メディアラボ第13期展示「1たす1が2じゃない世界-数理モデルのすすめ」
常設展示「メディアラボ」は、先端情報技術による表現の可能性を、定期的な展示更新を行いながら紹介していくスペースです。
「自然という書物は数学という言語で書かれている」とのガリレオの言葉が暗示したように、世の中の複雑な現象をも数学的に表現する、最先端の研究が広く進められています。
もしも“1+1=2”で済むような単純な世界だったら、現象の理解も未来予測も問題解決も簡単にできるはず。でも現実の世界はあまりにも複雑で、無秩序に見えます。
本展では、そんな世界に「数理モデル」を駆使して挑む研究者たちを紹介します。
出展者インタビュー
ミッション1 感染症の広がりを防げ
パンデミック(感染症の大流行)の危機が迫っている。人から人へと感染症が広がる様子を数理モデルで表現できれば、事前に対策を立てることができるはずだ。ただし、病原体の種類、感染経路、気候条件、個人差など、考慮すべき要素は山ほどある。すべてを考えようとすると本質が見えにくくなるのが課題だ。
協力研究者:秋田純一・岩山幸治・占部千由・江島啓介・藤居文行・藤原直哉
ミッション2 脳を解明せよ
脳は約1000億個の神経細胞(ニューロン)のネットワークだ。カオス現象に着目し、ニューロン機能を実現する素子を100個つなげて、脳をまねたのが「カオス脳」。電子回路やそのシミュレーションで実現した。「平和な動物園をつくろう」問題を解きながら、カオス脳の人間的なふるまいを見つけてみよう。
協力研究者:徳田慶太・寳来俊介・堀尾喜彦・小澤将人
ミッション3 コウモリの“超”能力を解明せよ
コウモリは超音波を放射し、その反射音を聞いて標的の方向や距離を認識する。“ソナー”といわれるこの能力を用いて、蚊などの小さな虫を飛びながら捕らえているのだ。コウモリを音響システムとして見ると、サイズが小さく、信号処理が柔軟で精度も高い。コウモリのもつ能力を解明できれば、工学分野に応用できるだろう。
協力研究者:合原一究・飛龍志津子・藤岡慧明
ミッション4 投薬のスケジュールを組み立てよ
近年、「前立腺がん」の患者が急激に増えている。治療では薬でがん細胞の増加を抑えるのだが、時間とともにがん細胞が耐性を獲得してしまう。そこで投薬の中断と再開を繰り返す治療法が提案された。しかし問題は、投薬スケジュールを組み立てようにも、がん細胞の増減に個人差があるため、すべての患者に万能な処方箋が存在しないことだ。
協力研究者:岩山幸治・鈴木大慈・田中剛平・平田祥人・森野佳生
ミッション5 病気の予兆を見極めよ
「健康」と「病気」の間には、もうひとつ「病気の予兆」ともいえる状態が存在する。簡単な治療で回復するか、発症し急激に悪化するか、ギリギリの不安定な状態だ。その分岐点を検知できれば、効果的な早期治療が可能になる。手がかりは、遺伝子の活動。ただし数が多すぎて、どの遺伝子が病気に関与しているのかわからないのが問題だ。
協力研究者:岩山幸治・陳洛南・劉鋭
ミッション6 余震を予測せよ
巨大地震の後には大きな余震が頻発する。このため、余震を予測することは防災上極めて重要だ。しかし本震直後は、余震が多すぎて観測しきれないことから、早い段階で予測することが困難だ。数理モデルを使って、より迅速に予測を行うことが求められる。
協力研究者:岩山幸治・近江崇宏・尾形良彦
ミッション7 ホタルとシンクロせよ
一人ひとりがバラバラにふるまっていたはずが、気がつくと同じリズムで行動していた、という経験は誰しもあるだろう。こうした同期現象は自然界でもよく観察される現象で、代表例がホタルの集団発光だ。ホタルの機能を電子回路で実現し、さまざまな列に並べることで、同期を起こす仕組みを解明するのだ。
協力研究者:伊藤大輔・奥村圭司・川上博・木本圭子・辻明典
公開時期 | 2014年2月19日(水)~ 2014年9月1日(月) |
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出展者 | FIRST 合原最先端数理モデルプロジェクト (最先端研究開発支援プログラム「複雑系数理モデル学の基礎理論構築とその分野横断的科学技術応用」)
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