輩出後の活動状況(3)

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研究者と来館者に直に触れ、新しい価値観を構築
地域の人的・知的資源を体系化し情報発信していきたい

代島 慶一さん(静岡科学館る・く・る)=2011年3月まで在籍

科学コミュニケーターを目指した背景

「自然を守るには媒介となる人の力が必要」

 高校・大学と天文部に所属し、学園祭では教室の天井や壁に星座を映し、解説を行っていました。そして星とともにのめり込んだのは、生態系保全について。大学院では天然記念物・ノグチゲラの生態を研究し、保全方法を考察しました。研究を深めていくと、必ず「市民の協力が必要」という結論にいたります。そこで、環境科学などについても学びつつ、自然公園でガイドを行う解説員として活動を続けながら、自然保全に対する参加者の意識が変わっていく様子を肌で感じました。そして大学院修了後、いったんは民間企業に就職したものの、何気なく目にした日本科学未来館のホームページで科学コミュニケーターの募集要項を発見。「もう一度、星や自然の魅力を伝えながら、人々の行動に影響を及ぼす方法を実地で学びたい」と、学生時代に抱いた気持ちが再び沸き起こり、すぐにエントリーをしました。

日本科学未来館で取り組んだこと

「コミュニケーションを見直し専門外にもアンテナ張り情報収集」

 日本科学未来館でキャリアを積んだのは約5 年間。前職で情報技術に携わっていたことから、最初はロボットと情報技術の展示解説を担当することになりました。当時、ロボットやインターネットなどは人工的で、自然と対極的にあるものと先入観を抱いていました。しかし、研究者と直に話し熱意に触れていくなかで、「ロボットも自然の一部である人が生みだしたもの」と価値観が変わっていきました。
 また、来館者との双方向な対話をとおして、「コミュニケーション」という定義をとらえ直すよいきっかけとなりました。自然公園でガイドをしていた時にも、参加者の反応を見ていたつもりでしたが、自分の知っている範囲の情報を伝えているにとどまっていたということに気づきました。日本科学未来館ではさまざまな関心や知識をもった方に対して説明が求められるので、対話の中から相手の聞きたいことを汲み取り、相手に合わせて説明するよう意識を変えていきました。相手のニーズに合わせて対話をするには、幅広い知識を備える必要もあります。そのために、書籍やプレスリリースで最新の情報を仕入れるだけでなく、研究機関のシンポジウムや他の科学館などに直接足を運びました。こうした情報を広く収集する経験は、イベントや科学教室などの企画・運営に活かしました。

現在の活動内容

「静岡県内の科学技術関連機関をネットワーク化し裾野を広げる」

 現在は静岡科学館る・く・るにおいて、地域における科学コミュニケーション活動の拠点づくりを推進してります。具体的には、地域の教員やボランティアなどを対象とした科学コミュニケーター育成講座を開催し、コミュニケーションのあり方や効果的な解説方法などを伝えるほか、県内の各施設と連携した講座を実践しています。
 また、静岡県内の56 の団体・施設において「しずおか科学技術月間」を展開。イベント情報をまとめて広報したり、SNS などを活用して情報の集約化・体系化を図っています。今年の開催では、93,000 人を動員すうことができ、地域に根ざした科学館ならではの活動を始められたことに喜びを感じています。今後はこうしたネットワークを強化しつつ、来館者のニーズに即応できるよう努めていきたいと思います。

[インタビュー実施 2012年12月]



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