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あなたは科学に何を期待してきたでしょう? 震災以降、社会に生まれた科学者への不満や期待と、科学者の側の切実な思いとをぶつけ合い、議論しました。科学が力を存分に発揮できる社会にするために、今、私たちが抱える課題と解決方法を探ります。
(このサイトでは、当日の講演とディスカッションをダイジェストでまとめています。イベント全編はYouTubeでご覧ください。)

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4|科学コミュニケーターによる会議総括
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エネルギーの選択に際するさまざまな論点やデータが示された今回の未来設計会議。ここでは当日配布したワークシートの問いと皆さんの回答をベースに、科学コミュニケーターが会議全体をまとめます。
〔文・構成:科学コミュニケーター 池辺靖〕

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Q1.あなたの考える未来のエネルギー構成を描いてください。

日本におけるエネルギー総量(※)の内訳は、化石エネルギーが84%、原子力が10%、そして水力を含む自然エネルギーは6%となっています。では今後、この総量はどのように推移し、内訳はどう変わっていくのでしょう? 参加者にグラフで示してもらいました。
横軸が時間で2010年を原点とします。縦軸はエネルギー総量で、内訳は下から自然エネルギー、化石エネルギー、原子力の3つの領域に分けています。参加者の考えはエネルギー総量の推移パターンによって、ほぼ4つのタイプに分類することができます。実際に描いていただいたグラフから、代表的なものをご紹介しましょう(グラフはクリックで拡大します)。
※エネルギー総量:供給量の総量のこと。約4割が発電のために使われ、その他ガソリンや都市ガスのかたちで消費されている

パターン① 低エネルギー社会への移行型
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最も多かった回答が、エネルギー総量を将来に向けて少しずつ減らし、低エネルギー社会へ移行するというもの。原子力は徐々に縮減し、長期的には化石エネルギーの使用もゼロに。すべてのエネルギーを自然エネルギーでまかなうような未来像だ。

パターン②現状維持型
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2番目に多かったのは、現在のエネルギー総量を将来も維持するもの。原子力の割合を近い将来ゼロにし、しかも総量を減らさないとすると、しばらくは化石エネルギーに頼らざるを得ない。新しいタイプの化石エネルギーの開発が鍵となるかもしれない。

パターン③ 短期的上昇の後、長期的下降型
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短期的にエネルギー総量は上昇するが、しばらく後に減少に転ずる、という意見も少数ながらあがった。将来の低エネルギー社会へ移行するためには、インフラ整備などでまずは多くのエネルギーが必要なはずという、現実的かつ戦略的な考えだ。

パターン④長期的にも増加継続型
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エネルギー総量の右肩上がり傾向が続くという考えも、少なからぬ参加者から示された。しかし自然エネルギーによるエネルギー生産にも限界があるだろう。これまでとは違う成長の仕方を考えていく必要がある。

 エネルギー総量への考え方は異なりますが、内訳では原発、化石ともに将来的にはゼロにし、自然エネルギーを基幹エネルギーとして選択する未来像が描かれました。これは、化石エネルギーの大量消費を前提としたこれまでのシステムから、まったく異なる性質のエネルギー源への大転換を意味しています。そのためには、さなざまなエネルギー源の性質を科学的に捉えて、戦略的に社会変革をすすめていく必要があるでしょう。


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Q2.エネルギーの選択を考えるとき、あなたにとって大切な判断基準とは何ですか?

飯田先生から提示された、エネルギーのコストと自然エネルギー100%の未来像。そして小林先生から提示された、社会と個人の未来選択のための考え方。これらの情報をもとに、将来のエネルギーを選択するとき、「何を判断基準として考えるのか」を参加者とともに議論しました。会議で出されたさまざまな視点は、主に以下の4点にまとめることができます。

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判断基準① 安全性・コスト・次世代への責任
「人がコントロールできないものは、もういりません」の声に代表されるように、今回の原発事故の体験から、多くの参加者がエネルギー選択における最重要事項として挙げたのは、安全性の確保でした。一方で「原子力発電の技術的安全性を高める必要がある。それには技術的ブレークスルーを見つけなければ」と、新しい原子力に期待する声もありました。
また、原発から大量に排出される放射性廃棄物の処理方法がいまだ定まっていないことへの懸念の声も多く、飯田先生は「廃棄物処理のコストは、将来世代に暗黙のうちにゆだねているかっこうになっている」と指摘。これに関連して、「今の私たちの便益が、後世の人たちの不利益になるというような世代間不均衡が生じることはあってはならない」、「安心して暮らせる世界を次世代に残すことが私たちの責任だ」との声が多くあがり、「次世代への責任」という問題への意識の高さが見られました。さらに、小林先生から「短期的な経済中心主義が確率の小さなリスクを軽視してきたのではないか」という意見が出されました。
このような問題にとりくむためには、目先の便益を考えるだけでなく、グローバルにかつ長期的なスケールで社会が幸せになる方法を賢く選択することが本質的に重要ではないでしょうか。


判断基準② 供給の安定性
エネルギー安定供給の重要性も議論の中心となりました。ここで相次いだのは、自然エネルギーの安定性を不安視する発言です。飯田先生は、自然エネルギーを大規模に導入しているスペインを例に、火力や水力など出力調整できる発電方法によって全体の電力量を調整し、需給バランスを図る方法を説明しました。さらに今後、発電して余った電気を貯める技術を発達させるとともに、需要側の機器もITで繋ぐなどして供給側と一体となって需給バランスを取るシステムを開発できれば、電力の安定供給は十分可能と主張。
しかし原理的に可能ではあっても、自然エネルギー100%で安定したエネルギーシステムをつくるためには、まだまだ科学技術が足りないことは確かです。それに対して小林先生は、「どういう科学技術を進めていくのかも、人々の民主的な意志決定の問題」と、技術開発の方向性についても私たちの意思表示が重要であると指摘。参加者からも「安定した出力を生み出せる海流発電」「藻から液体燃料」など、自然エネルギーに関する新技術の情報提供がありました。


判断基準③ 経済への影響
化石エネルギー中心から自然エネルギー中心の社会へと転換していくなら、私たちは今後、低エネルギー社会へと移行していかねばならないでしょう。参加者からは、「緩やかにでも成長したり、快適な将来が見えないと元気が出ません」、「使えるエネルギー量が減ったら、経済へ大きな影響が出るのではないか」、「エネルギーをたくさん消費しなければならない産業部門では、やはり電気代の上昇は打撃となる」といった声が聞かれました。それに対して飯田先生は、「エネルギー消費量が下がると貧しくなるということはない。エネルギーを減らしながら経済成長は可能」と主張。そして、そのようなことを実現するには「国の制度設計が鍵となる」と多くの参加者から指摘がありました。
また「エネルギーを意識して生活することが大事」「子供達の教育によって、エネルギーの使い方についての市民社会の基盤を作っていく必要がある」といった、低エネルギー社会に向けて、市民の意識を高めていくとりくみを訴える声もあがりました。


判断基準④ 地域環境
自然エネルギー導入に伴う地域環境への悪影響を心配する声も聞かれました。風力や太陽光発電には多くの土地が必要となり、環境破壊につながるのではないかという不安や、風車の騒音による健康被害、渡り鳥の風車との衝突事故などの問題です。
これについては、飯田先生から紹介されたデンマークの例が参考になりそうです。デンマークでは自然エネルギー導入の際、住民と政府による徹底的な議論が行われました。風車を建てられるところを地域社会との合意のもとにあらかじめ決めるとともに、地域の自然エネルギーから生まれた便益は地域に帰属する、という考えのもとに、制度設計がなされているということでした。
ここでのキーワードは「地域主権」と言えそうです。エネルギー生産という便益にともなうリスクを地域住民が理解し、彼らが主体となって地域の未来を決定していくこと。そのようなリスクガバナンスが、これからの未来社会を私たちが自身の手でつくっていくために非常に重要なことだと考えられます。小林先生は「エネルギーの選択は自分たちがどのように生きるかを選択することだ」 との言葉とともに「エネルギー自己統治」の考え方を私たちに問いかけました。



事前アンケート
「あなたは自然エネルギーのために、一日110円を余分に払いますか?」

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今回の会議では、エネルギー問題に対する一般の方々の問題意識を探るため、ウェブ上で事前アンケートを行いました。単純化して試験的に導き出した電気料金をきっかけとして、エネルギー選択の立脚点を一人ひとりが具体的に考えてみるためのものです。
2011年6月17日~7月14日の間に71名の方からご回答いただきました。また、当日のイベントでは導入として、回答の具体例を紹介しています。その様子はyoutubeでご覧ください。

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