原発・エネルギーの今後

質問: フランスはなぜ原子力の比率が高い?

フランスは80%が原子力発電と知って驚きました。なぜ他の先進国やヨーロッパの国々とくらべて、フランスはこんなに原子力の比率が高いのでしょうか?(20代女性・神奈川県

回答:

フランスは世界一原子力発電の割合が高い国で、全発電量の77%が原子力発電です。アメリカは20%、ドイツや日本は24%、フランスに次いで多い韓国でも34%ですから、かなり高い比率です。

契機となったのは、1973年のオイルショックです。エネルギー資源に恵まれない先進国は、政情が不安定な中東の国々にエネルギー供給を頼らざるを得ない状況になりました。他国に頼ることを嫌う独立精神の高いフランス人(*1参照)は、エネルギー自給に重点()を置き、電気エネルギーの大輸入国から大輸出国に変遷を遂げました。しかし、全ての先進国がこのような変化を経験したわけでは、当然ありません。同じヨーロッパでも、例えばイタリアは、1990年までに全ての原発を停止し、エネルギーの大部分を輸入に頼っています。では、なぜフランスだけ極端に原子力エネルギー策に傾倒したのでしょうか。
※フランスはウランの供給源を政情の安定したカナダやオーストラリアに頼っていますが、ウランは一度輸入すれば数年間使えるため、原子力を準国産エネルギーとして位置づけています。

もともとフランスは数々の優秀な核科学者に恵まれてきました。19世紀に初めて放射線を発見したアンリ・ベクレルをはじめ、放射性元素や放射線の研究で知られているピエール・キュリーやマリー・キュリーを輩出した国でもあります。戦前からフランスの原子力研究は、原子炉設計のみならず、半導体製造、医療応用、地震学などの基礎研究から応用研究まで多岐にわたり、早期から原子力エネルギーに貢献していたといえます。

このような背景にくわえ、フランスは、政府によるリスクコミュニケーションが成功した好例にも挙げられます(*1参照)。フランスの国民は、放射性物質や事故などの原発にともなうリスクを理解した上で、経済効果などの利点や安全対策をふまえ、原子力エネルギーに賛成しています。原子力を使うことでどのような危険があるか、それに対してどのような安全策がとられているのか、またエネルギーセキュリティや環境問題のためにどのような政策が必要か、政府とコミュニティの間で密なコミュニケーションがとられてきました。原発について誇りに思う国民も多く、長年賛成派が約3分の2を占めていました。しかし福島原発事故以降、フランス国民の多数派が反対側という世論調査結果が複数出ています(*2参照)。今後エネルギー政策にも変化があるかもしれません。

執筆: 科学コミュニケーター 林田美里
2011/05/18 掲載




関連リンク

世界原子力協会「フランスにおける原子力発電」(英語)
*1 PBS「なぜフランス人は原子力エネルギーを好むか」(英語)
*2 エコノミックス「フランス、原子力エネルギー世論の変遷」(英語)
     ロイター「フランス人大多数が原子力エネルギーに反対」(英語)