障害者の社会参加を支えるアクセシビリティ技術の研究コンソーシアムを発足

未来館が導入したAIスーツケースを前に館長の浅川智恵子(中央右)と副館長兼研究推進室長の高木啓伸(中央左)=館内の研究室

日本科学未来館(略称:未来館)は、館長浅川智恵子が提唱する、障害や年齢、国籍といった違いに左右されることのないインクルーシブな未来社会の実現を目指して、障害者の社会参加を支えるアクセシビリティ技術の研究開発を外部の研究機関と共同で進めるコンソーシアム「日本科学未来館アクセシビリティラボ」を発足させ、初期メンバーに日本アイ・ビー・エム株式会社(代表取締役社長:山口明夫、以下「日本IBM」)をお迎えしました。館内に設置した研究室を中心に、視覚障害者のためのナビゲーションロボット「AI スーツケース」を今年の夏頃より館内での体験会に活用していくなど本格的な活動をスタートさせます。来館者の皆さまにはさまざまな展示だけでなく、実際の研究開発の最前線にも触れていただき、未来を体験できるミュージアムを目指します。

浅川は日本IBMの研究者として音声ウェブブラウザ「IBM ホームページリーダー」の開発など視覚障害者の課題解決に取り組んできました。昨年4月の未来館館長就任にあたり、「あなたとともに『未来』をつくるプラットフォーム」というMiraikanビジョン2030 を掲げ、未来館をミュージアムの枠を超えて、アクセシビリティ技術をはじめ、さまざまな先端科学技術の実証の場とすることを目指しています。

そうした方針に賛同していただける外部の研究機関を今年2月から募ったところ、テクノロジーをより良い未来づくりに活かす「Good Tech」を展開する日本IBMに応募いただき、未来館を運営する国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)と共同研究契約を結びました。今後、さらに先進的なAIやロボティクスの技術を持った企業などの参加を募り、視覚障害者が街を自由に移動し、街にあふれる情報を認識し、街で自立して生活するための技術の研究開発を共同で推進していきます。

未来館では展示フロアとは別に、外部の研究プロジェクトが入居する研究エリアを併設するユニークな取り組みを行ってきましたが、未来館が直接、研究室を設けるのは初めてです。副館長兼研究推進室長の高木啓伸や複数名の研究員・エンジニアが所属します。研究室のほかに、3Dプリンターなどを設置したワークスペースを備えているほか、展示フロアも実証実験の場として活用していきます。

未来館にアクセシビリティ技術の研究推進体制が構築されたことについて、浅川は「日本科学未来館を実験場に、障害者の生活の質を向上する新たな支援技術の研究開発と社会実装の橋渡しとなるように努力していきます。そのために企業などの研究機関をはじめ、さらに多くの皆さまにコンソーシアムに参加いただき、社会実装に向けて協力していただくことを期待しています」とコメントしています。