メディアラボ第5期展示「感覚回路採集図鑑」

常設展示「メディアラボ」は、先端情報技術による表現の可能性を、定期的な展示更新を行いながら紹介していくスペースです。第5期となる今回は、感覚のしくみを利用した新しいインターフェイス技術の研究を行っている、安藤英由樹、渡邊淳司の両氏による作品群を展示します。展示作品から得られる不思議な感覚は、情報技術との新しいつながり方を予見させるものとなるでしょう。


出展者インタビュー

作品解説

ピカピカの回路(2007)

自分の眼を動かすと鮮やかな絵が見えます!
人間の眼は、自分の見たいと思う方向に1秒間に数回すばやく動いています。その際の動く時間は約0.05秒。この回路は、その眼の動きの間に、もっともっと速く1列の光を点滅させます。そうすることで1列の光が網膜の上で面になって、2次元の絵が見えます。さあ、光の前でキョロキョロ、眼を動かしてみてください。何が見えるかな?
共同制作者:田畑哲稔、前田太郎
技術協力:NTT コミュニケーション科学基礎研究所

ザワザワの回路(2009)

どこからともなく、音が聞こえます!
人間は耳に入ってくる空気の振動を音として聞くことができます。この回路は、狙った場所に音を届ける回路です。いろいろなところから音がザワザワと聞こえてきます。眼を閉じて、耳を澄まして、どこから音がやってくるか、よく聴いてみよう!
共同制作者:田畑哲稔、Maria Adriana Verdaasdonk

デコボコの回路(2008)

つるつるのはずなのに凸凹を感じます!
人間はものを触るとき、指でなぞる動作をします。そのときに生じる指腹の変形が触っているものの凹凸として感じられます。この回路は、なぞる動作をしているときに爪側から振動を与えます。不思議なことに爪側が震えているのに、指腹にデコボコした感覚を感じます。さあ、指に振動装置をつけて、デコボコを感じてみよう!
共同制作者:草地映介、NOSIGNER

ユラユラの回路(2006)

世界が揺れている? 自分が揺れている?
人間は耳の奥にある前庭器官で身体の姿勢、動きを調整しています。そのため眼を閉じていても、バランスを保ってまっすぐ立つことができます。この回路では、その前庭器官にとても弱い電流を流すことでバランス感覚を揺るがします。電流が流れると自分は動く気がないのに、ユラユラ揺れを感じます!
共同制作者:吉田知史、前田太郎

グググの回路(2009)

自分の影に引っ張られる!
人間は自分がどんな姿勢でいるのか、鏡や影を通して確認することができます。普段、自分の姿勢の身体感覚と目で見た感覚は常に一致していますが、この回路ではそれらの関係を少しだけずらします。そうすると、自分の身体が重く感じたり、思わず引っ張られたりする感覚が生じます。
共同制作者:飯塚博幸、前田太郎


 

[監修協力]前田太郎
[展示企画協力]吉田知史、66b/cell
今回の展示にあたっては、多くの方々にお世話になりました。謹んでお礼申し上げます。: 鈴木隆裕、津田明憲、長江依奈、野崎智子をはじめとする大阪大学大学院 情報科学研究科 前田研究室の皆様、浦西広幸、久我尚美、篠木貴久


公開時期 2009年10月7日(水)~2010年3月1日(月)
出展者 安藤英由樹 // 渡邊淳司
  • 安藤英由樹

    感覚-運動系インタフェース研究者 大阪大学大学院 准教授 1974年生まれ。1999年愛知工業大学大学院工学系研究科修士課程修了。2000年理化学研究所BMC ジュニア・リサーチ・アソシエイト。2001年科学技術振興事業団「協調と制御」領域グループメンバーとして東京大学情報学環研究員。2002年よりNTTコミュニケーション科学基礎研究所リサーチアソシエイト、2007年同研究所リサーチスペシャリストを経て現職。博士(情報理工学)。感覚–知覚–運動インタフェース、バーチャル・リアリティなどの研究に従事。
    安藤英由樹氏WEBサイト

  • 渡邊淳司

    知覚研究者 1976年生まれ。2000年東京大学工学部計数工学科卒業。2005年東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了。博士(情報理工学)。人間の知覚メカニズムの研究を行うとともに、そのインタフェース技術への応用を行う。人間の感覚と環境との関係性を理論と応用の両面から研究している。
    渡邊淳司氏WEBサイト