原発・エネルギーの今後

世界における日本のエネルギー事情

毎日使うエネルギーはどこから来ているのか?

日々の生活や産業などあらゆる人間活動は、膨大なエネルギーによって支えられています。それらのエネルギー資源のおおもとは自然界にあります。石油、石炭、天然ガス、そしてウランなどの地下資源が全体の8割を占め、残り1割が薪など古くから使われているバイオマス、そして1割が太陽光、風力、水力といった自然エネルギーによって供給されています。これらの自然界に存在するエネルギーを「一次エネルギー」と呼びます。

世界の中で、一次エネルギーの使われ方は、非常に偏っています。世界一の経済大国米国がエネルギー供給でもトップで、全世界の19%を占め、中国16%、ロシア6%、インド5%と続いています。日本は第5位で世界全体の4%のエネルギーを使っています。これらの5つの国を合わせただけで、世界の半分近くの一次エネルギーが消費されています(図1)。



図1 世界の一次エネルギー総供給量(2008年)
出典:「原子力・エネルギー図面集2011」電気事業連合会


日常生活で最も身近なエネルギー「電気」は、これら一次エネルギー源を使ってつくられた二次エネルギーと呼ばれます。発電に使われる世界の一次エネルギーの内訳は、石炭(41%)、石油(5.5%)、天然ガス(21%)、原子力(14%)、水力その他(19%)、となっています(図2)。


日本は1970年代のオイルショックをきっかけに、エネルギー効率を上げるとともに、石油依存度を下げる努力をしてきました。発電構成を例にとってみると、石炭(27%)、石油(13%)、天然ガス(26%)、原子力(24%)、水力その他(10%)と、他国とくらべ比較的バランスがとれています(図2)。これは、一次エネルギーのほとんどを輸入に頼る日本が、安定的に二次エネルギーを確保するために、一次エネルギーのベストミックスを進めてきたからです。発電方式の多様化を目標に、原子力、液化天然ガス、石炭など、石油に代わる電力源の開発と導入が進められました。



図2 主要国の電源別発電電力量の構成比(2008年)
出典:「原子力・エネルギー図面集2011」電気事業連合会


エネルギーの今後を阻む2つのリスク

多様化したとはいえ、石油・石炭・天然ガスといった化石燃料への依存が大きい今の世界のエネルギー構成は、持続可能ではありません。理由は2つあります。ひとつは、資源枯渇のリスクです。2008年の統計によると、化石資源の可採年数は、石油が42年、天然ガスは60年、石炭は122年と推定されています。このまま使いつづけると、いずれは枯渇し、人類がエネルギー危機に直面することになります。

2つ目に、化石燃料の使用から出る二酸化炭素による、地球温暖化のリスクです。世界全体の二酸化炭素排出量は増加傾向にあります。特に経済発展の著しい新興国における増加が著しく、今後もこの傾向は続くと考えられます。

では、このようなリスクに立ち向かうために、どうすればよいのでしょうか。それには、エネルギー消費をなるべく少なくすること、つまり省エネルギーを進めること、さらに1次エネルギーの中の化石燃料の割合を下げていくことが必要になってきます。

世界の「デカップリング」指向と日本のこれから

日本はエネルギー効率が高いことで知られています。図3をみてください。オイルショック以降エネルギー消費が横ばいとなった時期でも、GDPは伸びつづけています。



図3 日本のエネルギーとGDP
出典:「EDMC/エネルギー・経済統計要覧」2010年版」
日本エネルギー経済研究所計量分析ユニット【編】、省エネルギーセンター
【出版】


その結果、図4の状態を達成しました。つまり、日本は省エネルギーのための技術革新を進めた結果、世界的にみてGDPが高いのに対し、一人当たりの一次エネルギー供給量は先進国の中でも低く、エネルギー効率の良い国となっています(図4)。



図4 一人当たりの国内総生産(GDP)と一次エネルギー供給量の関係
出典:「エネルギー白書」2007年版、経済産業省


では、低炭素化に対してはどうでしょうか。図5には、日本のGDPの推移を、二酸化炭素(CO2)排出量とともに示しています。1980年代半ば以降、GDPの上昇にともない、二酸化炭素の排出量も一貫して上昇してきていることがわかります。それは経済的な豊かさのもと、日本は電気供給用などとして安定性のある化石燃料などに頼り、利便性を追求するためにエネルギーを自由に使いつづけてきたからです。温暖化のリスクを回避するためには、二酸化炭素の排出量を減らしていかなければならないのですが、そうした対策にはコストがかかり、日本の経済成長にマイナスの影響を与えると言われ、実際に低炭素化はあまり進んでいない状況がよくわかります。



図5 日本の経済成長とCO2排出量の状況 
出典:環境省 地球温暖化対策に係る中長期ロードマップ検討会・エネルギー供給WG
「低炭素社会づくりのためのエネルギー低炭素化に向けた提言」2010年3月

[GHG(Green House Gas)は、CO2を含む温室効果ガスの総量を示す。
GDP,GHG, CO2それぞれ1990年の値を100としてプロット。]



一方で、二酸化炭素の排出量を減らしながら、GDPが伸びている国があります。図6にデンマークとスウェーデンの二酸化炭素排出量とGDPの関係を示しました。近年の傾向をみると、GDPの上昇にもかかわらず、二酸化炭素の排出量は減少しています。経済成長と二酸化炭素の排出量が「デカップリング(Decoupling)」しているのです。



図6 デンマーク、スウェーデンの経済成長とCO2排出量の状況 
出典:環境省 地球温暖化対策に係る中長期ロードマップ検討会・エネルギー供給WG
「低炭素社会づくりのためのエネルギー低炭素化に向けた提言」2010年3月



これらの国でデカップリングが進んでいるおもな理由は2つあります([1])。ひとつはエネルギーの脱炭素化です。それは省エネルギーや自然エネルギー技術の導入によって二酸化炭素排出量を削減することを意味します。これを後押しするためには、低エネルギーに向けての国民の意識変化、生活スタイルそのものが変わっていかなくてはならないでしょう。

もうひとつは産業構造の変化です。エネルギーをより多く使う産業部門の経済全体に占める割合を減らしていくことが、社会全体の省エネルギーにつながっていきます。つまり、二酸化炭素排出原単位が比較的少ないと考えられるサービス産業への経済の移行や、インフラ整備が必要でしょう。

EU全体やアメリカも、日本と同様にGDPの上昇に伴い、二酸化炭素排出量が増えています。しかしEUは、自然エネルギーの大幅な導入などにより2020年までに25%の二酸化炭素削減を目指しています。また米国は日本やEUにくらべGDPに対する二酸化炭素排出量は多いものの、2020年までにはスマートグリッドなどの導入によって、着実に低炭素化に向かうと期待されています。

誰しも将来は今よりも豊かな生活を望みます。資源枯渇と温暖化リスクの条件の中で、経済成長しながら低炭素社会をめざす、このデカップリングの考え方が未来社会へ向かう重要な鍵なのです。



執筆:科学コミュニケーター 山崎 功

2011/07/29 掲載



関連リンク

[1] A discussion on Decoupling Economic Growth from the Emissions of Carbon Dioxide (Environment Waikato Technical Report 2007/02)