電気・電力の基礎知識

質問: 電力は貯められないの?

現在、計画停電や節電に協力しています。東京電力の電力使用率がたとえば86パーセントのとき、残りの14パーセントを蓄積して、後で使うことはできないんですか?(30代男性・神奈川県)

回答:

残念ながら電気は貯めることが難しいエネルギーです。電力会社は刻一刻と変化する需要に対して供給を合わせるように発電しています。つまり電力会社が発表している数値は、常に供給能力の上限値なのです。

一方、電気というエネルギーは別のかたちでなら貯めることができます。「揚水式発電」という言葉を耳にしたことはありますか? 水力発電のひとつで、発電所をはさんで上部と下部の調整池からなります。電気の需要が少ない夜間に、余っている電力を使って下の調整池から水をくみ上げておき、需要の多い昼間に上の調整池から発電所に水を流して発電します。つまり、電気は貯めることができないので、水の位置エネルギーのかたちで貯めているわけです(詳細は下記の関連リンク参照)。

現状の揚水式発電の供給量は200万キロワット(一般家庭66万世帯)程度と、多くはありません。しかし稼働と停止が短い時間でできるため、需要の変化に対して素早い対応が可能です。いったん運転を開始すると発電量の調整が難しい原子力発電や火力発電所が、安定的な電力供給を行なうのに加え、揚水式発電は需要のピークで需給がひっぱくした場合に活躍しています。

また、電気を貯める技術には「NAS電池」もあります。電池とは電気を化学エネルギーとして蓄えたもので、なかでも充電することによりくり返し使用できるものを二次電池、または蓄電池といいます。 NAS電池とはナトリウム(Na)・硫黄(S)電池のことで、一般的な電池よりもエネルギーの大きさ、寿命の点で優れています。ただし大型のため家庭では使うことが難しく、ビルや工場向けに開発され、50~2000キロワット級のシステムが運転中です。


執筆:科学コミュニケーター 久保暢宏
2011/04/02 掲載



関連リンク

電気事業連合会 電気の情報広場 揚水式水力発電
北陸電力 NAS電池等電力貯蔵システム