メディアラボ第21期展示「ぴったりファクトリ」

常設展示「メディアラボ」は、先端情報技術による表現の可能性を、定期的な展示更新を行いながら紹介していくスペースです。

メディアラボ第21期では、モノが人に「ぴったり」合うものづくりに焦点を当てます。
私たちは大量生産されたモノを日々使っています。しかし、画一的に作られたモノは、使い勝手が悪かったり、趣味に合わなかったりすることもあるでしょう。そんな中、近年は3Dプリンタなどの工作機器とコンピュータをつなぎ、個別のデジタルデータに基づいてモノを作る「デジタルファブリケーション」が普及してきました。この技術を使えば、一人ひとりの身体や状況、生活環境にぴったり合うものを作れるようになります。さらには、見た目や触り心地など、個人が持つ好みの感覚を数値化する研究も進んでおり、将来のものづくりに反映されれば、私たちに高い満足度をもたらすことが期待されています。
本展示は、「ぴったり」をつくるための「デジタルファブリケーション技術」と、「ぴったり」をさぐるため個人の感性を測る「感性定量化技術」という二つの研究開発の成果により構成されています。
展示をご覧いただきながら、これらの技術が融合することで、一人ひとりに「ぴったり」なものづくりが当たり前になるクリエイティブな未来を想像してください。


出展者インタビュー

課題を解決するものづくり

デジタルファブリケーション技術は、個人が趣味で楽しむだけにとどまらず、課題解決の手段としても使われ始めています。例えば、作業療法士がデジタルファブリケーション技術を活用し、課題を抱える当事者一人ひとりの生活に寄り添ったモノを作っています。あるいは彼らに、作り方や3Dプリンタの使い方を教えることで、モノづくり行為そのものが、人を生き生きとさせる「作業」となるよう支援しています。

ぴったりをつくる技術

一人ひとりが満足感を得られるモノをつくるには、多様な素材を用いてモノをつくる技術が必要です。ここでは、食べられる素材を出力する技術、多量の液体を含んだゲル素材を出力する技術、モノの内部構造を変えることによって、硬さや柔らかさを操る技術を紹介しました。右は、複合型3Dプリンタ「FABRICATOR」です。

あなたのぴったりをさぐる

「感性の可視化」研究に参加いただきましょう。そして、研究結果が反映された実例も合わせてご覧ください。3つの評価軸により、感性の可視化を試みます。モニターに表示される「モノ」にどんなことを感じるか、評価してみてください。これによって感性の一般化が進められ、「ぴったりなモノを作りたいけど、何を作ったらいいのかわからない」という方への支援につながっていきます。

ぴったりをさぐる技術

手にとって使う道具や肌に触れる衣服は、その手ざわりによって使いやすさやモノへの愛着が生まれるかどうかが変わります。長く愛されるモノをつくるためには、一人ひとりにぴったりあう触感をさぐることが必要です。実験を元に触感をデータ化し、その再現が自在にできれば、個人にぴったりあう触感を作り出し、提案できるようになります。


公開時期 2019年5月16日(木)― 2019年9月1日(日)
出展者
  • 田中浩也(たなか・ひろや)

    慶應義塾大学 環境情報学部 教授/JST COI 「ファブ地球社会創造拠点」研究リーダー補佐
    1975年北海道札幌市生まれ モットーは「技術と社会の両面から研究すること」東京大学工学系研究科博士課程にて、画像による広域の3Dスキャンシステムを研究開発。社会基盤工学の分野にて博士(工学)を取得。

  • 長田典子(ながた・のりこ)

    関西学院大学 理工学部 教授/感性価値創造研究センター センター長/JST COI 「ファブ地球社会創造拠点」研究リーダー補佐
    1983年三菱電機(株)入社。産業システム研究所において、色彩情報処理、感性情報処理の計測システムへの応用に関する研究に従事。1996年大阪大学大学院基礎工学部研究科博士後期課程修了。専門は感性工学、メディア工学等。