ホーム > イベント実施報告 > 展示前で研究者に会おう! 「脳が働く仕組み」
イベント実施報告
展示前で研究者に会おう! 「脳が働く仕組み」




講師:理化学研究所 脳科学総合研究センター 田中啓治先生
10月9日の「展示前で研究者に会おう」は、台風が関東を直撃するという予報にもかかわらず、開始前より事前登録された方を中心に多くの方にご参加いただき活気あるイベントとなりました。
田中先生は、脳が働く仕組みを、まず体の動きとそれを司る脳の部位との関係で説明され、次に神経細胞が情報を電気信号と化学物質という信号で使い分けて伝達していくことをパネルや展示物を使いながらわかりやすく説明されました。またヒトの脳では、右が空間認識、左が言語などというように左右差があるけれど、それは他の動物には見られないそうです。このように脳に左右の差がある理由は、まだわかっていないそうですが、ヒトでは脳が高度化するに従い左右の脳が役割を分担し、両者が連絡を取り合っていたのでは反応が遅延するためではないかという面白い仮説を紹介されました。「脳」は、研究領域として多彩なテーマを提供するばかりでなく、想像するだけで楽しくなる話題も提供してくれるようです。
次に先生が現在進めている研究について、そして最後に聴講者からの質問の時間となりました。来館者からの「どうして現在の研究分野を選ばれたのですか?」という問いに対して、田中先生は「研究テーマとして、研究対象を単純化して解析するアプローチも考えられるが、私は複雑なものをどこまで解釈できるかと言うこうことに興味を持った」と答えられました。視覚という複雑な情報を脳がどのように処理するのかについて、日々研究を進められる田中先生の熱意を感じるお答えでした。他の参加者のアンケートからも「先生がご自分のテーマのことをとても楽しそうに話されている姿が印象的でした」との感想があり、脳の不思議と最先端の研究に対する研究者の姿勢を少しでも身近に感じていただけたのではないかと思っています。
(生命系科学技術スペシャリスト 橋本 裕子)
「展示前で研究者に会おう」に参加して 未来館インタープリター 佐々木 聡美
未来館で来館者の方々と日々展示について話をしています。来館者の方も特に脳には興味があるようで、情報の伝達の仕組みやアルツハイマー病などの脳の病気に関するパネルを熱心にご覧になっている方をよく見かけます。また、様々な五感から入力された外界からの情報を脳がどのように統合するかを体験できるコーナーも、実際に脳の働きを感じることができるので、何度も繰り返し試している方を見かけます。とはいえ、脳はまだまだ未知の部分が多いため、来館者の方とお話をしていても、本当に研究が難しいのだと実感するばかりです。今回のイベントでは、その脳の機能を分かりやすくお話していただきました。
その中で私にとって最も印象深かったのは、実際に先生が研究されている内容を具体的に紹介していただいた部分です。田中先生は、ヒトが物を見るという仕組みに着目して研究を進めています。
ヒトが物を見るときには、まず初めに脳の後頭葉にある第一次視覚野に入り、直線の傾きとその色程度の簡単な図形が判断されます。そこから処理される場所は下側頭葉に移っていきますが、その間に直線→曲線→曲線の組み合わせ→・・・というように徐々に複雑な図形として認識していくそうです。
サルを使った研究では、その下側頭葉でなんと300以上もの中程度に複雑な図形を下側頭葉中のそれぞれ別の場所で認識しているそうです(下図参照)。
最終的に、それらの中程度に複雑な図形の組み合わせとして、見たものが何であるのかを判断しているようです。私はこれまで、もう少し単純な形の組み合わせで認識しているのではないかと思っていたので、その数の多さに驚きました。この先、いろいろな研究が進んでいくと、どのようなことが分かってくるのか楽しみになってきました。
図 脳における視覚処理の流れ
※この図は、田中先生から頂いたデータを基に作成しました。
普段は何も感じてはいませんが、私たちの一番身近なところにある脳が、一つ一つの情報をどのように処理しているかを考えると不思議な気がします。脳の複雑さをあらためて感じることのできた時間となりました。この体験を基に、これからも多くの来館者の方と脳について一緒に思いを巡らせてみたいと思っています。来館の折りには、ぜひ声をかけてください。
