メディアラボ第2期展示「魔法かもしれない」

常設展示「メディアラボ」は、年3回程度の展示更新を行いながら先端情報技術やそれらを利用した表現の可能性を紹介していく展示空間です。「魔法かもしれない」と題した第2期展示では、メディア・アーティストの八谷和彦が「視覚」をテーマにして発表してきた作品群を展示します。これらの作品は、身近な技術を用いて、存在はするものの私たちには見えない世界を表現するものです。それは、見る者に魔法のような驚きを与えると同時に、新たな疑問や好奇心を抱かせます。


出展者インタビュー

フェアリーファインダー03 コロボックルのテーブル(2006)

2年前、子供が生まれた後に作った作品です。自分の小さな子供が「いないいない~ばあ」をキャッキャいいながら、飽きずに楽しんでいるのを見て、こういうのを作ってみたくなりました。また、この作品は佐藤さとるさんのコロボックルシリーズ『だれも知らない小さな国』に影響を受けています。人間のすぐ側に、小さな知的な存在がいて、こっそり一緒に生活している……ファンタジーでありながら、そうであったらどんなにいいだろう、と思ってしまいますし、またそれはお地蔵様にお団子を供える気持ちとも非常に近いようにも思うのです。

フェアリーファインダー04 人魚の窓(2007)

先日、北海道までフェリーで旅行したのですが、真夜中に甲板に上がって雨の中どこまでも真っ暗な海を見ていると、なんだかものすごく怖くなりました。夜の海は、死後の世界に最も近い気配がします。そしてそれにも関わらず、なにか懐かしいような気もするから不思議なものです。 沈没船から引き上げられたような、古めかしい船の窓のついたバーテーブルの前に立ち、ふと後ろを振り返ると、その鏡の中には……というような作品です。作品のモデルにしたわけではないですが、五十嵐大介さんの『海獣の子供』を読むと、この本に出てくるような子供が人魚のモデルだったのでは、と思えてしかたがないです。

フェアリーファインダー05 フェザードフレンド(2008)

今、僕は小さな飛行機を作っていて、ときどき飛ぶ練習をしているのですが、そういう飛行の練習を始めて以来、当たり前のように強風の中を飛び、木の枝にひょいと留まる鳥の行動が、まるでサーカスの素晴らしい芸を見ているように思えてきます。それに比べて自分の技量のなんと低いことか……。でも、それでも飛んでみたい、とも思うのです。空は、人間の領域ではないのに……いや、だからこそ、なのか(だから魔女は空を飛ぶ)。そしてきっと人は昔からそう思いながら鳥を見ていたのでしょう。鳥かごから聞こえてくる音声は、インドネシア:バンドゥンのバードマーケットで採録したものです。ちなみに「地球の歩き方」によると、インドネシアの男に必要なのは「妻・仕事・家・車、そして鳥」なのだそうです。
映像制作:タナカカツキ

見ることは信じること(1996)

今から約12年前に作った作品です。アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの『星の王子さま』に影響を受けています。 「大切なものは、目には見えない」。そう、ここに流れているのは、1995年、今から13年前に書かれたたくさんの人々の日記です。知らない人の日常生活は「知ることができない」、つまり「目に見えない」わけですが、でも、それは多くの場所に人の数だけ存在していて、ただ「知らないから見えないだけ」なのです。 見えないものを見るためのビューワーは、「ヒツジ」という名前の箱なのですが、もしあなたがデジカメや携帯電話のカメラを持っていたら、それらもこの「ヒツジ」の代わりになってくれるかもしれません。


今回の展示にあたっては、多くの方々にお世話になりました。 謹んでお礼申し上げます。:山田郷美さん(珍しいキノコ舞踊団)/篠崎芽美さん(珍しいキノコ舞踊団)/平井健太さん/上田大樹さん/パンタグラフ/中里アミさん/古賀学(&a water)/NORISHIROCKS/岡崎イクコさん/るぅさん/浦春歌さん/内村志穂さん/さかいれいしうさん/岡村浩志さん/藤好信暁さん(セレソンアート工房)/タナカカツキさん/鈴木慶子さん/クリストファーさん/メガ日記に参加していただいた皆様


公開時期 2008年9月6日(土)~2009年1月6日(火)
出展者 八谷和彦
メディア・アーティスト 佐賀市出身。1966年4月18日(発明の日)生まれ。九州芸術工科大学(現九州大学芸術工学部)画像設計学科卒業。個人TV放送局ユニット 「SMTV」、コンサルティング会社勤務を経て現在に至る。 作品には《視聴覚交換マシン》や《見ることは信じること》などの特殊コミュニケーション・ツール・シリーズ、ジェット・エンジン付きスケート・ボード《エアボード》やパーソナルフライトシステム《オープンスカイ》など機能をもった装置が多い。メールソフト《ポストペット》の開発者でもあり、ポストペット関連のソフトウェア開発とディレクションを行なう会社「ペットワークス」の創業者でもある。
八谷和彦氏WEBサイト