「薬剤耐性菌」は私たちの知らぬ間にしのび寄っている怖い"ばい菌"です。世界中で増加していて、昨年末には、日本でも年間8000人以上の方が、この薬物耐性菌により死亡しているとの推計が発表され、大きな話題になりました。

私たちは感染症にかかると抗菌薬(抗生物質)を飲みます。この抗菌薬が効かない菌を薬剤耐性菌といいます。これまでは薬で簡単に治せていた化膿や中耳炎などさまざまな炎症が薬で止められない、抵抗力の弱い乳幼児や高齢者などでは感染症が重症化して死亡するかもしれない、そんな事態が当たり前になってしまうかもしれません。
実はこの薬剤耐性菌が広がっている背景には、私たちの薬の飲み方が深く関わっています。薬剤耐性菌がどうして広がっていくのか? 未来にわたって治療に使える抗菌薬を残すために、医療者だけではなく、患者になるかもしれない私たちにできる対策はどんなことなのか? 専門家をお招きしてのトークを通じて考えていきます。

また、あわせて行うワークショップ、パネル展示などからも、私たちの身の回りの菌や薬剤耐性菌について、楽しく知ることができます。

トークセッション 「しのびよる...薬が効かない"ばい菌"たち~私たちが対策できないのはなぜ?」

薬剤耐性菌に詳しい国立国際医療研究センター病院の具芳明先生をお招きし、薬剤耐性菌が広がるしくみや患者・医療者の取るべき対策、現場での実際の取り組みについてお話しいただきます。

また薬剤耐性菌が広がっている背景には、「その存在があまり知られていない」だけではなく、「知っていても対策を実行できていない」ことが課題としてあげられます。
私たちに求められている対策は、手洗いの徹底などの感染予防を行ったり、医師の指示通りに薬を飲んだりするなど一つひとつは決して難しいものではありません。しかし、これらをずっと続けることは意外と難しい、と感じる方は多いのではないでしょうか。
また医療者の側も、厚生労働省の手引きなどで抗菌薬の不適正な処方を控えるように求められているにもかかわらず、実際にはさまざまな理由で過剰な抗菌薬が処方されているという調査結果もあります。なぜ必ずしも手引き通りの処方にならないのでしょうか?

トークセッションではこの問題を、行動経済学の視点から大阪大学大学院の平井啓先生に語っていただきます。良いとわかっている行動なのにできないのはなぜなのか。人間の意思決定における傾向から、薬剤耐性菌対策を後押しする方法についても議論していきます。

時間 14:30~15:30
定員 50名(立ち見可)
※字幕による情報保障を行います。

ゲストスピーカー

具芳明氏

国立国際医療研究センター病院 AMR臨床リファレンスセンター

感染症を専門としている内科医。佐久総合病院、静岡がんセンター、東北大学病院に勤務した後、2017年4月から現職。医療従事者や市民を対象とした薬剤耐性(AMR)対策の教育啓発や資材作成を担当している。

平井啓氏

大阪大学大学院人間科学研究科 准教授

がん医療をはじめ、様々な医療現場における意思決定について研究。専門は、健康・医療心理学、行動医学、サイコオンコロジー、行動経済学。大阪大学人間科学部助手、同大型教育研究プロジェクト支援室・未来戦略機構・経営企画オフィス准教授を経て、2018年より現職。博士(人間科学)。2010年より市立岸和田市民病院公認心理師。

企画・ファシリテーション

高橋明子

日本科学未来館 科学コミュニケーター

ワークショップ「あなたの手にもいる?~微生物の量を測ってみよう!」

薬剤耐性菌を生み出さないために、私たちが最初にできることは? それは感染症になるべくかからないことなのです。そもそも私たちが感染症にかかる回数を減らすことができれば、処方される抗菌薬の量が減り、薬剤耐性菌が生まれる機会を減らすことにつながります。感染症の予防は、実は重要な薬剤耐性対策のひとつなのです。
感染症とたたかうには菌のことをよく知る必要があります。菌は一体どんな場所にどれくらいいるのでしょうか? ワークショップでは実際に参加者の手のひらに付着している菌の量をATPふき取り検査*により測定し、感染症の予防の仕方についてお話しします。

時間 (1)12:30~12:50
   (2)13:30~13:50 (全2回、内容は同じです)
※各回先着10名。1グループにつき1名の体験とさせていただきます。

*ATPふき取り検査: 生物に由来するATPという生体分子の量を計測します。微生物量の目安として、食品衛生などの場で使われている方法です。

動画・パネル展示、ブックコーナー

手洗いの効果を説明するパネル展示や、病原体の広がりや薬剤耐性菌が生まれる仕組みを解説する動画の上映、関連書籍などを自由にご覧いただけます。

開催日時
2020年2月8日(土) 12:30~17:00
開催場所
日本科学未来館5階 コ・スタジオ
参加費
入館料のみ
参加方法
直接会場へお越しください。
主催
日本科学未来館、国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンター
問い合わせ先
日本科学未来館
Tel: 03-3570-9151(代表)