科学の世界をディープに語る クロストーク

vol.2

「サイエンスニュース!アジア展」トークイベント「News! 行動するサイエンス(1)

平和なアジア 地雷0を目指して

アジアに生きながら、ともに解決していくべき課題とは何だろう。日本科学未来館の企画展「サイエンスニュース!アジア展」のイベントで、対人地雷、感染症、環境問題という3つのテーマについて、研究者と活動家が語り合うトークセッションが行われた。6月16日のテーマは「対人地雷」。地雷除去ロボットの開発に携わる研究者と、カンボジアの地雷除去活動の支援を行う活動家が、それぞれの観点から、地雷除去作業の現状や、今後すべきこと、私たちにできることは何かを語った。

石川潤氏

(東京電機大学 未来科学部)
東京電機大学 未来科学部

鬼丸昌也氏

(NPO法人テラ・ルネッサンス)
NPO法人テラ・ルネッサンス

review

地雷がもたらす悲劇とその先の希望
 〜研究者と活動家がつなぐ血のかよった科学技術

文=今岡由佳子(日本科学未来館 サイエンスコミュニケーター)

 “1個あたり300円〜500円”。これは、地雷の平均的な値段だ。しかし、現実はより安い50円程度のものや、タダで入手された1個の地雷が、解体され、火薬が分けられ2個、3個と、低価格もしくはタダで増産されることもありうるという。地雷は、民間人と軍隊の区別をしない。また、戦争が終わったことさえも知らずにその役目を果たそうとするのだ。
幸いなことに地雷被害国でない日本では、一時的な地雷問題への認知や除去支援への盛り上がりはあっても、被害そのものの悲惨さや解決への模索をリアルタイムで感じ、行動を起こし続けることは難しい。対人地雷の全面的禁止をうたったオタワ条約が批准されてから10年目の今年、企画展「サイエンスニュース!アジア展」に関連して開催されたトークセッションでは、地雷除去ロボットの開発に携わる研究者と、地雷除去活動の支援を行うNPO活動家が紹介された。
東京電機大学未来科学部の石川氏が、日本の人道的地雷除去の技術開発と除去現場の現状について、地雷模型を用いながら説明した後、NPO法人テラ・ルネッサンスの鬼丸氏が、被害国の日常である地雷原の存在やその被害について紹介した。
依然として、人の手によるところが大きい地雷の探知と除去も、科学技術の発展により、作業効率が向上し、その手法に広がりをもつようになった。しかし、それに対抗するかのように、地雷そのものも進化したという。使用金属がより少ないプラスチック製のもの、除去作業者を狙い、持ち上げたときの傾斜を感知し起爆するものなど種類も様々だ。この為、現在の地雷の探知と除去においては、金属探知とレーダーとの複合探知、火薬を探知する人工嗅覚、赤外線や中性子を用いた探知など、各技術を組み合わせて互いの不足を補い合う手法や新しい技術も研究されている。
立場や取り組み方は異なるが、石川氏と鬼丸氏が共通して大事にしていると話されていたことのひとつが、“被害国の人々が自らの力で使うことができる技術とそのための人材育成”だった。効果的であっても、高価で頻繁なメンテナンスを必要としたり、特別な技術の修得が必要だったりなど、その扱いが難しければ、探知・除去技術をひろめ、継続していくことは困難だ。小型で安価なために、大量かつ広範囲に地雷が埋設、設置されている被害国では、その除去で生計を立てている人々さえもいる。そのような状況で、被害国の人々に寄り添う技術を開発し、理解を広めていくことは、非常に重要なことだ。
鬼丸氏が途中紹介した“残虐性、無差別性、残存性、安価”という地雷の特徴は、私たちの無関心によってさらに助長される。しかし、同時にその除去や廃止のプロセスで、私たちは“よりよい未来へ変えていける可能性”と“自分たちにもできること”を感じ、希望をもつこともできる。科学によって進化した地雷を、同じく科学を用いて除去し、被害にあった人々の義手義足の技術向上など、その被害軽減に役立てることもできるのだ。関心を持ち続け、互いに協力し合うこと。科学技術に血をかよわせることができるのは、私たち一人一人の力なのだと、参加者が身動きせず両氏の話に聞き入っていた会場のあと片付けをしながら改めて感じた。

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