遺伝子などを操作することによって生み出された、ほぼどんな組織や臓器の細胞にも変化できる可能性を持った細胞──それがiPS細胞(人工多能性幹細胞)です。
さまざまな分野での応用が期待されるこのiPS細胞を、ここでは4つのキーワードから紹介します。
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ふつう、皮膚や筋肉、神経のように、すでに役割が決まった細胞の運命は変わりません(これを分化と言います)。それを、もういちどあらたな運命を自由にたどれるような状態にすることが「初期化」です。2006年、京都大学の山中伸弥教授は、ウイルスでわずか4種類の遺伝子を送り込んではたらかせることで、皮膚の細胞を初期化し、iPS細胞を生み出すことに成功しました。
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細胞の初期化を引き起こす4種類の遺伝子を突き止めるにあたって、成功のポイントが2つありました。ひとつは、(独)理化学研究所がつくりあげた、ES細胞(*1)や分化した細胞ではたらいている遺伝子のデータベースを利用し、候補遺伝子を24個までに絞り込めたことです。もうひとつは、さらに候補を絞り込む方法で、ひとつずつの効果を調べては組み合わせの効果を確認する“足し算”ではなく、差し引いても効果に影響がなければ候補からはずす“引き算”、つまり消去法を用いたことです。
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細胞の分化は、遺伝情報そのものが変わるのではなく、その使われ方が変わることによって起こります(*2)。遺伝情報を担う鎖状の物質、DNAは、ヒストンという“糸巻”のようなタンパク質に巻きついた状態で、細胞の中の核という場所に格納されています。このヒストンや、DNAに、化学的な目印がつけられると、遺伝情報の使われ方が制限されたり、活発になったりします。この仕組みをエピジェネティクスと呼びます。細胞の初期化や分化はこのエピジェネティクスの変化によって調節されていると考えられています。
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再生医療や新薬開発、疾病のしくみの解明と治療法開発など、iPS細胞の応用への夢は膨らむばかりです。
ただ、iPS細胞と一口にいっても、そうよばれているものの品質がそろっているかどうかという問題があり、基準作りが課題となっています。もちろん、がん化などが起こらない安全な方法の開発や、思うとおりの組織の細胞に育て上げるための研究も着々と進められています。
iPS細胞がひらく未来について、正確な知識と希望を持って、見守っていくことが大切です。
- *1:ES細胞は胚性幹細胞といい、受精卵からつくられる幹細胞(高い分化能力をもった細胞)です。
- *2:免疫細胞の一部では、遺伝情報の一部を捨て去るという仕組みがはたらいています。