5分でわかる!? 「生物多様性」 | 世界市民会議 World Wide Views ~生物多様性を考える

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5分でわかる!?「生物多様性」
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世界市民会議World Wide Viewsでは、人類が抱える地球規模の課題をテーマに取り上げ、議論を行います。今年のテーマは「生物多様性」。生物多様性が今後どう変化するか、実はこれが、私たち人類の存亡の重要な鍵を握ります。
現在、地球の生物多様性は低下しており、保全の必要性が叫ばれています。ここではその保全の理由、生物多様性の現状、そして対策の状況を、コンパクトにまとめてご紹介します。

(文: 日本科学未来館 科学コミュニケーター 寺村たから)
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1. 生物多様性を守る理由 ――生態系は人間の生存に欠かせない
生物多様性について見る前に、私たち人間の暮らしと生き物の関係について思い返してみます。人間が生きていくのに欠かせない、食料、空気、水、住まい……。これらのほとんどは、生き物がもたらしています。米や魚、肉、野菜など、食料は生き物そのものですし、飲用水は森林が濾過したものです。呼吸に欠かせない酸素は植物の光合成によってつくられ、多くの人が木でできた家に住んでいます。

これらの直接的な恩恵のほか、山に生えている草木が土砂崩れを防いだり、蜂の受粉が果樹の実を結ばせるなど、間接的な恩恵も受けています。つまり、人間を含むすべての生き物は、直接的、間接的に他の生物の助けを借りて生きているのです。このような多様な生き物が持ちつ持たれつの関係の中で生きているシステム全体を「生態系」といいます。そして、上で挙げたような生態系から私たち人間が受けている恩恵を「生態系サービス」と呼びます。

もし、生態系が変化してバランスを崩し、人間が十分な生態系サービスを受けられなくなったら、私たちは存続できなくなるかもしれません。生態系の破壊を食い止めようという声があがるのはそのためです。

生態系サービス以外にも、生態系には価値があるという考えもあります。「人々が生態系を保全したいと思うのは、人がそこに"歴史的価値"を認めるからだ」という指摘がその一つです*1。長い歴史を経て変遷してきた生態系はそれぞれが唯一無二のものでそのような唯一性、希少性そのものが価値であるという主張です。

ほかにも、生態系には私たちが気づいていない大切な機能が潜んでいる可能性を指摘する人もいます。そのような未知の価値は、一度失ってしまったらその存在すら知る機会がなくなってしまいます。

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2. 生物多様性の現状 ――人間が生態系を過剰に利用している
人間の活動は生態系にどの程度影響を与えているのでしょうか。
一例として、日本人にも身近な魚、タラの状況を見てみます。国連食糧機関(FAO)のデータによると、タラの一種であるタイセイヨウタラの北大西洋での漁獲量は1960年代後半にピークを迎え、1990年にかけて大幅に減少しました(図1)。減少の原因は人間の乱獲です。食料を追い求める私たちが、タラ類の個体数を変化させました。つまりは海の生態系を変化させたのです。

図1北大西洋でのタラ類の漁獲量の変化(FAOの図を改変)
図1北大西洋でのタラ類の漁獲量の変化(FAO*2の図を改変)


もう一つの例として、生物種の絶滅速度のデータをご紹介します。人間活動は多くの生物種を絶滅に追い込んでいるといわれており、国内では近年、ニホンオオカミ、トキ、オキナワオオコウモリなどが絶滅しました。
とはいえ、生物の絶滅は地球上では珍しいことではありません。生命が誕生してから40億年の間に、誕生した種の99%以上が絶滅したといわれています。

では生物が絶滅するペースは、人間活動によって変化したのでしょうか? 生態系に関する初の世界規模調査「ミレニアム生態系評価」によると、古代では哺乳類が絶滅する速度は、1年で100万種あたり0.1~1種であったと推定されています。それに対して、現在は100種程度。つまり、絶滅速度は100~1000倍になっているのです(図2)。

図2 絶滅速度の比較(Millennium Ecosystem Assessmentの図を改変
図2 絶滅速度の比較(Millennium Ecosystem Assessment*3の図を改変)


ほかにも、脊椎動物の個体数やマングローブ林の面積、サンゴ礁の状態など、生態系の状態を推し量る指標は軒並み低下傾向にあります*4

このような生態系の急激な変化が続くと、生態系に依存して生きている私たち人間への影響は必至です。食料や飲用水の不足が懸念されるほか、まったく予期していなかった影響が出るかもしれません。

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3. 生物多様性を守るための対策 ――国際的な保全の取り組みが始まっている
生物多様性の低下を防ぐためには、国際社会が協力して対策を行う必要があるという認識のもと、国連で議論がなされ、1992年に生物多様性条約が採択されました。以来、生物多様性保全のための国際的なルールを話し合う締約国会議(COP)が二年に一度開催されています。

2010年に名古屋で開催された第10回締約国会議(COP10)では、各国の利害が対立する厳しい交渉のすえ、2020年までに締約国が達成すべき20の目標「愛知目標」が採択されました。

この中で掲げられたのが、「2020年までに生態系が強靱で基礎的なサービスを提供できるよう、生物多様性の損失を止めるために、効果的かつ緊急の行動を起こす」という短期目標です。生物多様性の保全に向けて、各国に迅速で強力な実行を求めています。今年10月にインドのハイデラバードで開催されるCOP11では、この愛知目標の達成に向けて、各国の取り組みの進捗状況の確認などが行われます
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地球温暖化に比べて生物多様性は、同じ地球規模の環境問題であるにも関わらず、低下しても実感が湧きにくいものです。さらに、その意味するところが生物全体という広範囲に及んでいて捉えどころがなく、どうしても他人事と思ってしまいがちです。しかし、私たち人類の存続に影響する生態系の変化に、無関心でいることなどできるでしょうか。

文献
*1 平川浩文・樋口広芳 「生物多様性の保全をどう理解するか」科学, 67, 1997
*2 FAO "Review of the state of world marine fishery resources", 2011
*3 Millennium Ecosystem Assessment編 "Ecosystems and Human Well-Being Synthesis", 2005
*4 Butchart et al. "Global Biodiversity: Indicators of Recent Declines" Science, 328, 1164-1168, 2010



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