Thender is the Night 夜の話。

──麻生さんは、今回のような詩の朗読は初めてですか?

麻生●初めてですね。私にはどう読むのが正解かわからないので、最初はすごく難しかったです。でも谷川さんにいろいろアドバイスいただけて、それに応えていくとどんどん楽しくなっていきました。

谷川◎そう言ってもらえると嬉しいですね。麻生さんには麻生さんなりのスタイルがあるんだろうと思って、最初は手探り状態で聞いていました。それで今度はこっちの注文をいってみたらちゃんと応えてくれるから、すごくやりやすかったです

──谷川さんは、ご自身の詩の読まれ方についてご希望はあるのですか?

谷川◎基本的に、芝居のセリフにはしてほしくないっていうのはあるんですよね。だけどいわゆるアナウンサーみたいに、活字が音になりました、っていうのも困る。詩の朗読って、わりと微妙なところがあるんですよ。ただ、読み手の感情過多にはならないようにしてほしい。観念的にいうと、「日本語のことばの持っている感情を一旦自分の中に取り込んで、それを声にしてもらう」というようなことになるんだけど。実際には現場で探っていく感じなんです。

──ナレーション的な部分と詩的な部分とは、ご自身の中で明らかに違うのですか?

谷川◎明らかにでもないんですよ。この4行はナレーションだよ、とかいいながら最後の2行はちょっと詩みたいになってしまったり、境目ははっきりしないんです。自分にしかわからないことだから、そこが読む側にとっては難しいと思います。ただ、できるだけナレーションと詩を融合したかった。僕は劇場とかライブハウスで自分で朗読をするので、詩が声になる場は結構たくさん知っているんだけど、プラネタリウムというのはそのなかでも非常に特殊な場だと思います。だから、自分なりに“異空間”を想像して、そこで人の耳にちゃんと届くようなことばを書きたかったんです。

──麻生さんが、今回読まれた中で好きなフレーズは?

麻生●「私が死んでも誰かがきっと覚えていてくれる 星と星とをつなぐゆるやかなかたち 誰ひとり中心ではないあの美しいかたち」という部分の、特に最初の一行が好きでした。自分が死んでからのことや、それでも誰かが覚えていてくれるんだったら、きっと生きててよかったなって思って死ぬんだろうなとか、いろんなことを想像しましたね。

谷川◎ここはうまく書けているんですよ(笑)。もともと自分で気に入っている星の詩だったので入れました。ユングっていう心理学者が、“constellation(コンステレーション、星座、配置)”っていう意味のことを言っていて、河合隼雄さんの影響もあって、こういうことが書けたんだと思います。

──夜や星空にまつわる思い出を教えてください。

麻生●星空はたくさん記憶に残っていますね。実家が千葉の田舎なので、星がすごくきれいに見えて、子供のころは星を見るのが好きでした。夜、一人で庭に出て星を見たりしていましたし、あとはいろんな旅先でも。

──特に印象に残っている星空はありますか?

麻生●一番印象に残っているのは、やっぱり家から見る星空なんですよね。庭の木の位置なんかも含めて。ここに木があるから、ここから先の星空が見えないんだとか、星は移動しているんだとか、子供のころはそういうあたりまえのことをいつも考えては、感動していました。

谷川◎映画の撮影で行かれたイランの星空は、日本とはだいぶ違いました?

麻生●言われてみれば日本と違うのかな。星を見たのはよく覚えているんですけど、“星空”という同じ認識しかしませんでした。でも空を見ると、見える星は違うんでしょうけれど、星空は変わらないんだなって思って安心しましたね。

──この作品をどんなふうに、どんな人に見てもらいたいと思いますか?

谷川◎それはもちろん、0歳から100歳までですよ(笑)。

麻生●私も、どなたにでも見ていただきたいですけど、もし自分に子供がいたら、一緒に連れて行きたいなと思いました。理解できるかわからないけど、その場にいて、何かを感じられればそれだけでいいのかな、と思います。

一朗読録音スタジオにて
(2009年6月19日収録)

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