的で、国内でも実用化のための研究や試験が60年代からなされてきました。
ウラン燃料が発電する際、ウラン(ウラン238)に中性子が吸収されるとプルトニウム(プルトニウム239)が生成します。これにより、使用後のウラン燃料棒には、プルトニウムが約1パーセントの割合で含まれます。このプルトニウムを、再処理場で回収して再利用することで、新たな発電エネルギーを得ることができるのです。プルサーマルの導入で、ウラン資源の1~2割を節約できるといわれています(*1参照)。

プルトニウムを増殖する「高速増殖炉」

しかしMOX燃料の本来の目的は、プルサーマルではありません。核燃料サイクル政策では、MOX燃料を、軽水炉ではなく、「高速増殖炉」とよばれる原子炉と組み合わせて使うことを目指しています。「高速増殖炉」とは、使うほど、燃料として再生可能なプルトニウムが増殖する仕組みの原子炉です。MOX燃料中のウラン238がつくり出すプルトニウムを、「高速増殖炉」で増殖させ、再処理場で回収して再利用しようというのです。

これにより、ウランの利用効率を約30倍にまで高めることができるといわれています(*2参照)。日本はウラン燃料の供給を100パーセント輸入に頼っていることから、エネルギーの海外依存を減らす意味でも、核燃料のリサイクルを積極的に進めてきました。

再処理工場やMOX燃料加工施設としては、青森県六ヶ所村にある試運転中の施設がよく知られています。また、高速増殖炉としては福井県敦賀市のもんじゅが知られています。

不安定なプルトニウム燃料

高速増殖炉は、現在のところ技術的な見通しが立っていません。ですから、当分は軽水炉でMOX燃料を使用するプルサーマルのみの稼働になります。現時点では、2015年のMOX燃料加工工場の操業開始に向けて、合計16~18基の原子炉でのプルサーマル導入を目標にしています。では、このプルサーマルは安全なのでしょうか。どのような技術的問題が生じうるのか、みてみましょう。

まず、通常の軽水炉は、プルトニウムを利用するようには設計されていません。このため、ウラン燃料とMOX燃料の違いを把握し、安全対策がきちんとなされているかをみる必要があります。
プルトニウムはウランに比べ、中性子をよく吸収し、核分裂を起こしやすいなどの性質があります。つまり、ウラン燃料よりも制御が難しく、また、ひとたび事故が起これば、よりたくさんのプルトニウムが環境中に漏れ出す可能性があります。使用済みMOX燃料棒の発熱時間も、超ウランとよばれる寿命の長い放射性物質を含むため、通常の使用済み燃料棒より長くなります。つまり、いったん事故が起こればウラン燃料より暴走しやすい燃料であるといえます。

また、再処理工程では、多くの放射性物質を含む燃料棒の加工行程が複雑化しますので、事故に対するより厳重な対策が要求されます。高速増殖炉が実用化されるまで、使用済みMOX燃料棒を処分する必要がありますが、発熱が大きいため、処分に必要な面積が大きくなるという懸念もあります(*3参照)。

核燃料サイクルの経済性

MOX 燃料は、加工・処理施設や、処理そのものにもコストがかかり、経済的ではありません。たとえば処理コストは、使用済みウラン燃料を全量再処理した場合、そ のまま全処分する場合と比べ、5~8割高くなります(*3参照)。新たなウラン燃料の購入費を差し引いたとしても、発電コストは1~2割高くなります。か といって、すでに開発を進めてきたこの使用済み核燃料全量再処理の政策を変更し、全量処分にするとしたら、投入された費用と比較し、全量処分の全量再処理 に対するコスト優位性は失われます。

ウラン資源は、すでに発見されているもので85年間、未発見分を含めると270年間もつといわれています(*3参照)。高速増殖炉によってすでに発見され ているウランの寿命を数世紀以上(*4参照)にまで延ばすことが本来の目的ですが、プルサーマルによっても2割ほど寿命を延ばすことができると考えられて います。しかしリスクとコストの高い再処理を、果たして今、実施するべきでしょうか。あるいは新エネルギーへの変換を模索するべきでしょうか。今、選択し ようとしているエネルギー政策が、日本の将来におけるエネルギーの鍵を握っているといえます。



執筆:科学コミュニケーター 林田美里
2011/05/31 掲載


関連リンク

*1 資源エネルギー庁:「プルサーマルの導入」
*2 ウラン2003
*3 国立国会図書館経済産業課「核燃料サイクルをめぐる議論」
*4 原子力機構「もんじゅ開発の意義」