新しい常設展示「計算機と自然、計算機の自然」公開[2019年11月14日(木)]

 メディアアーティストで、筑波大学准教授の落合陽一氏が総合監修を務める新しい常設展示のタイトルを「計算機と自然、計算機の自然」とし、2019年11月14日(木)から常設展「未来をつくる」ゾーンで一般公開します。コンピューター(計算機)やそこで動作する人工知能が高度に発達した未来において、私たちの自然観、世界観がどう変わるのかを問いかける展示となります。


新しい常設展示のイメージ(画像提供 noiz)


 狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く新たな社会として第5期科学技術基本計画で提唱された「Society 5.0」では、現実空間(リアル)と仮想空間(バーチャル)が高度に融合された未来社会の到来が予言されています。コンピューターなどのデジタル機器やソフトウェアの手法が発達すると、それらがつくりだす世界の解像度は私たちの知覚の限界を超え、これまで私たちが当たり前のように区別してきた自然と人工物の違いや区分けは認識されにくくなり、過去のものになるかもしれません。

 今回の新しい常設展示では、そうした自然と人工物との境界が溶け合い、デジタルとアナログが互いにその特性を高め合う状態こそが、未来の私たちにとっての「新しい自然」となるという世界観を示します。展示の前半では、私たちの日常の常識を揺るがすような数多くの展示物によって、新しい世界観を体感できます。後半では、技術的、歴史的な背景や未来の社会や文化への影響について体験型の展示や映像コンテンツで理解を深めることができます。
 計算機と自然、お互いが調和し共存するという日本的な自然観が生み出す新しい未来像を提示することも試みています。本展示では、書道や陶芸、いけばななど日本の伝統文化に根差した展示物が数多く登場します。

展示構成

 常設展示「計算機と自然、計算機の自然」は大きく2つのエリアで構成されています。前半部分にあたる「世界観エリア」では、リアルとバーチャルが融合した世界観を体験できたり、直観的に理解できたりする展示作品が並びます。後半の「理解エリア」では、こうした世界観を支える技術やその進化を、来館者自ら体験できる展示物や映像コンテンツで学べるようになっています。なおエリアや展示コーナーの名称および内容は変更される可能性があります。

世界観エリア

 本展示の世界観への導入となるこのエリアにおいては、日常生活で目にするものとコンピューターテクノロジーが融合した、私たちの常識や認識を揺るがす数々の展示を光の反射する林のような空間の中に配置します。

鏡の箱のコレクション

 本展示の世界観や技術背景を理解するためのウォーミングアップとして、20の展示(コレクション)が並びます。一見しただけではもはや本物と区別がつかない高精細映像の熱帯魚が泳いでいたり、風鈴の音という日常風景が実はさまざまなテクノロジーによって演出されていたりと来館者の認識を揺さぶります。さらに、サポートベクターマシンや決定木といった機械学習の技術を支える手法を観察や体験を通して伝える展示も配置しました。これらのコレクションを通して、これまでの日常や知覚にとらわれない「新しい自然」を受け入れる準備ができます。

計算機と自然、計算機の自然


*上記はイメージです、落合陽一氏の作品
「Perspective of Digital Nature I」より

 展示エリアの中心には、全体のシンボルとなる展示が2つ並びます。
 1つは、自然を象徴する樹木や草花をつかったいけばなに、美しいモルフォ蝶たちがたたずみます。しかし、その蝶たちは本物(標本)と、最新の構造色印刷技術で再現した人工物が混在しています。さらに人工物を象徴するロボットアームが、落ち葉を拾う様子を通じて、「計算機と自然」が融合した世界を表現します。
 もう1つは、大量のデータから学習をし、新しい画像を生み出すことができる機械学習の手法によって作られたさまざまな画像がモニターに映し出されます。これらは一見すると誰かが書いた手書きの文字や、どこかで撮影された写真のように見えますが、いずれもコンピューターが生成したイメージ、「計算機の自然」となっています。

理解エリア

 本展示の世界観を支える技術の発展や予想される未来像への理解を深めるための展示を用意します。

解像度の心得

 アナログとデジタルにおける、情報の扱い方の違いを体験できる展示です。ものごとを数値や数式で表現するようになったことで、時間と空間の解像度という新しい自然を形づくる情報がいかに処理されているのかを直感的に学ぶことができます。

人類ステップアップ絵巻

 人類がどのように情報処理を進化させてきたのか、歴史絵巻のようなアニメーションで振り返ります。「計算」「通信」「画像」「音楽」「移動」という5つのテーマで、過去から未来のポストAI時代まで時代を区切りながら人類と情報の進化をたどります。多くの情報を集め体系化することによって技術が進化する「経験の時代」と、原理を見つけて解析的な方法で技術が進化する「法則の時代」が繰り返されていることに気づくはずです。

先人たちの計算浮世話

 展示の最後では、「人類ステップアップ絵巻」で紹介した考え方が、私たちの社会や文化にあたえる影響について具体例をみていきます。平安時代の歌人、紀貫之や戦国時代の武将、武田信玄、現代の歌声合成ソフトにしてバーチャルシンガー、初音ミクなど時代を切り開いてきた先人たちが、技術の進化で繰り返されてきたイノベーションについてモニターを通じて語りかけます。これからの技術との向き合い方を考えるヒントが隠されているかもしれません。

日本科学未来館 展示企画開発課長 内田まほろコメント

 「タイトルにコンピューターではなく、あえて計算機という言葉を使ったのは、未来を考える上で人類が『計算』という方法論を獲得したという原点に立ちたいと思ったからです。計算機の進化によって『現実世界』と、私たちが『自然と感じる世界』との境界はなくなりつつあります。やがて、『計算機の自然』が日常の自然にもなりえるのです。
 本展では、日本的な自然観を踏まえた未来像を提示することを試みています。日本には、人と機械を区別せずに、同じ世界の存在として受け入れる風土があります。技術と自然が融合し一体となる世界観は、日本だからこそ積極的に提示できるのではないか。そんな思いもあり、多くの作家の方たちにご協力いただき、日本の伝統芸術も多く展示に登場します。展示を通じて既成概念を一つでも取り除いて、『未来の自然』を想像していただきたいと思います」

開発・制作にご協力いただいた方々

総合監修

落合陽一氏(メディアアーティスト、筑波大学 図書館情報メディア系 准教授)

監修協力

伊藤亜紗氏(東京工業大学 リベラルアーツ研究教育院 准教授)▽加藤真平氏(東京大学 大学院情報理工学系研究科 准教授、株式会社ティアフォー 創業者/CTO)▽後藤真孝氏(産業技術総合研究所 情報技術研究部門 首席研究員)▽杉山将氏(理化学研究所 革新知能統合研究センター センター長、東京大学 大学院新領域創成科学研究科 教授)▽登大遊氏(筑波大学 国際産学連携本部 准教授、情報処理推進機構 産業サイバーセキュリティセンター サイバー技術研究室長)

空間デザイン

noiz

制作

株式会社TASKO▽株式会社つむら工芸▽株式会社ホーダウン

協力アーティスト

一乗ひかる氏(イラストレーター)▽紫舟氏(書家)▽樂焼 樂家十六代 樂吉左衞門氏▽辻雄貴氏(華道家)▽ハギーK氏(イラストレーター)

協力研究者

飯塚里志氏(筑波大学 システム情報系/人工知能科学センター 助教)▽今井猛氏(九州大学 大学院医学研究院 教授)▽梅谷信行氏(東京大学 大学院情報理工学系研究科 特任講師)▽大野ロベルト氏(日本社会事業大学)▽篠田裕之氏(東京大学 大学院新領域創成科学研究科 教授)▽竹内郁雄氏(東京大学 名誉教授)▽三谷純氏(筑波大学 大学院システム情報系 教授)▽村山司氏(東海大学 海洋学部 教授)▽森崎汰雄氏(東京大学 大学院新領域創成科学研究科 篠田・牧野研究室)▽吉田博則氏(東京大学 大学院情報理工学系研究科 五十嵐研究室、株式会社Preferred Networks リサーチャー)▽ラルスン・マリア氏(東京大学 大学院情報理工学系研究科 五十嵐研究室)

協力企業・団体

AIQ株式会社▽株式会社辻雄貴空間研究所▽株式会社デジタルアルティザン▽株式会社デンソー▽株式会社デンソーウェーブ▽株式会社村田製作所▽関西大学博物館▽クリプトン・フューチャー・メディア株式会社▽甲府市武田氏館跡歴史館▽紫舟アトリエ▽静岡大学高柳記念未来技術創造館▽凸版印刷株式会社▽ニューリー株式会社▽ピクシーダストテクノロジーズ株式会社▽ミラクルマイル株式会社

(情報公開日 2019年9月20日)

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