メディアラボ第7期展示「ノック!ミュージック-打楽器からコンピューターに至る4つの進化論-」

3階常設展示「メディアラボ」は、先端情報技術による表現の可能性を、定期的な展示更新を行いながら紹介していくスペースです。 第7期となる今回は、自作の楽器などでパフォーマンスを行う土佐信道(明和電機)の作品群を展示します。 電信の登場、トランジスタの発明、コンピューターの普及など、テクノロジーが発達していく過程を、打楽器の生音と電子楽器の楽しさにより体感します。


出展者インタビュー

作品解説

ノック!ミュージックプログラム

「ノック! ミュージックプログラム」は、ノック!音楽を体験できる楽器(デバイス)を使って遊ぶことで、テクノロジーの進化とデジタル技術について段階的に学べるプログラムです。4つのステップによる発達段階はテクノロジーの進歩の歴史と対応しています。このプログラムを体験することで、そのテクノロジーと音楽を作り出す進化の足取りをたどることができます。楽しさを体感することで、その瞬間が蘇るのです。

ステップ1 −機械通信時代−

「トントン君」をノックすると電気が流れ、はなれた場所にあるノッカーが動きます。これを応用すると、はなれた場所にいるお互いがコミュニケーションをすることができます。これは電気回路の開閉だけで遠くまで符号を送ることができる「電信(電気伝送通信)」と同じしくみです。 19世紀の半ば、この電信を行う「モールス信号機」が登場し、世界中でスイッチをノックしてコミュニケーションをおこなう「情報通信時代」が幕開けしました。


ステップ2 −電子通信時代−

ここには、いろいろなしくみでノッカーを動かすたくさんのスイッチが展示してあります。20世紀半ばからの電子工業技術の進歩は、スイッチをどんどん小型化していきました。そしてトランジスタが発明されると、デジタル回路の中のとても「小さなスイッチ」として使われるようになりました。 ミディタップは、そんな「小さなスイッチ(=5V)」と、ノッカーを動かすための「大きなスイッチ(=100V)」をつなぎ、弱い信号でノッカーを動かすことができます。


ステップ3 −自動機械時代−

「エレビート」(写真Ⓒ)は、ノッカーの動作内容を「マス目=マトリックス」を使って記録する「記憶装置」です。そしてエレクトロノームはふりこのしくみを使って「一定のリズム=クロック」を作り出す装置です。 このふたつの装置「マトリックスとクロック」を組み合わせると、あらかじめ決められた動作手順の通り、自動でノッカーを動かす「シーケンス」が可能です。1960年代以降、工場では自動で機械を動かすために、シーケンス制御の考えが広まりました。


ステップ4 −コンピューター時代−

「エレビート タッチ」(写真のiPadの中で動くプログラムのこと)は、機械的なシーケンスを電子的なシーケンスに置き換えたものです。「マス目=マトリックス」にリズムを入力する、つまり「プログラム」によって自動演奏をします。 プログラムを動かすために、コンピューターの中ではとても小さなスイッチたちが、「0」と「1」というノックを行っています。情報化社会の現代は、こうしたミクロな「ノック」が世界中で行われ、膨大な量の情報が地球上を飛び交っています。


ステージ

様々な電動楽器の展示と自動演奏。 「ノック!ミュージック・インスツルメンツ」、「オタマトーン」、「ノックマンファミリー」他


 

今回の展示にあたって、多くの方々にお世話になりました。謹んでお礼申し上げます。/岩田洋夫(筑波大学 教授)/児玉幸子(電気通信大学 准教授) /明和電機制作スタッフ/岩本多玖海 植田正俊 織田洋介 木村匡孝 公文悠人/高橋征資 服部美樹 渡辺華代/林民夫(アイアートデザイン)/タグチヒトシ(株式会社 イッカク)/松村瑞子/堀口淳史/クワクボリョウタ(パーフェクトロン LLC.)/株式会社よしもとクリエイティブ・エージェンシー/株式会社キューブ


公開時期 2010年6月30日(水)~2010年10月11日(月・祝)
出展者 土佐 信道
アーティスト 1967年兵庫県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科修士課程修了。 1993年にアートユニット「明和電機」を結成。 アートユニット「明和電機」では、青い作業服を着用し作品を「製品」、ライブを「製品デモンストレーション」と呼ぶなど、日本の高度経済成長を支えた中小企業のスタイルで活動。魚をモチーフにしたナンセンスマシーン「魚器」シリーズ、オリジナル楽器「ツクバ」シリーズなどを制作している。プロモーション展開は既成の芸術の枠を超え、展覧会やライブパフォーマンスはもちろんのこと、CDやビデオの制作、本の執筆、作品をおもちゃや電気製品に落とし込んでの大量流通など、多岐にわたる。現在、「機械は人間のように歌を歌うか?」をテーマに「明和電機ボイス計画」を進行中。
「明和電機」WEBサイト