環境負荷を低減する展示制作の実践とヒント 「環境に配慮した展示設計ガイド」を公開
今後の常設展示制作の指針として館内で活用
日本科学未来館
日本科学未来館(略称:未来館 館長:浅川智恵子)は、ミュージアムにおけるサステナビリティ活動の一環として「環境に配慮した展示設計ガイド」を作成し、本日9月9日(火)に公式WEBサイトで公開しました。2021年から取り組んできた、展示制作における環境負荷低減のための実践から得られた知見をまとめたものです。今後の未来館における常設展示は、本ガイドの方針にもとづいて制作していきます。
未来館では、2021年に掲げたMiraikanビジョン2030「あなたとともに『未来』をつくるプラットフォーム」のもと、持続可能な社会の発展に貢献するため、自らの活動における環境負荷低減の取り組みを推進しています。また、その知見を広く公開することで、他のミュージアムや公共施設などでの環境配慮の取り組みの一助としていただくことを目指しています。
本ガイドは、展示の制作・施工から一般への公開・運用、公開終了後の廃棄・リサイクルまでの“展示のライフサイクル”を包括的に捉え、各段階の環境負荷低減に向けた取り組みを13項目のアクションとしてまとめました。未来館の展示制作に関わるスタッフや外部関係者が参照することを念頭におき、実行可能で優先度の高いアクションと実践のヒント、実践例で構成することで、担当者個人の知見に依存することなく、体系的で継続的な取り組みとすることを目指しています。新たに常設展示を制作する際は環境に配慮した資材や木材を使用することなど、具体的な達成事項も定めました。
館長の浅川は、「持続可能な未来に向けて、未来館だけでできることは小さいかもしれません。しかし、環境問題に対して実践的なアイデアや行動を示すことにより、来館者、ミュージアム関係者、そして広く社会の皆さまの意識と行動の変化を少しでも後押しできればと考えています」とコメントしています。
公開概要
- タイトル
- 環境に配慮した展示設計ガイド ― 未来につなぐアクションと実践のヒント
- 発行
- 国立研究開発法人科学技術振興機構 日本科学未来館
「環境に配慮した展示設計ガイド ― 未来につなぐアクションと実践のヒント」
未来館では、地球環境をテーマとした常設展示「プラネタリー・クライシス」(2023年公開)の制作で得た知見や課題を土台として、展示制作における環境負荷低減の検討や実践を進めてきました。本ガイドは、未来館の展示制作に関わるスタッフや外部関係者が参照することを念頭に、それらの取り組みから得られた知見を今後の展示制作に向けたガイドとして体系的にまとめたものです。
まず「基本情報編」として、取り組みの目的を関係者間で明確に共有するために、環境配慮の考え方や方針を示しています。次に「実践編」として、展示制作過程の取り組みを記述。最後に「まとめ編」として、展示完成後の取り組みを整理しました。全体を通して、環境負荷低減に向けた取り組みを13項目のアクション(目次の①~⑬の項目)として策定しています。制作する展示ごとに、ねらいや演出、デザイン、安全性や予算などの要素と調和を図りながら、アクションを実践します。
特徴
- 展示の制作・施工から一般への公開・運用、公開終了後の廃棄・リサイクルまでの“展示のライフサイクル”を包括的に捉え、特に環境配慮の効果を左右する「設計段階」での取り組みを重点的にまとめました。
- 未来館の常設展示開発プロセスや材料の選定の傾向、環境への配慮を実践する企業への取材、関連機関が発行する文献、海外の先行事例などの調査を踏まえ、実行可能で、優先度の高いアクションを設定することで、担当者個人の知見に依存することなく、組織として継続的な取り組みを可能にします。
目次
1.基本情報編 地球環境と展示の今
・これからの展示づくりに求められる3つの視点
・地球環境に配慮した取り組みの方針
・環境問題と展示のライフサイクル
・制作の工程と環境への影響
・地球環境に配慮した展示づくりの進め方
2.実践編 未来につなぐ展示の設計
<早めにチェック [ここから考え始める]>
①減らせるかどうか考える
②あるものを使えるか考える
<材料[選び方を工夫する]>
③未利用材料、リサイクル材料を使う
④自然由来の材料を選ぶ
⑤「いつも」の材料を見直す
⑥完成後のごみと電力も少なく
<プロセス[作り方や選び方を工夫する]>
⑦再利用できるように作る
⑧材料を有効に使う
⑨どこで、どう作られたかを確かめる
⑩材料は近くから入手する
<手放す[工夫を検討しても捨てるとき]>
⑪廃棄・リサイクルはプロの力をかりる
3.まとめ編 展示づくりを終える前に
⑫取り組みを振り返る
⑬工夫を共有する
・望ましいライフサイクルと取り組み
※①~⑬は環境負荷低減に向けた取り組みとしてまとめた13のアクション
「2.実践編」で示した展示制作における取り組み事例
造作壁の再利用 (②あるものを使えるか考える)
公開が終了した展示の壁(約148㎡)の一部を取り壊さずに再利用し、新たな材料の利用を抑えています。
再生コルクを活用 (③未利用材料、リサイクル材料を使う)
コルクは木を伐採することなく樹皮を利用できる材料ですが、さらに再利用されたコルクを活用。東京都内の飲食店などから回収したワインのコルク栓を加工し、再生コルク材として床材や階段什器、体験装置の一部に使用しています。
リサイクル材料を活用 (⑤「いつも」の材料を見直す)
壁にリサイクル材料を50%以上含むケイカル板(※)を使用。解説パネルの下地にはエコマーク認証を取得したアルミ複合板や、リサイクル材料を50%以上含むアクリル板を利用しています。
(※)けい酸カルシウム板の略称。石膏ボードの次に、壁の材料として多く使われる
モジュール型什器のデザイン (⑦再利用できるように作る)
鳥取県産のCLT材を使用した、形状の異なる主に2種類のモジュール型の木製什器(じゅうき)を組み合わせて展示中央の什器を構成しています。什器自体も、ほぞ組やビスにより組み立ててあり、分解が可能です。
什器の端材をデザインに活かす (⑧材料を有効に使う)
デジタルファブリケーションによって、モジュール型の木製什器を制作する過程で発生する端材を有効活用しました。端材を重ねて別の展示什器の脚として使うほか、各ゾーンの入口やコラムのパネル材料としても活用しています。
加工・輸送ルートを最適化する (⑩材料は近くから入手する)
モジュール型の木製什器は、木材の産地である鳥取県と未来館を結ぶほぼ直線上にある滋賀県や大阪府などに加工拠点を配置し、遠回りのないルートで輸送を行いました。
今後の常設展示制作に向けた具体的な取り組み
2025年以降、未来館で制作する常設展示では、環境に配慮した資材や木材を使用すること(※)や、トレーサビリティの確保に向けて出荷証明書の提出を求めるといった点を、具体的な達成事項として調達仕様書などに盛り込んでいきます。
(※)原則として、石膏ボードはリサイクル原材料の配合が50%以上、展示の内部構造や下地に用いる材木は環境ラベル製品(FSC、PEFC、 SGEC認証木材)か国産木材とする、など。
未来館のサステナビリティ推進活動について
展示やイベントなど地球環境問題に関する科学コミュニケーション活動とともに、自らの事業活動における環境負荷軽減の取り組みを進めています。特に、エネルギー、マテリアル(原材料)、食、水の四つの分野に着目し、エネルギー分野としては2022年4月から再生可能エネルギー100%の電力調達を継続しています。
- 一般からのお問い合わせ先
-
日本科学未来館
Tel:03-3570-9151(代表)
インターネットからのお問い合わせ
- メディアからのお問い合わせ
-
日本科学未来館
Tel:03-3570-9192(広報)
インターネットからのお問い合わせ